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ナガミヒナゲシ 〜君もコクリコ我もコクリコ


通勤途中にある駐車場だった土地が、昨年の終わりに更地になりました。舗装を剥いで剥き出しの土だったのですが、この週末ふと気づくと一面に小さなケシが沢山咲いていました。土が痩せているせいか、かなり小っちゃな草丈と花ですが、なかなか可憐です。

ナガミヒナゲシです。「長実」のヒナゲシという意味で、ヒナゲシと比べると果実がやや細長いことから名付けられました。外来植物の一種で、この20年ほどで日本のあちこちで見掛けるようになりました。最近はもうどこでも見られる感じで、雑草に近いです。しかし、その赤く目立つ花はとても良いです。
 wikiを見ると、

日本では帰化植物として自生している。輸入穀物などに紛れて渡来したと推測され、1961年に東京都世田谷区で初めて確認される。以後、群馬県、福岡県などにも分布が広がり、2000年以降には全国へ爆発的に拡散した。2007年には青森県、沖縄県を除く日本全国で繁殖が確認されている。発生場所は初期には幹線道路沿いに限られていたが、2011年には農地への繁殖も認められる

となっていて、自分の実感通りです。

2016年以降、埼玉県・千葉県・神奈川県・京都府・東京都・栃木県・茨城県・新潟県・群馬県・大分県・愛知県などに位置する複数の自治体では住民に対し、「特定外来生物や生態系被害防止外来種(要注意外来生物)には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物」としてナガミヒナゲシの危険性を周知するとともに、駆除の協力を呼びかけるに至っている。

一方で周知が十分に行き届いていない面も見られ、個人レベルでは雑草駆除をこまめに行っているような人物であっても、本種は「花が綺麗であるから」とし、駆除せずに残してしまうケースも多く、こうした背景も繁殖を手助けしている要因となってしまっている。

そんなに駆除しないとならない危険植物なのですかね?毒だ、毒だと書いているサイトが散見されますが、英文で検索したところ少なくとも人体に有毒な成分を含むと記載した論文はなかったです。アレロパシーの性質があるようですが(周囲の他植物の繁茂抑制)、これはナガミヒナゲシに限らず色々な植物にある性質です。「魔女の雑草」とも呼ばれるストライガ属の植物のような恐ろしい寄生性もないし、そこまで敵視することなのか?もう40年以上前になりますが、キク科のセイタカアワダチソウが河川敷などに大量に繁茂して問題視されましたが、今はわずかにしか生えていません。外来植物を遮断することは今のようなグローバル化社会では難しいですし、侵入して一時は大増殖してもその後色々な要因でそれほど増えなくなります(*一部の動物を除く)。ナガミヒナゲシをそこまで駆逐しなければならない必然性を感じません。


 私は以前から気になっていることがあり、19世紀の印象派を代表する画家クロード・モネが好んで描いた田園風景で、よくヒナゲシが見られることです。下の絵は「Les coquelicots à Argenteuil (1873)」と題され((パリ郊外の)アルジャントゥーユのヒナゲシという意味)、パリのオルセー美術館にあります。モネの絵はオルセーに沢山ありますが、私がもっとも好きなのがこれです。

 この絵のケシ、19世紀ですけどやはりナガミヒナゲシなんですかね?私がフランスに居た頃、6月ころから郊外の畑や鉄道沿いの土手に一面にこの花が見られました。当時はナガミヒナゲシを知らなかったので、てっきり普通のヒナゲシと思っていましたが、すべて朱色の花でした。当時日本では野草としてのケシはまったく見られなかったので、如何にもフランスらしい、モネの絵そのままだなと感激したのを思い出します。


 フランスのヒナゲシというといつも与謝野晶子を思い出します。1901年当時すでに夫となっていた与謝野鉄幹をフランスに送り出し、続けて晶子もあとを追いかけて渡仏します。与謝野晶子は鉄幹と火のような恋をし、結婚後も熱愛だったのは有名です。片時も離れたくなかったのでしょう。そして、フランスでかの有名な詩を詠んでいます。


「ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す
君も雛罌粟(コクリコ) われも雛罌粟 (コクリコ)」


おそらく晶子も当時のフランスでこのケシを見て、強く印象に残ったのでしょう。ナガミヒナゲシの繁殖のおかげで、居ながらにしてフランス印象派の情景を日本でも追想できて、私としてはとても良いのですが。