2005年静岡大生クリニック従業員刺殺事件 〜今もはびこる代替医療にやるせない思い
2005年にあったこの事件の裁判、当時「2人の殺人を犯した高橋義政被告は無期懲役で本当にいいのだろうか」と相当あれこれ考えたことを思い出します。文春オンラインから引きます。
現場には大量の血を流し死亡している2人の女性…“効果のない医療”で恋人を死なせた医師を恨んだ24歳青年が「医師とは別の人物」を殺害した驚きの理由(平成17年)
2005年1月、2人の女性を殺害した24歳の男。ところが男はこの2人の女性に対して、何も恨みはなかったという。捜査が進むにつれてわかった、男の驚くべき犯行動機とは? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする
高橋義政という殺人犯は当時静岡大学人文社会学部の二部(勤労学生のための夜間部)の学生で、26歳でした。大学でとった科目の受講生として知り合った年上の女性と恋愛関係になります。ところがその相手が卵巣癌と診断され余命幾ばくもない状態となり、受診したのが「渋谷脳神経外科」という当時静岡市にあったクリニックでした。卵巣癌なのになぜ脳外科?となりますが、このクリニックの院長だった渋谷直樹医師は「サウンドエナジー療法」という一種の代替医療をおこなっていたのです(後述)。その後、この女性は癌の進行で亡くなりましたが、おさまらなかったのが高橋被告です。
殺されたのは2人の女性
2005年1月29日午前0時半ごろ、静岡市葵区新伝馬町1丁目の「Sクリニック」2階の健康関連商品販売店「K」で、従業員の女性、Iさん(当時60歳)とTさん(同57歳)が殺されているのが見つかった。通常なら2人は17時に仕事を終え18時ごろには帰宅するところが、この日は22時を過ぎても戻らない。心配した家族が店に電話をかけても誰も出ない。そこで、Iさんの娘夫婦が直接店を訪ね、縛られ大量の血を流し死亡している2人を発見したのだった。
娘夫婦はすぐに119番通報。駆けつけた静岡中央署員は遺体の状況と、店のレジや引き出しから6万6千円が盗まれていたことから強盗殺人事件と断定、捜査を開始すると、ほどなく一つの目撃情報が寄せられた。1月28日の夕方、若い男がクリニックの敷地のフェンスを乗り越えて自転車で店から立ち去ったという。警察はクリニックとKに来た人物らを徹底的に洗い出し、事件前日にクリニックを訪れた若い男が捜査線上に浮かび上がる。
診察に当たった医師によれば、その男は「先生は正常ですか、異常ですか?」などと不審な言葉を口にしていたという。さらに、現場に残されていた自転車のタイヤ痕と、男が所有する自転車のタイヤ痕が一致したことから、警察はこの男が何らかの事情を知っているものとみて、事件発覚当日の夕方、任意で取り調べを行う。
男の名は高橋義政(同24歳)、現役の静岡大学生だった。高橋は事件への関与を一切否定した。が、捜査員が粘り強く事情を聞いていたところ、外の空気を吸いたいと立ち上がり、それを静止する捜査員に対して椅子を持ち上げるなど抵抗したため公務執行妨害で現行犯逮捕。その後の調べで犯行を自供したため強盗殺人容疑で再逮捕する。
動機は親しくしていた女性がクリニック院長の不適切な治療により死亡したことに対する報復で、当日は院長が不在だったため、流れで従業員2人を殺害したのだという。
この2人の従業員は確かにクリニックの入るビルで働いていたが、渋谷医師がおこなった治療とは直接関係がない。渋谷医師の妻が「クオリテ」というアロマセラピー店を2階に開き、そこの従業員でした。なぜ渋谷医師でなく、彼女たちに殺意を向けたのか?ここで高橋被告の特異な生い立ちが明らかになっていきます。
父から虐待を受けていた犯人
高橋は幼少期から中学時代まで、父親の虐待を受け続けていた。すりこぎ棒やまな板で殴られ、真冬に服を脱がされ外に放り出される。そんな様子を母親はただ黙って見ているだけだった。当然のように性格は歪み、高橋自身も弟に暴力を振るう。1996年、15歳のときに両親が別居。
2年後の1998年には追い出されるように家を出て1人暮らしを始める。暗澹たる暮らしに転機が訪れるのは翌1999年6月。入学した静岡大学人文学部法学科夜間コースの所属ゼミで、年上の女性Aさんと出会う。彼女は心優しい性格で、高橋が悲惨な生い立ちを話しても突き放すどころか、同情し涙を流してくれた。生きてきて初めて触れた人の優しさ。高橋は彼女に恋心を抱き、やがて2人は交際関係に発展する。
