gillespoire

日常考えたことを書きます

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ハチビキの刺身 〜「ギョギョッとサカナ★スター」にも登場

ポワール

NHKの魚情報番組「ギョギョッとサカナ★スター」、いつも楽しんで見てます。この番組は「さかなクン」がホストとなって1種類の魚を取り上げ、その特徴や生態を紹介し、そして大概はその魚を調理して味を吟味します。この番組、日本のテレビしか視ない人にはそれほど目立ったものでないと思いますが、海外からみると相当特徴がある日本らしい情報番組でしょう。フランスのテレビはまず自然とか農漁業に関する番組はほとんどないです。さすが食の大国なんで多少は食に関する特集はありますが、国営放送のほとんどは政治か経済に関したこと、あるいは思想とか歴史など教養文化に関係したことです。どの番組に出てくるひとも非常に議論好きでそれはそれで日本からみると珍しいというか「立派」ですが、はっきり言って堅苦しくて視てて疲れる。有り体に言うと退屈。自然や収穫などをほわーんと放映して、野山や海川の情緒を楽しむ感性はフランス人にはないようです(長いヴァカンスの戸外生活で彼らはなにをどう楽しむのかな?と疑問)。その点日本人は自然の情緒を楽しみ、分析しながら一体化する雰囲気を好む民族で、テレビ番組にもその傾向が反映されています。


 前置きが長くなったけど、今回の「ギョギョッとサカナ★スター」で取り上げたのは「ハチビキ」でした。実はこの回の放映の前の週、例によって浅草松屋デパート地下をうろつき魚屋で刺身を吟味していた時「ハチビキ」を見つけました。うーん?ハチビキ?聞いたことがない。身は赤黒くて血合い風のマグロ系の色合いです。これと似た刺身で秋に出る珍しい魚スマを思い出させます。

魚屋の大将を掴まえて訊くと「スマじゃありません」と言います。「ハチビキって、こういう感じなんです」とスマホの検索画面を見せてくれます。確かに全然スマと違い、全体的に赤く流線型のボディをしてます。値段もそれほど高くなかったので、思い切って買ってみました。お味ですが、比較的あっさりしながらもうま味があり美味しかったです。ただ独特な香りがあり、マグロやカツオとはまったく違ったものでした。


 さて「ギョギョッとサカナ★スター」の紹介はどんな感じかわくわくしながら録画を見ました。さかなクン、デカイ赤い模造ルビーの指輪を振り回して、「このルビーみたいにきれいな魚」と言います。伊東市近海の巻き網漁に出るさかなクンとアシスタントの虹咲カリナさんですが、残念ながらハチビキは入ってませんでした。伊豆付近では珍しい魚の部類なのでしょう。しかし、さかなクンによると青森以南の海に広く分布しているようです(調べてみると亜熱帯の海域を中心に広く分布しているらしい)。沖縄にもいて「提灯まち」という変わった名前がついています(口を持ってぶら下げて持つと口がびよーんと伸びて赤提灯みたいだからだそうだが、「まち」とは?)。深海魚だそうで、だから同じ深海のキンメダイやエビスダイみたいに赤い魚体なのね。深海魚だからもともと個体数も多くないのでしょう。流線型で赤いので「赤サバ」の別名もあるそう。ちょっと見サバに似てなくもないけど、サバと決定的に違うのがお口です。ミツクリザメみたいに口がびよーんと伸びる。これで獲物をすっと吸うように口に引き込むのです。主上顎骨という骨が吻部を突出させますが、いったい何を吸い込むんですかね?


 驚いたのは幼魚の生態。ハチビキは産卵期深海から浮上して海面近くで産卵しますが、ふ化した稚魚はサルパの体内で過ごしてるそうです。峰水さんという水中カメラマンが石垣島で撮影した映像では透明なサルパの体内に入るハチビキの稚魚が映ってます。これしかし、その稚魚がハチビキとは最初わからなかったのでは?サルパはホヤの仲間の原索動物です。確かにホヤ類の体内に住む魚介類は結構報告されていますが、ハチビキは特別なんですかね?ホヤの中でもサルパはあまり研究が進んでないです。

 なおハチビキの身の赤さですが、分析した結果ミオグロビンと判明したと言ってました。魚介紹介サイトで有名な「市場魚貝類図鑑 ぼうずコンニャク」では、

ハチビキの赤は色素によるもので、カツオのようにミオグロビン(色素タンパク質ではあるが、酸素を蓄えることができる)由来ではない。

と書かれていますが、ミオグロビンでいいようです。ミオグロビンは筋細胞の中にあるヘムタンパクの一種で、酸素分子をトラップしておいて筋に補給します。結果として収縮を繰り返す筋肉に効率よくATP産生を促せるので、高速で遊泳するマグロやカツオの身に多く含まれます。「ミオグロビン含量が多いとは、ハチビキの生態には謎がある」とさかなクンが言ってましたが、確かにそうです。ずんぐり型のキンメダイやエビスダイと違って、流線型のハチビキはそれこそサバのように高速で深海を遊泳している可能性もあるでしょう。

 

 さて最後に出てくる恒例の試食ですが、ハチビキの刺身が出てきました。松屋デパートの刺身と同じ色ですが、一点違いがありました。それは皮目の脂肪層です。白く薄い脂肪層がありますが、松屋のはそこが除かれていました。さかなクンによるとそこが甘くて美味しいそうで、うーんこれは残念。道理で松屋のハチビキの刺身はあっさり味だった訳です。松屋デパートの魚屋の大将には、今後ハチビキが入荷するときは皮目を残してあぶったお刺身をお願いしておきましょう。