ブルーダイヤモンド 〜青い花が咲くシャクナゲ
「青い花」というと、ドイツのノヴァーリスの小説を思い出します。wikiから引用します。
詩人ハインリヒが夢の中で見た青い花に恋い焦がれ、その面影を求めて各地を遍歴し、その途上で様々な人に会って成長していく様を多くの詩を織り込みつつ描いている。1800年に第一部が執筆され、その後第二部が書き進められていたが、作者の死によって中断された。ロマン派文学の代表作のひとつである。
現在も青い花は珍しいもので、ネモフィラとかオオイヌノフグリ、キキョウ、デルフィニウムとかを除くと原種ではあまり見掛けません。スミレの花は青いといっても多くはせいぜい濃い紫色です。そのせいか青い花は珍重されます。ヒマラヤ山脈を中心に分布するメコノプシス族(Meconopsis)の「ブルーポピー」は有名ですが、冷涼な気候を好み、育てにくいことでも有名です。青いバラも昔から作出が試みられてきましたが、せいぜい青っぽい紫色でした。これを崩したのが、最新の遺伝子工学による人工的な育種です。Hana Hyakkaから引用します。
日本の企業が青いバラを開発したことをご存知ですか?1990年に、サントリー株式会社はオーストラリアのベンチャー企業、フロリジン社と共に青いバラの開発に取り組み始めました。
青いバラを開発するには、2つの課題がありました。まず、青い花の色素(デルフィニジン)を合成する遺伝子を見つけること、そしてその遺伝子をバラの細胞に組み込んで、遺伝子組み換えのバラを作る方法を開発することでした。
1991年に、ペチュニアから青色遺伝子を取り出すことに成功し、競合他社に先駆けて特許を申請しました。しかし、ペチュニアからの青色遺伝子を組み込んだバラでは、青色が発現しない期間が続きました。そこで、パンジーの青色遺伝子を試すと、花の色に変化が現れました。
ただし、青色色素が生成されても、遺伝子を組み込んだバラの性質によって発色の強さが異なることが判明しました。そこで、青色色素の含有率が高く、青い特性を持つ品種に限定することになりました。遺伝子を取り込む方法として、未分化の細胞の塊(カルス)に青色遺伝子を入れ、それを育てて花を咲かせました。この遺伝子導入の繰り返しにより、2004年に青色色素がほぼ100%含まれるバラ「blue rose APPLAUSE(ブルーローズ・アプローズ)」が誕生しました。そのニュースは世界中に広がり、不可能だとされていた青いバラの開発物語は教科書にも載ることになりました。
しかし、このblue rose APPLAUSEにしても真っ青というほどではありません。
ブルーダイヤモンド(Blue Diamond)、名前は小学生の時から知っていました。山野草を扱う通販園芸店(中外植物園)で「青いシャクナゲ!輝くようなブルーの花」と書いてありました。いやこれは凄い!青いシャクナゲなんてブルーポピーみたい。どんな花が咲くのか是非つくってみたいと思いましたが、50年以上前の当時1万円くらいする大変高価な植物でした。一度育ててみたいと思うのですが、なかなか手が出ない。それに栽培には冷涼な気候が向いているとも書いてあり、ためらいました。
その後ずっと縁がなかったのですが、子供達が北海道に住むようになり、これはチャンス!と思いました。あちこち捜してブルーダイヤモンドの苗木を購入し、北海道に送りつけて育てるように申しつけました。ところが私と違って、子供達は植物栽培にまったく興味がないです。どちらも最初の年はみごとな花が咲くのですが、例外なく夏から秋にかけて水を切らして枯らしてしまいます!何度送ってもだめで、断念しました(自分の趣味を押し付けるなと思っていたことでしょう!)。
(札幌で咲いたブルーダイヤモンド)
しかし、一度咲いたのを見てしまうと、何とか育ててこの花を見たいと思います。仕方ないので、また購入して今度は酷暑の北関東の勤め先で栽培しております。「冷涼な気候に適す」というのに、夏は2ヶ月近く連日40度近くになる北関東で果たして育つのか?ものすごく勢いが良いというわけではありませんが何とか育つようになり、今春も花を見ることができました。北海道みたいな寒い気候だともっと鮮やかな青色になるのですが、北関東でもまあまあの発色となりました(一番上の写真)。
ブルーダイヤモンドは野生種でなく、交配種です(Rhododendron 'Blue Diamond')。調べると、アメリカの園芸店サイトに以下の来歴が出ていました。
This is a complex hybrid plant, basically a cross between a Chinese species called Rhododendron augustinii and other Chinese species from Yunnan and Sichuan in western China. R. augustinii is named after the famous French naturalist and priest who worked in China in the 19th century, August Henry, but it wasn’t introduced into England until 1926. Two earlier introductions from Western China were Rhododendron fastigiatum, brought out of China by the English collector George Forrest in 1906 and R. intricatum, arrived in the West in 1907 from the famous American collector Ernest Wilson. Those last two, crossed together, created a group of plants called the Intrifast Group, and done several times in the hunt for the blue rhododendron. Crosfield hybridized an Intrifast plant he had with the newer R. augustinii to create his blue rhododendron.
