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自治医大の陥穽 〜ヤフコメで思うこと

自治医大の陥穽 〜部外者や受験生は知らない実情
医学部の修業年限 〜そこまで言うなら戦前のように2種に分けてはどうか?


自治医大に関するこの記事は、その後もヤフコメで色々な意見が出ています。


一番多いのは、医療の部外のひとたちで、
僻地医療に貢献する約束で自治医大に入学したのに、不平・不満はケシカラン!約束守れ!血税で購っていることに感謝しろ
と難じる意見です。

医師になりたい一心でというのがそもそも間違い

建学の目的がそもそも僻地に勤務する医者になってもらうため

お金を返せばそれでいいっていうもんじゃないんだ

防衛医大に入って自衛隊の医師になりたくないと言っても説得力ないし

産業医大に入って産業医になりませんというのもダメだろ

自治医大だけじゃなく地域枠合格でも覚悟と納得をもって入るべきだよ

そもそも自治医科大学を作らなくてはいけないほど地方の医師不足は深刻だということ。都道府県がお金を出し合っていうことは、原資は税金だ。さらにはやる気のない医師が地域医療に関わるとその地域の住民は迷惑だ。間違っって自治医科大学に入ったと思うのならさっさと違約金を払ってくれたほうがまだマシかもしれないが、自治体には本当に迷惑な話だ。志とかなく勉強できるから医学部入ったというのの典型的なパターン。何が落とし穴だ、失礼な。


といった感じです。しかし、医師は基本的に自営業ですから、御礼奉公終了の9年後以降の自分の将来は、独力で拓いていかないとなりません。一般的な事務職サラリーマンじゃないから、会社の人事部が定年まで将来を決めてくるなんてことはない。個人としてのスキルを磨きそれを武器に自分でジョブハントしてさらにステップアップにつなげていく姿勢が欠かせません。しかし一般人はそういうことをよく知らないので、上のような発言になるのでしょう。


 またこういう意見もあります。

書き方に配慮が感じられない。

内情を知って書いておられるか疑問に思うし、悪意すら感じる。

このような書き方をするから、地域枠の学生が差別的な目にさらされる。

保健所の医師もへき地医療をする医者も誰かがやらねばいけない仕事である。

誰がやるのか??

地域枠の実習生が、離島実習で聞いてきた

『君がみた離島医療の現場は、近い未来の日本の姿だ』という言葉を覚えておいて欲しい。

みんなDr.コトーみたいのに憧れてこの大学を受験、入学していると思う。

卒業して現実になった途端被害者ヅラするのか。

この記者もどうなんだ、この大学に設立立趣旨なんて、受験生だったらみんなわかっているはずだけど。

不満な人は少数でしょう。僻地医療にやりがいを感じ、オールラウンドな経験積んだから、後には開業医や訪問医療で活躍。そんな人が大部分じゃないかな。

そういう本人の情熱や使命感だけで乗り切れるような楽観的状況でないことは、以下でわかります。

医療関係者です。

自治医大の不公正だと思う点は、一旦合格してしまうと国公立大前期後期の試験日に自治体による拘束が掛かって他大学を受験できなくなること、それと県職員子弟の比率がやけに高いこと、ちなみに最終面接は各県単位で行われます。卒業したら、県の病院課の係長とかが、自分が金を貸したかのように威圧的に人事異動を告げられます。当県だけの事情かもしれませんが。

何よりも医師としてのキャリア形成の絵が全く描けないのが絶望的です。比較されている地域枠医師は、まだ県内にさえいれば、診療科の選択の自由があり大学院進学なども可能で、随分マシです。

偏差値の高い難しい大学に入ったのに、お気の毒としか言えません

現在の高齢者医療垂れ流しは続けられるわけがなく、日本の恵まれた医療制度も全然安泰ではない。

年寄りの医者は逃げ切れるだろうが、若手医師ほどそのことを懸念していて、スキルアップを望んでいる。近い将来は医者も競争に晒され医師免許があるだけでは食って行けなくなるのが確実。

今よりももっと顕著に医師にも医療自体にも格差が生じるだろう。

それを考えると、自治医大のシステムは確かに不利だよね…

医師としてのキャリアパスに大きな制限が掛けるなら、それを補っていく制度があってしかるべきと思います。しかし中にはこういう自治医大卒業生もいるようです。

自治医大卒業だが、9年僻地勤務している時、週に一回出入りしていた研修病院に頭を下げて、症例集めて、学位論文書いたよ。

10年目、11年目は確かに年下の先生に教えてもらったり、上からかなりきつい指導を受けるけど、ある程度それを耐えれば13,14年目からはそれなりの扱いを受ける。大体同世代に追いつけるのがこの辺り。

今20年目越えで、1000例以上手術症例のある病院 外科部長している。

やれるところでやれることをするしかないんだから。

おかれた環境に愚痴ばかり言う腰抜けになるか、逆境に耐えて経験を積むかその人の信念によるでしょ。この程度の環境耐えれなきゃ医者として続けれないでしょ

まあ、義務やめた奴のその後の人生は高が知れている

自助努力で頑張ったわけでえらいですが、運の良さもあったと思います。卒業生全員がそういうチャンスに恵まれるわけでもないでしょう。少子高齢化の今、人材使い捨ては許されません。折角自治医大に入って医師になってもらったのなら、生涯に渡って働いていける環境を整えてあげるのが当然です。上記のコメントのように、優秀な能力をもつ相手に、オマエラ奉仕が当たり前とか奴隷扱いするカスハラみたいな言動を繰り広げるのは、如何に納税者とはいえ人権の観点からみても如何なものかと思います

このかたのおっしゃる通りで、医師には旬があり、一番成長する時期がある。

その時期に誰でもできるような離島の診療所ばかりなどでは、全く役に立たないヤブ医者が出来上がってしまうだけだ。

この奴隷制度は人権侵害に当たらないのか?

