「京大芸人」 〜だれもがロザン・宇治原になれる訳ではないが
「学歴狂の詩(うた)」 〜関西の大学受験界がわかる
数痴と受験数学
いやー、こんな本が随分前に出ていたとは全然知りませんでした。読んで思ったのは、以前紹介した佐川恭一の「学歴狂の詩(うた)」はまさにこの本のスタイルを真似したものであることです。語り口がそっくりです。
ただこの本を読むと宇治原史規が如何に勉強して京大法学部に合格したか、よくわかるように書かれています。著者は菅広文、お笑いコンビ・ロザンで宇治原の相方です。彼らは二人とも大阪教育大附属高校天王寺校舎の同級生だったのですね。この学校、我々の頃は大阪府内でもっとも有名な進学校で、大学同級生にも出身者がいました。大阪教育大附属高校は天王寺以外に池田、平野に校舎があり、今は大学本部がある池田校舎が本校扱いでしょう。しかし、昔は天王寺校舎の進学実績が一番良かったように思います。今は3校とも昔ほどの勢いはないように感じます。宇治原はここに高校から入学し、菅は信州大教育学部附属松本中から中学に転入してきたそうです(国立附属校の場合、定員に空きがあれば国立校同士で無試験で転出・転入ができる)。菅は「田舎のレベルが低い国立大附属中だったから、天王寺中に移ってからのギャップが大きかった。」と言いますが、そうでもないでしょう。僕の中学時代(普通の公立中学)この松本中から転入してきた同級生がいましたが、中学時代から目立って優秀でした。大学は東大文二に進んだから、信大附属松本中も決して侮れませんよ。
さて菅はあまり出来ない生徒でしたが(天王寺としては)、宇治原は最初から抜群の成績だったようです。こういう途中からも募集する学校、昔は後から入る生徒ほど優秀な傾向があったように思います。今の中高一貫校特に私立は最初から6年一体でカリキュラムが組まれているので、後から入る生徒はかえって不利らしいです。様変わりですね。しかし、芸人になるために京大に進むのか。理系ではあまり聞かない発想です。一風変わった宇治原の勉強法ですが、とにかく集中力がすごいです。1日11時間勉強なんて、私など生まれてこの方一度もしたことがない(笑)。まあ2時間もやると飽きでごろごろするし、あとラジオとかつけながら勉強するのが好きでした。全然集中してないです。だから僕は浪人したのか(嗤)
しかし、こういう集中力ってひとによるのでないか?自分は上記のような怠け者でしたが、自分のこどもは全然違います。ものすごい集中力で他の一切を遮断して邁進するタイプでした。宇治原の勉強法にそっくりです。こどももその集中力で現役で京大に進みました。ですが、人生は長いです。大学受験は人生のスタートラインに過ぎないし、もしそこで失敗したとしてもいくらでも挽回できます。宇治原の場合、僕によくわからないのは京大入学後一気にはじけ、いわゆる大学での勉強は熱心にはしなかったこと。高3の受験前にこの二人は「お笑い芸人」になることを決め、そのために菅広文は宇治原に京大に進学するよう焚きつける。「お笑い芸人」になるのも確かに勉強が必要だけど、その箔付けにというか目立つために京大に入るという心理がよくわからんです。菅広文も折角浪人して1年間精進して大阪府立大に合格したのに、中退して芸人になってしまう。いわゆる「お勉強」のピークはこの二人にとって20歳になる前に来てしまったようです。僕らが学生時代、文系に進む人って、「進級さえすれば大学の勉強なんてどうでもいい。卒業した後の就職には関係ない」と考えているひとが確かに多かったな。今でもそうなんですかね?理系の場合、理学部みたいに「研究する」以外は何でも自由な学部を除いて、医・工・農はほぼ専門が決まっています。専門課程に入ると必修科目が多く(医学部の場合すべて必修科目)、遊んでいる暇なんてほとんどないです。ですから、「お笑い芸人」の道なんて休学でもしない限り無理だと思うなあ。
宇治原の勉強法でなるほどと思ったのは、数学の勉強。「パターンを憶える」これ、数痴(数学の絶対音感がない凡人)の数学学習の必勝法だと思います。整数問題を除くと数IAと数IIBで入試に出る問題のパターンは200くらいに絞られると思います。これを徹底的に憶えれば、大概の入試数学は何とかしのげるというのは僕も実感しました。「確率は諦める」これも、まったく同感。宇治原が挙げる理由は「検算が無意味だから」です。要するに確率の問題は要素分解法を間違えていると、それは検算などで見つけられるものでないことです。確率は数痴にとって鬼門です。
最後の後書きは宇治原史規本人が書いています。「入試は満点を取る必要はない。合格に必要な点数をとればいい」これも本当にそうですね。ただ医学部受験の数学だけは違うかな。難関校医学部の場合猛者ぞろいの闘いになるので、点差がつきやすい数学は基本的に満点を目指す勢いでないと受かりません。
この本、今高校2年のひとが読むといいと思います。真似する必要は全然ないけど、「こういう勉強法でも受かる」と知ると、自分なりの攻略法を立てやすくなるでしょう。
「京大芸人」 菅広文著 幻冬舎よしもと文庫 2014.1.15
2024年現在、文庫版にして第4版。すげー、読まれてますね!
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