となっています。簡単に言うと、中国・雲南省原産のRhododendron augustinii を 中心に作出したようです。Rhododendron fastigiatum、R. intricatumの交配で形成されたIntrifast Groupという品種群に、さらにR. augustiniiを掛け合わせてつくられたのが、この品種ということです。いずれも青色系の花を咲かせる原種で、より青い花を目指して交配したのでしょう。作出はアメリカです。余談ですが、19世紀はプラントハンターの時代で、世界各地の珍しい植物を求めてヨーロッパから収集家が探検しました。キリスト教宣教師たちもハンティングに参加したようで、Rhododendron augustiniiはフランスの宣教師Auguste Henri(August Henry)が見つけました。
最初シャクナゲと聞きましたが葉が小さく、どちらかというとツツジの雰囲気です。ツツジ科をwikiで調べると、ヒカゲツツジ亜属(有鱗片シャクナゲ亜属)とツツジ亜属、無鱗片シャクナゲ亜属、セイシカ亜属、エゾツツジ亜属に分類されるそうです。ブルーダイヤモンドの親種Rhododendron augustiniiは有鱗片シャクナゲ亜属に属します。ですからシャクナゲでいいかな?普通のシャクナゲ(無鱗片シャクナゲ亜属)と比べると葉が小さいのが特徴です。札幌だと真冬になると、小さな葉が幹にぴったり貼り付くように下垂します。耐寒性と関係するように感じます。
現在サイトを検索すると、青色系のシャクナゲ(ツツジ)はかなり色々な種類があります。「黒潮」と日本名が付いた品種もあり、これはツツジ(丹那ゲンカイツツジ)とシャクナゲ(クレーターレイク)の交配種です。クレーターレイク(Crater Lake)もかなり青い花で、R. augustinii 'Barto Blue' × 'Blue Bird'とのことなので、基本的にブルーダイヤモンドと近い系統といえます。おそらくRhododendron augustinii は冷涼な気候を好み、普通の暖地では育てにくいと思われます。そのため色々な改良品種が登場するのだろうと思いますが、発色でブルーダイヤモンドにかなうものはなかなかありません。それに花の付き方が密で、確かにダイヤモンドの結晶に似ており、咲き方がきれいです。また花から長く突出する雄しべ先端の黄色い花粉袋も絶妙なアクセントになっています。現在もブルーダイヤモンドを売る園芸店はかなり少なく、手に入れづらい品種です。貴重な品種なので、大切に育てたいと思います。将来北海道に住む機会ができたら、このブルーダイヤモンドを持って移住するつもりです。
余談
「中外植物園」は山野草を専門に扱う園芸店で随分お世話になりましたが、4年前に閉園になっておりました。
法人基本情報(3情報)
法人基本情報(3情報)に掲載の内容は 法人番号公表サイト から取得しています。
法人番号
7021002035257
法人名
有限会社中外植物園(閉鎖)
法人名ふりがな
ちゅうがいしょくぶつえん
法人名英語
本店所在地
神奈川県伊勢原市小稲葉2358番地
登記記録の閉鎖等の事由
清算の結了等
登記記録の閉鎖等年月日
2021年08月20日
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