昔読んだ記事では、高橋は10代にして野外で野宿するような生活も長く送ったようで、滅茶苦茶な家庭環境でした。しかし、なぜ父親がそこまで高橋義政をいじめ抜いたのかはよくわかりません。おそらく両親の間に何か隠された重大な秘密があるのだろうと思っていますが、裁判では明らかにされませんでした。このような生い立ちの高橋に著しい認知のゆがみがあったのは間違いありません。それを理解してくれた唯一といっていい人物が、その後卵巣癌で亡くなったAさんということになります。
しかし、出会いから1年半が過ぎた2000年12月、予想もしない事態が発覚する。Aさんが体調不良を訴え受けた病院の検査で、がんを発症していることが判明したのだ。入退院を繰り返しながら治療を続けること2年、2002年10月に彼女は前出のSクリニックに救いを求める。同クリニックは自然治癒力を高める独自の理論に基づいた代替医療を行っており、彼女は藁をもすがる気持ちで院長に勧められるままクリニック2階のKで高額の浄水器を購入する。
この渋谷直樹という医師とその妻の渋谷和嘉子は、建て前はどうあれ不安な心理の末期癌の患者を相手にあこぎな商売をしていたと言えます。
彼が殺害したのは「院長」ではなく…
ただ、高橋には、同クリニックの医療方針は“死にたくない人間の弱みにつけこんだ”商売優先主義としか思えなかった。Kの経営者が院長の妻だったことも彼の疑念を濃くする。詳細は定かでないが、高橋はAさんに己の疑惑を打ち明け、もし死ぬことがあったら必ず復讐を果たすと一方的な約束を口にする。
2003年1月27日、Aさんが死亡。症状は末期で治療の施しようがなかった。高橋は哀しみから立ち直るべく、翌2004年夏、消防士採用試験に挑むも不合格。生きる意味を失いかける。が、自分にはやるべきことがある。効果のない医療でAさんを死なせた院長への報復。決行日は彼女の3回忌に当たる2005年1月27日に定めた。
この日、高橋はバッグにナイフを忍ばせたうえで患者を装い病院を訪れた。が、実行には踏み切れず、翌28日、改めてクリニックに足を運ぶ。果たして、院長は院内にいなかった。そこで、2階のKに足を運んだところ、「院長夫妻は旅行で2日間は戻らない」という。
であれば、犯行をあきらめるか、出直すのが通常だろう。が、高橋は院長の所在を確認したことで怪しまれると思い、“口封じ”のため、何の関係もない女性従業員2人を刺殺する。ちなみに、この日は被害者の1人であるTさんの最終出勤日だった。
女性が死んですぐの犯行ではなかったのですね。2年も経ってからの復讐。一時の激情に駆られても、普通2年もすればかなり冷静になると思います。確かにエセ療法で病気で心身とも弱っている者から金を巻き上げる医者は酷い。しかし、Aさんはいずれにしても死を免れられなかったし、本人が納得して払ったなら家族でもない他人はどうすることもできない。第一ここで復讐したらAさんは喜ぶだろうか?と熟考すればそういう行動には普通走らないです。しかし、そうならなかったのが高橋義政被告でした。しかも殺したのがなぜ渋谷院長本人でなく従業たちだったのか?というと、「口封じ」のため。ちょっと理解不能な思考回路です。完全なとばっちりで、二人殺害ということから、本来死刑でしかるべき事件だったと、僕は今も思います。結局本人の生育歴があまりに特異でかつ酷く、被告の家庭環境自体が事件につながったからというのが無期懲役に減じられた理由でしょう。この記事にはありませんが、当時の裁判報道で、高橋が法廷で従業員たちの遺族たちに土下座して詫びたという記事も読んだ覚えがあります。しかし、遺族たちはそのような土下座でも高橋を赦す気持ちに到底なれなかったのでないでしょうか。
法廷での渋谷医師の証言が記載されています。
被告人尋問で高橋は独特の価値観を披露する。
「(Aさんと)命を奪うという約束をしたなら、しなければなりません。自分が死のうと、相手が死のうと。自分も含めて全ての人間が無価値で、常識よりも自分の信念を取る。こうした考えを受け入れつつも、間違っている部分があると指摘してくれたのがAさんだった。そんな彼女を騙したのがクリニックの院長だった」
