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天喜(北野白梅町)〜京都の懐かしい天ぷら割烹



 昔、古本屋でこれまた昔の保育社のカラーブックスを売っていました。これ今は絶版かと思いますが、文庫本くらいなサイズの写真本でお手軽な割に詳しいことが出ていました。さてそこで見つけたのは「京の味」です。1966年に岩城もと子さんという確か新聞記者の方が出した本でした。私、こういう料理店の旧い案内本が好きなのは、「今果たして営業しているか?」を知りたいからです。色々理由はありましょうが、だいたいの店が10年も経たないうちに閉店します。逆にいうと年数が経っても営業している料理店は、それなりに安定して評価されているお店と言えます。昨今の食べログなど、若い女性たちがランチごときで得意になって書いているくだらない情報がほとんどだし、第一会社自体が不当な評価操作を常時繰り返して何度も訴えられているいかがわしいサイトです。まったく当てになりません!そういうのと比べて、こういう探索法は意味があると私は考えます。


 さてぱらぱらめくると昭和の懐かしい雰囲気のお店が次々と出て来ます。私はお金がないので、すっぽんの「大市」とか超有名な老舗は行けません。また「一見さんお断り」の店も伝手がないのでもちろんいけません。そこそこの値段でいけそうな興味ある店を選んで早速検索しますが、ヒットしません。しかしさすがに京都。何店かはそこそこの値段でいけそうなお店が見つかりました。そのひとつが上京区にある「天喜」でした。その頃京大に進学した子供が上京区に下宿していて、地図を見ると割合近くです。入学した最初の年は私が忙しくて京都に行く暇がなかったので、家内にお金を渡して子供達と行かせました。その後は少し時間余裕ができるようになったので、私も度々行きました。良い店ですよ。


 天ぷら屋は正式な日本料理店からすると、少し格下かもしれません。しかし、うちでは滅多に揚げ物をしなくなったので、熱々の天ぷらは外でいただくようになりました。自宅で天ぷらをすると、まず油を十分入れないと美味しく揚がりません。料理が好きですしケチでもないので、油をたくさん使うのは問題ありません。問題は後片付け。油が跳ねるし、大量の油をそのまま捨てられない。それに揚げていると忙しくて、自分が喰う暇がなかなかない。


 「天喜」に行くときはいつもカウンターでお願いしています。揚げながら職人さんなどと話しながらいただくのは、嬉しいです。天喜の現在のご主人の石川輝宗さんは若い時、東京築地の「新喜楽」で修行されたそうですが、その頃下宿されていたお住まいが我が家のご近所だったこともあり、話がはずみました。


 さて肝腎な天ぷらですが、何をいただいても美味しい。定番のさいまき海老や野菜も美味しくいただけます。あとは上の写真にもあるような季節ネタ。夏うかがったときは琵琶湖で揚がった活けの鮎を揚げていただきました。美味しい。日本酒とともにいただきますが、座が盛り上がります。


 務めが一緒だった先生は前職の京大教授時代にマンションを上京の息子下宿ご近所に買って時々行っていたので、この店をご存じでした。「ええ!先生高いでしょう?」と仰いますが、そんなめちゃくちゃ高くはありません。この店、おそらく西陣の旦那衆がごひいきにしてきたお陰で、リーズナブルな値段で長年やってきているのでしょう。北野天満宮近くですが上七軒からも距離があり、観光客はあまりいません。のんびり京都の下町風情を楽しみたい方はいかがですか?


「天喜」〒602-8474 京都府京都市上京区上善寺町89
075-461-4146


カラーブックス「京の味 」保育社 岩城もと子著 1966.01.01