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「地理と地形でよみとく世界史の疑問55」 〜図が良い

「世界史の考え方」シリーズ歴史総合を学ぶ① 近年稀にみる悪書!
数痴と受験数学


「なぜ〜か?」という形式で、世界史上の転換点となった事件の理由を探る書です。人類誕生からウクライナ・ロシア対立のような最新の事項まで、55項を取り上げています。


 すべての項目で歴史上の国の位置など地理的な図も添えてあり、世界史地図として理解を助けます。内容としては基礎的なものばかりで、たとえば共通テストでだけ世界史を取るつもりの理系受験生にちょうどいいでしょう。1日くらいの時間でさっと読めるので、一通り世界史の学習を終えた後で、最後の整理で使うといいのでないでしょうか。共通テストに変わってから世界史も歴史上の経済・政治動向との関係性が重視されています。その意味で「事件の理由」を問う本書は打って付けだと思いました。


 著者は関真輿(せきしんこう)氏となっていますが、奥付を見ると三城俊一(みきしゅんいち)氏も1/3くらい分担しています。しかし基本的に年長の関氏の監修のもとにできた本でしょう。実は関氏は懐かしい恩師です。私が駿台予備学校に在籍していた時、世界史の担当講師でした。世界史は午前部で文系は大岡俊明氏が担当し、理系は関真輿氏が担当しました(「氏」は駿台流だと「師」と書くべきですが)。理系世界史は基本的に共通一次試験用です。ですから関氏の教え方は大岡氏とかなり違い、「年表」スタイルでした。横軸に年代、縦軸に各国を配置して同時代的に世界史上の出来事を線などで結んでいきます。生徒はそれを写しながら学習するというわけです。この本でも最初と最後にその年表が概略把握のために添えられています。


 私は高校時代きわめて限られた範囲の世界史しか習わなかったので(古代オリエント〜ヘレニズム、古代中国〜三国時代)、受験用の世界史勉強は完全に駿台に依存しました。それから40年以上経つ今も、浪人時代関氏に教わった世界史概観はしっかりと頭に残っています。予備校で講師にあまり質問することはなかったですが、関氏にだけは何度か質問に行きました。特にユダヤ人の歴史には興味があったので、いろいろうかがいました。その過程でスピノザを紹介してもらったりしました。内容は忘れてしまいましたが、懐かしい思い出です。ユダヤ人に関する知識は、その後フランスに留学した時大いに役立ちました。1944年生まれの関氏はもう間もなく80歳になります。予備校教師は50代半ばで引退されたようですが、著作を続けていらっしゃるようです。大岡俊明氏は2021年に亡くなられたようで、模試解説でしか知らなかった師ですが残念に思います。関師にはこれからもお元気でご活躍を祈りたいと思います。


「地理と地形でよみとく世界史の疑問55」関真輿著 宝島新書 2021.5.24