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花粉症とわたくし

今春のスギ花粉飛散は記録的な量と聞きます。私は花粉症には何十年と悩まされてきました。一番最初の自覚は大学受験浪人の春でしょうか。高校時代からすでにぼんやりと自覚はありましたが、はっきりと「どうしてくしゃみが止まらない?何かのアレルギーかな?」と風呂に入りながら思ったのを思い出します。1970年代終わり頃ですね。ところが、その頃はまだスギ花粉がアレルゲンとなることはまったく報道されてませんでした(アレルギー関係の専門家は知っていたかもしれませんが)。1980年代に入って、ようやくスギ花粉のアレルギーが知られるようになり、新聞などにも出るようになりました。と同時に私自身の花粉症も年を追うごとに悪化していきました。


 しかし、それでも依然としてまだ認知されてなかった状況でした。大学講義で小児科の講師が「花粉アレルギーは本当に存在するのか疑問に思う」と言い出して、非常に驚きました。この先生が言うには「スギの自生が結構多い伊豆七島では花粉症の報告がない。都会で報告が多いから、大気汚染の一種でないかと思う」とのことでした。最近pm2.5はあまり言われなくなりましたが、こういう物質複合体が免疫学でいうアジュバンドになる可能性はあると思います。しかし大気汚染に季節性はあまりないでしょうから、やはり花粉がアレルゲンの本体と考えるべきです。これが1980年代真ん中くらいの話で、1990年代になるころにはようやく学会でも認知された印象です。と同時にヒノキのような花粉もアレルゲンとして報道されるようになりました。


 正直この1990年前後がもっとも花粉症に悩まされた時期で、くしゃみ・鼻づまりや目のかゆさだけでなく、ひどい時は咳が止まらなくなったり、眼球結膜が浮腫になってしまいものが見えづらくなったりしました。特に目のかゆさは相当なもので、リンデロンのようなかなり強いステロイド点眼薬を処方してもらってようやく少し収まるくらいでした。強いステロイド剤は緑内障を続発させる可能性があることは無論知ってましたが、もう頭がぼーっとするくらいひどかったですから致し方なかったです。またスギとヒノキでアレルギー症状が微妙に違うのも自覚するようになりました。ヒノキは時期的にスギより1月くらい遅れて3月末くらいからですが、ちりちり感がスギより強く、不快感はさらに増します。この時期は大学受験や国試受験など大切な試験が集中するので、相当にストレスで消耗させられました。


 1990年代で私はフランスに留学となり、日本を離れました。一番嬉しかったのは春の花粉症から解放されたこと。スギやヒノキはヨーロッパにはないからです。しかし4月ころは若干鼻がむずむずする感じで出ました。おそらくですが、ヨーロッパにも自生するカバノキの花粉のせいで、若干の抗原交差性があるためだと思っています。ただ春に日本に一時帰国すると、途端に花粉症になりました。おもしろいのはフランスに戻っても1週間くらいは花粉症が持続したことです。洗濯は頻繁にやっていたので衣類残存というわけではなさそうです。刺激で誘発されたアレルギーにカバノキ花粉が反応したのかもしれません。


 もうしかし、花粉飛散の時期はお酒が飲めませんでした。飲んだ時はそれほどでもないのですが、夜半になると目のかゆさや鼻づまりが止まらなくなる。窒息するような感じで、
息さえも苦しい。アセトアルデヒドによる血管拡張のせいでしょうね。また煙草の煙を吸うと喘息みたいな症状が止まらなくなり、ただでさえきらいな煙草の煙がますます嫌になりました。


 花粉症の治療には抗アレルギー薬が主でしたが、抗ヒスタミン系は確実に眠くなります。ただでさえ花粉症のせいでぼーっとしているのに、薬のせいでさらに仕事に集中できなくなります。頸部交感神経を切断する方法も報道されましたが、これはHorner症候群を起こす、というかそれが出て初めて治療効果が期待できると聞いて、ちょっとやだなと思いました。


 私がこれらの出来事を過去形で書いているのは、今はほぼ花粉症から解放されているからです。理由は減感作療法。免疫学的に弱い抗原暴露を続けるとアレルギー症状が軽減することが知られています。これを応用してスギやヒノキの花粉抗原を1年中暴露することで、花粉症を軽減する方法です。医学的にはあり得ることはわかりますが、正直半信半疑でした。ですが、親戚がそれをやって花粉症から解放されたと聞いたのが4年前。また中学時代の友人も報告していました。それならやってみるかと、知り合いの医師に頼んで処方してもらいました。これ最初が面倒で、アナフィラキシーを起こす可能性を念頭に結構うるさい検査や観察があります。花粉症でアナフィラキシーは聞いたことがないですが、理論上は起こっても不思議はないということでしょうか。投与する医者も講習会が必要とかで、「先生のために受講しましたよ」とあとで言われてしまいました。ようやく舌下錠スタイルの薬を服用するようになりました。1年後の花粉症シーズンは確かに軽減効果を感じました。しかしまったく無症状というわけでもないです。その後もずっと続けて4年目の今年、初めて効果を実感しました。3月初旬のある日の朝、通勤の電車内であっちでもこっちでも鼻をすする音。そしてくしゃみ。あ!花粉症のシーズン到来だなと気づきましたが、私はほとんど感じません。さすがに下旬に近づくにつれ花粉量が増えたのか、少し目が痒かったりくしゃみが出ます。しかし記録的な飛散量と言われる今春、奇跡的といっていい軽減効果です。お酒も毎日いただけます。嬉しい!同じく花粉症の家内にも勧めましたが、断られました。「薬代が高い」のが理由。保険を効かせて月だいたい3千円くらいの負担ですかね。安くはないけど、3月4月の仕事効率を考えると高いとも思えないです。


 近年花粉を出さないスギの植林が始まっていると聞きますが、その効果が出るのは50年以上先の話と思います。減感作薬のおかげで、花粉症患者が大いに救われるのは間違いないことです。