gillespoire

日常考えたことを書きます

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ますむらひろしさん

ますむらさんは大学院時代、書店でふと手に取った漫画本で知りました。擬人化した猫たちが登場するマンガで、「アタゴオル物語」などが有名でないかと思います。実は私、猫があまり好きでありません。犬は大好きですが、猫のとりすました仕草や春先ぎゃーぎゃーうるさいのに嫌悪感があります。しかしますむらさんが描く猫は思い切りファンタジーの世界で、現実の猫と切り離して見ることができます(少なくとも私は!)。猫好きなますむらさん、ご免なさい。


 今まで随分いろいろなますむら作品を購入しましたが、ギルバルスなどが活躍する少し荒々しいタッチの初期作品が好きです。しかし後年の丸くなった猫たちもいいですね。特に「ヒデヨシ」。ヒデヨシはほんと怠惰な猫で、しょーもない事ばかりしてます。図体ばかりでかくて、いやしいほどの食いしん坊。泥棒、かっぱらいなんのその。近くにいたら困りものでしょうが、マンガだから安心して見られます。
 ますむらさんは山形県米沢の出身で、ご当地の名門校「米沢興譲館高校」を卒業しています。その後上京してデザイン専門学校に入り、わりとすぐ漫画家としてデビューし、現在に至ります。米沢弁もヨネザアドシリーズ漫画の随所で猫たちにしゃべらせていて、おもしろいです。「アタゴオル」は何処の地名かと思っていたら、現在お住まいの千葉県野田市愛宕から来ているそうです。


 最近ますむら作品をあまり読んでませんでしたが、新聞「赤旗」日曜版に「銀河鉄道の夜」を連載しているのを知りました。毎月1回駅頭でこの赤旗を配布しているので、いつもありがたく頂戴しています。話が脱線しますが、最近の共産党員はおじいさん、おばあさんばかりのようです。朝7時前から熱心に配布されてますが、どうぞ健康には気をつけて!
 ますむらひろしは私が好きな宮沢賢治の童話を数多く漫画化しています。実は「銀河鉄道の夜」も1980年代に一度作品にしており、今はその「最終形」としての連載となっています。昔の「銀河鉄道の夜」はアニメ映画にもなりましたが、もう何度も見てビデオも購入しました。細野晴臣の音楽が静かに流れ、猫となったジョバンニとカンパネルラの旅が描かれています。校庭風景の糸杉とか赤い屋根が続く街並み、そして広場の情景は明らかにイタリアです。岩手の風景とはまるで違いますが、画面にしっくり馴染みます。後年フランスに留学した時イタリアの地方都市も旅行しましたが、ますむら版「銀河鉄道の夜」を夢想しながら、懐かしい気持ちで散策しました。
 今回の鉄道列車は前のボックスシート席ではなく、ロングシートですね。ですからジョバンニとカンパネルラは並んで座っています。連載はもう「石炭袋」まで来ていて、ちょうどカンパネルラが消えるところです。もう少しで終わりですが、結末がどうなるか楽しみです。


 フランスで仕事していた時、この「銀河鉄道の夜」のことをフランス人の同僚に話したら、「そのネーミングおかしいよ。だってジョバンニは名前だけど、カンパネルラは苗字じゃん!」と言われました。確かにその通りです。しかし、宮沢賢治はそれを知りつつも詩的なセンスから名付けたんじゃないかと思います。フランスは漫画大国で、FNACなどでも日本の漫画がフランス語に翻訳されて大々的に売られています。もしますむら作品も翻訳されているなら、是非フランス人の感想を訊いてみたいですね。