こうした供述を受け、裁判所は院長を証人として法廷に呼ぶ。高橋被告の激しい憎悪を考慮し、別室からビデオリンク方式で答弁に臨んだ院長は述べる。Aさんは私の治療を喜んでくれた。それが突然恨みを持たれるとは驚きでしかない。恐怖感は今もある──。さらには、自分が行う代替治療である「サウンドエナジー療法」についても次のとおり説明した。
「サウンドエナジー療法」とは…
「特殊なソフトウェアを搭載したコンピュータを使い、患者さんの声を細かく分析、その中に現れている肉体的、精神的、そしてその根源であるエネルギーの問題を精密に洗い出します。そして出てきたデータをもとに、解消するための“音のくすり”を作成します。患者さんがすることは、カセットテープに録音されたこの“音のくすり”を自宅に持ち帰り、BGMのように流しながら、全身を“音のくすり“に浸らせるという簡単な治療です」
院長によれば、科学的な根拠ははっきりしてないが将来は解明されるだろう、Aさんはこの治療を受け顔色が良くなり食事も摂れるようになったが、「末期がんだった女性に対して、治療で治る可能性があるという説明はしていなかった」そうだ。
音楽によって癌による痛みなどのストレスは軽減されるかもしれないが、癌治療自体には何の効果もないでしょう。それをまことしやかに「くすり」などという。まあ宗教みたいなものだから気に入った人に施療するのは勝手だが、医者としての自覚があるなら無料でおこなうべき一種の慈善活動かと思います。それを高額の機器を買わせたりアロマを高値で売りつけたりと、相手の不安な心理につけこんで稼ぐ稼ぐ。高橋義政でなくても患者周囲のひとびとは義憤に駆られると思います。いったいこの医者なにもの?と思って調べたら、こんな書籍を出していてそこに経歴も出ていました。
文芸社「想造力」
渋谷直樹
渋谷和嘉子
(しぶやなおきしぶやわかこ)
口にしたが最後、問答無用で死へと至らしめる青酸カリ。しかし、この毒物が入った水の中で、メダカが死なずに泳いでいる…? 「不可能を可能にする」生体エネルギーは、存在するのか? 必読の新・生物科学!
定価:1,650円 (本体 1,500円)
発刊日:2000/09/01
増刷情報:6刷
ISBN:4-8355-0594-8
ジャンル:哲学・心理学・宗教 > 精神世界
著者プロフィール
渋谷直樹:昭和26年静岡市生まれ。国立名古屋大学医学部卒業。同大学院修了。脳腫瘍と化学療法の研究で医学博士号取得。名古屋大学医学部付属病院、米国ニューヨーク大学医学部付属病院、東海大学医学部付属病院勤務後、平成3年郷里の静岡市に渋谷脳神経外科クリニック開院、現在に至る。著書に『すべての存在へ』(総合法令出版)、『無限との共鳴』(同朋舎)がある。
渋谷和嘉子:昭和30年静岡市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。SBS静岡放送局報道制作局勤務後、夫と共に渡米。帰国後翻訳秘書として勤務。平成2年にオフィス・クオリテ設立。能力開発セミナー等の企画・主催、生体エネルギー応用ガラス製品、アロマセラピー用品の企画・製造販売に携わる。平成11年(有)聖和学園設立、現在に至る。
どこのインチキ医者かと思えば、一応名古屋大学医学部を出ているのか。妻も早稲田一文だから、一般世間からみたらそこそこの頭は持ってる夫婦でしょう。どこをどう踏み間違えるとこういう脳内パラダイスの世界に入っていくのかわかりませんが、オウム真理教では林郁夫(慶應医学部)とか中川智正(京都府立医大)とかのそれなりに名の通った医大を出た医者もいました。知力はあっても分別があるとは限らない典型と思えます。
googleで確認すると、この「全クリニック」はいまだに開業しているようです。
代替医療というと、最近のこのニュースにも驚きました。大阪大学医学部の教授だった澤芳樹氏が関係した銀座の富裕層向けクリニックの開業お知らせです。
まずは富裕層向け。銀座から世界一を目指す「長寿クリニック」
「再生医療においてはトップランナーですよ、日本は」。そう話すのは、iPS細胞由来心筋細胞シートによる心筋再生治療を24年前から研究してきた大阪大学名誉教授の澤芳樹だ。AIや半導体、宇宙などの成長産業でことごとく遅れをとっている日本が「世界で唯一勝てる技術じゃないですかね」と言う。
10月、澤がCTO(最高技術顧問)として指揮する再生医療を中心とするウェルネス複合施設「THE HUNDRED ロンジェビティハウス」が銀座にオープンした。アンチエイジング医療における第一人者である日比野佐和子が総括院長をつとめ、施設内には、アーユルヴェーダのサロン、発酵料理のレストランも入る。プロデュースするのはソルトグループ代表の井上盛夫だ。