自治医大はそういう目的で存在するわけだからそれはしょうがないんじゃないかな。

ただいろんな知識を得たり経験をするはずの時期に上司のいない僻地や保健所に行く事に不安を感じて焦る気持ちもわかる。

第一義務だから働け!では人は動きません。本人が自分の能力が活かされていると充実を実感しない限り、高度なスキルは発揮しづらいです。医師は「社畜」程度のだれでも代わりが効く仕事とはレベルが違う。

医師免許取得後にどういう時期にどういう研修をうける必要があるか、といったキャリアパスを高校生が描くことはそう簡単ではない。高校生のときに千万円超の契約をして、それを破ったから違約金を払えというのは、たぶん法律違反。

9年縛りじゃなく、3年縛りにすればいいのでは?医師が足りないのは変わらないし、僻地にローテーションでいいので医師を派遣する形で運用しては?

いくらわかっていて自治医大入ってもさすがに9年は辛い。入学前、高校生くらいじゃ全然想像できないだろう。

自治医大に入学する学生で、医師が親あるいは親戚に居る家庭は非常に少ないと思います。以下のようなことがわかっていますから、子弟に受験を絶対に勧めない。それ以前に自治医大でないと医学部に行けないという収入状況の家庭はまずないでしょうけど。

>本当に医療に従事したい意欲を持つ受験生が普通に医師になれる


→まるで自治医大に行くと普通に医者になれないみたいな書き方。


偏差値は高いし、受験エリートではあるんだけどねー。あまり医師の子息は行かない大学だよね。実情を知ってるだけに。何も分かってない頭の良い一般家庭の若者を引き込むシステムなイメージ

自治医大出身の医師はものすごく優秀な人ばかり。もし研究をやってたら、もし都会の大病院で研鑽を積んでいれば、と思う。

でもまあしょうがない。10年田舎で徳を積んで得られるものもあると思って。日本の医療を支えて。

実務経験が乏しいのに僻地に飛ばされて不安になるという人が多いと聞くね。だから、東海高校の子息は自治医科、防衛医科、産業医科にはあまりいかないね。医学部天国東海高校での噂でした。

いかに僻地医療が義務であることを承知したとはいえ、将来にこのような深刻な問題があることをよくよく理解した上で入る学生はほとんどいないのでないでしょうか。また普通の医学部の学生は、卒業間際ぎりぎりまで将来を決めかねています。

子ども達は希望する診療科でさえ医学部入学前、入学後、研修医時代にコロコロ変わり悩んでいた。

入学前に僻地医療を具体的にイメージして覚悟を持ち、6年間プラス9年間長い期間貫くのは難しいと思う。

これが普通なのであって、自治医大の学生にだけ入学前の18歳時点で「自分が選んだことなんだから、30過ぎまでお上が決めたレールからはずれる権利がないことを覚悟しろ」と言うのは、あまりに酷です。しかし地方の医療逼迫は深刻です。

最後まで読んでも、そんなのわかった上でそういうところに進学したんやんとしか。

あと自治医大的なものを否定するのなら、へき地医療はどうすればいいのかについての理屈も無いよね。

こういう提案もありました。

地方の医師不足の地域への取り組みを

考えたら、現実にはアメリカのように

看護医師の創設しかない

看護師が試験受けて診断や治療を行う

手術以外できる、実際今でも内科の医院とか手術しない

つまりほとんどの業務を看護医師ができるようになる

そしてアメリカを見れば、保険が使える医院、病院も指定する

例えば看護医師免許があっても、都市部では働けないようにできる

以前から地方の医師不足地域問題が言われてる

そろそろ本気でアメリカの看護医師制度を導入するとき

日本でも看護師に医師の実務一部を任せるという案がありますが、実質的に機能していないのが現状です。

大学院まで卒業した看護師にそのような資格を与えたいと国は思っているのですが、反対するのは 縄張りを荒らされる日本医師会と 専門学校卒が幹部を占めている日本看護協会です。やむえず国は、6年間教育を受けている薬剤師に継続処方権を許しましたが、医師会の抵抗でほとんど機能していません。


非常に難しい実情があります。私の考えとしては、医学部をアメリカのような大学院相当のmedical schoolとすれば、ある程度問題解決につながるのでないかと考えます。通常の4年制大学を卒業した上で、medical schoolに進むとすれば、18歳で選ばせるよりは遥かに目的意識を明確にした入学者が集まるのでないかと考えます。しかし、これも機会を逸した感があります。第二次大戦後、大学が新制度になるときサムス准将のメディカルスクール構想が安倍能成の抵抗によって潰されたのがつくづく悔やまれます。


 もっともこれから20年経ち、団塊の世代のほとんどがあの世に逝くと、医者は今の入学定員ならば余剰が出てくるはずです。その時には地方医療も改善される可能性があると思いますが、自治医大は割を食う可能性が高いです。その時はこの大学の使命が終わるときかもしれません。