国立大学法人法改正が成立（1）　〜「日本が死んでいく」の意味
国際卓越研究大学（1） 〜どういう制度設計なのか
国際卓越研究大学（2） 〜なぜ東北大学なのか
国際卓越研究大学（3） 〜心許ないファンドの運用と政府の思惑

こうやって見てくると、なぜ岸田政権が昨年11月慌てて、国立大学法人法の改正を強行したのか、その意図がわかってくる気がします。

　簡単に申せば
「折角10兆円大学ファンドを餌にしておびき寄せようとしていた東大や京大などの有力大学に、真相を知られてしまった！このままでは逃げられてしまう。逃すまじ。ええーい、こうなったら「こくさいたくえつけんきゅう大学」の選定などどーでもいいわ。めんどくせぇから、この際建て前はかなぐり捨てて、法律改正で一網打尽ぢゃあ！ウハハハハ！！！」

これが昨年11月、岸田政権が大慌てでおこなった「国立大学法人法改正」の本音じゃないでしょうか？嗚呼、哀れ東京大学と京都大学は名大、阪大を道連れに、「虜囚の身」となりました。

　歌舞伎の「白浪五人男」の弁天小僧の有名な「知らざあ言って聞かせやしょう」の台詞が頭の中をこだまします。

　死んだはずの許嫁・信田小太郎（しだの　こたろう）が千寿姫の前に現れ、喜びに舞い上がった千寿姫は彼と契りを結びます。そして結納に送られた「胡蝶の香合」を小太郎に預け、ふたりで駆け落ちをします。ところが｢神輿ヶ嶽｣（みこしがたけ）まで来た千寿姫は、小太郎の正体が「盗賊の弁天小僧菊之助」と知ります。バレたと知った信田小太郎、もとい弁天小僧が啖呵を切ります。

知らざあ言って聞かせやしょう　浜の真砂と五右衛門が　歌に残した盗人の　種は尽きねぇ七里ヶ浜　その白浪の夜働き　以前を言やぁ江ノ島で　年季勤めの児ヶ淵　百味講で散らす蒔銭を　当てに小皿の一文子　百が二百と賽銭の　くすね銭せぇだんだんに　悪事はのぼる 上の宮　岩本院で講中の　枕捜しも度重なり　お手長講と札付きに　とうとう島を追い出され　それから若衆の美人局　ここやかしこの寺島で　小耳に聞いた祖父さんの　似ぬ声色で 小ゆすりかたり　名せぇ由縁の 弁天小僧菊之助たぁ 俺がことだ「弁天小僧菊之助」

【現代語訳】

知らねえのなら教えてやるぜ。石川五右衛門が「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」と辞世の句に残したように、俺も七里ヶ浜で泥棒稼業をしているんだ。昔は江ノ島の弁天様で坊主の見習いとして奉公していたが、寺の賽銭を盗んでチンケな賭け事をしていたら、泊り客の財布を盗むとか、だんだん悪事がエスカレートしていった。そしたら盗癖のあるとんでもないやつだと噂されるようになって、ついに江ノ島から追い出された。それからは女に化けて、あちらこちらで爺さん（三代目尾上菊五郎のこと）の声色を真似てゆすりたかりをしているんだ。名前は爺さんの息子（初代菊之助）が由来の弁天小僧菊之助とは俺のことだぜ。

欺されて操を捧げた上に家宝の「胡蝶の香合」までも弁天小僧に奪われてしまい、千寿姫は絶望から谷に身を投げ自殺しました。「あ〜れ〜」

だから、千寿姫、じゃなくて東大や京大の関係者が、弁天小僧、ならぬ岸田政権の思惑に震え上がり恐れおののいていたとしても、まったく不思議はありません。京都新聞の記事を引用します。

「卓越大学制度は評価指標が恣意的、廃止を」　京都大学落選受け、京都大学職員組合が声明

2023年10月5日 7:00

世界最高の研究水準を目指す大学を国が支援する「国際卓越研究大学」の認定候補から京都大が落選したことを受け、京大職員組合中央執行委員会は４日、京大当局に再申請の断念を求めるとともに、候補選定の評価指標が恣意的だとして、政府と文科省に対して制度の廃止を求める声明を出した。

　声明では、文科省の有識者会議メンバー１０人が「大学変革への意欲」という主観的評価に基づいて認定候補を審査しているなどと批判。「政府への忠誠心競争をあおり、大学の自律性を奪う管理政策だ」とした。

これまだ国立大学法人法改正前の10月の話ですが、改正された今大学人のどれくらいがその危険性に気づいているでしょうか？

部外者ですが、この声明にこんな意見を書いている人物がいました。引用します。

京大職員組合「国際卓越研究大学」　ヤバ過ぎる声明発表　　　　　

2023年10月12日

ヤバ過ぎる声明の考察

一言で申せば「愚か」です。

京都大学の名誉のためにフォローします。

これは京都大学職員組合の声明です。

「京都大学職員組合」の声明発表は京大の意向とは無縁です。

これは職員の「労働組合」です。任意加入でしょうね。

教授陣、経営陣とは関係ありません。

京都大学の従業員を代表する組織でもありません。

これを声明を支持している京大学生、卒業生、教授は僕が調べる限り皆無です。

怒りや呆れ反応はたくさん確認しましたが。「わずか10名の『有識者』が

『全学的な変革』への『意欲』の有無という 主観的評価を交えて配分先の候補を決定した」と批判するタイミングは落選後ではなく決定前に言えよ！と言うツッコミを想定できないのでしょうか。

例えて言うなら、サッカーのワールドカップで敗戦後に

「そもそもルールがおかしいぞ！」

「レッドカードって恣意的やん！」

というクレームに等しい愚かさです。

「わずか10名」という主観を入れて「主観的」と非難する。

。。。 シュールです。

京大職員組合さん。選考委員は何名だったら良いのですか？

京大職員組合が認める妥当な人数を代案として示すべきです。

その数値を主観を排除したどのような客観基準で決定されるのですか？

以下は略しますが、事態をまるで理解できておらず「愚か」です。私は京大職員組合と何の関係もありませんが、彼らの懸念以上に現実は悪化しました。思惑通りに10兆円ファンドが運用できそうもないからといって、強引に国立大学法人法の変更を図って東北大以外の大学も取り込んだ岸田政権の方がルールを破っています。というより、合議体設置で有力大学をコントロールすることが先で、10兆円ファンドは最初からワナだったのでなかろうか？