ロンジェビティとは長寿の意味で、昨今、医療や健康領域のキーワードとして注目されている。ヒトiPS細胞由来心筋細胞の研究や開発、その普及も含めて“治療”に軸足をおく澤が参画をした決め手は何だったのか。他のクリニックと何が違うのか。澤、日比野、井上の3者に聞いた。
THE HUNDRED ロンジェビティハウス(以下、THE HUNDRED)は、人生100年時代を心身ともに健康に生きるために必要な「先端的な再生医療・古来の伝統医学・伝統的な日本の食文化」を融合させた複合施設。銀座のど真ん中で、古くは5000年前のアーユルヴェーダから最新テクノロジーを駆使した治療までをワンストップで提供する。
ほとんどのメニューはビジターも利用可能だが、澤による年一回の健康診断、VIPルームの利用など一部は会員限定となっており、その入会金は数百万円を超えるいわゆる富裕層向けだ。医療ツーリズムで日本を訪れるインバウンドもターゲットに見据えている。
澤芳樹氏といえば、今開催中大阪万博でも(私は絶対行かないが)、作成した心筋シートを展示したので話題となりました。しかし、上の療法には学会から澤芳樹に対して強い批判が起こりました。東洋経済から引用します。
再生医療の権威は、なぜ富裕層向け「長寿クリニック」の広告塔になったのか。「えせ再生医療批判」にどう答えたか
赤い培養液の中で、まるで本物の心臓のように脈打つ直径3.5センチの「iPS心臓」。大阪・関西万博の目玉の一つとして人材派遣会社パソナグループのパビリオンで展示されている。
本連載では、科学や科学技術のリアルな姿を通して今の時代を読み解いていく
iPS心臓を製作したのは、心臓血管外科医の澤芳樹・大阪大学大学院医学系研究科特任教授(70)が創業し、最高技術責任者(CTO)を務める阪大発の「クオリプス」だ。東証グロースに上場するバイオベンチャーである。
クオリプスとともに、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った「心筋シート」による再生医療の実現を目指す澤氏。大阪大医学部長、日本再生医療学会理事長などの要職を歴任し、現在は大阪警察病院の病院長を務める。2020年に紫綬褒章を受け、2027年には、140以上の学会が加盟する日本医学会の総会で会頭の大役を果たす。名実ともに関西医学会の権威であり、日本の再生医療界のトップランナーの1人だ。
iPS心筋シート由来の「培養上清」点滴に批判の声
その澤氏が昨秋、東京・銀座の富裕層向けクリニックで再生医療の自由診療を手掛けることが明らかになり、物議をかもした。
澤教授
取材に応じる澤・特任教授(写真:筆者撮影)
iPS細胞由来心筋シートの「培養上清」、つまり培養液の上澄みを点滴するという診療内容に、SNS上や再生医療分野の研究者の間で驚きや批判の声が上がったのだ。
「若返り美容」などの名目で幹細胞培養上清の点滴を提供するクリニックは数多くあるが、人に投与した際の有効性や安全性は証明されていない。
再生医療学会のある関係者は「科学的根拠に基づく治療の提供を標榜する学会の立場として、元理事長がこんなことをしたらさすがに困ると、理事会のメンバーの間で話題になった。やめてほしいと、澤先生に直接進言した人もいたようだ」と明かす。
SNSでの「炎上」から間もなく、クリニックのホームページから澤氏の名前や写真が消えた。また、培養上清の製造・販売事業を展開するとしていたクオリプスも4月、培養上清ビジネスを「当面、中断する」と発表した。
この後は有料記事で澤氏が弁明などしたようですが、そんなアホくさい弁明別に読みたくもない。彼にはこれ以外にも金にまつわる話が色々あることは、大阪大学医学部在籍時から聞いております。
いったいこういう医者たちって、いざ自分が患者になった時に喧伝している治療を本当に受けたいと思うのだろうか?金儲けのためにやってるだけだから、そんなインチキは放り投げて斯界の権威にすがろうと奔走するんじゃないか?まあどっちにしたって人はいつかは死にます。その時には数々の悪行と愚行の結果として地獄行きが待っておりますよ!
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