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バタフライエフェクト「朝鮮戦争」(NHK)

ものすごく忙しい毎日です。テレビで見たい番組をほとんど見られず、「テレビ番人」とか称される93歳父親のようなテレビ三昧の生活は、当分先になりそうです。最近録画を使うようになりましたが、録りためてもなかなか観る暇がないです。しかし録画しておくと繰り返し観ることができるので、便利ですね(当たり前!)。「バタフライエフェクト」は力学系の語句で、わずかな変化が系安定性に大きな影響を与えることです。NHKのこの番組は過去の「映像の世紀」の再編で、過去重要な転換点となった歴史に焦点をあてています。今回は「朝鮮戦争」で興味深い内容で何度か見直しました。


  朝鮮戦争は第二次大戦後に朝鮮がアメリカ・ソ連間で分割統治となったことに起因します。その結果できたのが共産主義の朝鮮民主主義人民共和国と自由主義の大韓民国です。この朝鮮民主主義人民共和国、小学4年で世界地図をみて「一番長い名前の国」とせっせと記憶した憶えがありますが、あまりに長いので今は「北朝鮮」と称されますね。その北朝鮮と韓国が戦ったのが1950年の朝鮮戦争で、これは昔の受験世界史だと出題される可能性がある最後の年代でした。38度線を破って侵入した北朝鮮にやすやすと勝てると思ったアメリカ軍(正確には国連軍)はあっという間に撃破され、釜山付近ぎりぎりまで追い詰められ陥落寸前になりました。しかし北朝鮮軍の補給路が延びきったのを見越してアメリカ軍が仁川上陸して形勢逆転。今度は中国国境の鴨緑江まで北朝鮮を追い詰めます。そこで中華人民共和国の「義勇兵」が援軍して押し戻し、現在の38度線でにらみ合いがもう70年以上となりました。
 GHQのマッカーサーが国連軍総司令官兼任となって指揮を執りましたが、中国への原爆投下を巡ってトルーマン大統領と対立し解任されたのは有名です。今ロシアのウクライナ侵攻で核兵器使用が非常に懸念されますが、この時のマッカーサーは今のプーチンとよく似ています。映像を見るといかに傲岸不遜な態度でトルーマンに臨んだかよくわかります。日本統治でも大きな影響力を持ってましたが、相当な気取り屋でカメラ映りも常に気にするかっこつけ野郎だったんだなとわかりました。しかしwikiで改めて彼の生涯を読むと、興味深い人物です。もしこの時原爆が中国東北部に投下されたらソ連も黙ってはいなかったはずで(朝鮮統治をめぐって国連もボイコットしてましたから)、第三次世界大戦となったことは想像に難くありません。「I shall return.」は第二次世界大戦初期に日本軍に敗れてフィリピンを去る時にマッカーサーが発した有名な言葉ですが、これ高校英語でshallの用法として憶えさせられました。
 朝鮮戦争では朝鮮人に多大な犠牲が出ており、南北とも激しい虐殺行為をおこなったことがよくわかります。そしてその犠牲をもとに「朝鮮特需」となった日本は、戦後復興を遂げます。また日本ではマッカーサーの判断で「警察予備隊」がつくられ、「戦犯恩赦」となり戦前からの有力政治家が釈放されました。前者は今の自衛隊で、後者には岸信介が含まれます。いずれも朝鮮半島の危機的な状況で、日本の武装化を急ぐ必要があったからです。また韓国では今の統一教会につながる文鮮明の反共産主義活動が広まり、文鮮明が岸信介と会談する風景も出ていました。日本と韓国の暗部を象徴する映像です。
 中国の「義勇軍」は人民軍そのものではないという当時の触れ込みは、もちろんウソです。まあ今も「国連軍」と称するアメリカ軍とどっこいどっこいでしょうか。しかし、最前線に送られた義勇軍兵士には多くの国民党軍の捕虜が充てられていたと言っているのをみてdéjà vu感を感じました。中国の国共内戦で1949年に国民党に勝利した毛沢東は、こういう悪辣なやり方で捕虜の虐待をおこなったのですね。今プーチン・ロシアがウクライナ侵攻の最前線に、死刑囚など囚人を投入しているのとそっくりです。人命をゴミ同然に扱うこういう大国の為政者は、あの世で裁きを受けるのでしょうか?
 北朝鮮と韓国はこの後まったく違う経緯ですが、激動しました。韓国は数々のクーデタを繰り返し最近でこそ少し安定してきましたが、貧富格差に起因する極度の少子化で国の存立も危うくなりそうです。一方北朝鮮は共産主義とは名ばかりの金王朝の独裁国家と成り果て、数々のテロ行為を拡げる危険国家となりました。


 「戦後」という言葉ですら遠い過去の死語となりましたが、今にいたっても東アジアの緊張関係でこの朝鮮戦争は暗い影を落としています。おそらく今後100年以上は影響するであろうことを考えながら、暗澹とする思いでこのドキュメンタリーを見終えました。