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国際卓越研究大学(3) 〜心許ないファンドの運用と政府の思惑

国立大学法人法改正が成立(1) 〜「日本が死んでいく」の意味
国際卓越研究大学(1) 〜どういう制度設計なのか
国際卓越研究大学(2) 〜なぜ東北大学なのか
国際卓越研究大学(4) 〜国立大学法人法改正という陥穽


さて国際卓越研究大学の支援の元となる、10兆円大学ファンドの運用はどのような状況でしょうか。


東洋経済オンラインから引用します。

この大学ファンドは、岸田政権が立ち上げた目玉政策のひとつ。10兆円を元手に、年3000億円程度の運用益を捻出し、得られた資金を世界最高水準の研究大学の創出を目指す「国際卓越研究大学」に配分する。


(図は東京新聞から引用))


 ところが、実際はどうなったかというと、日経からの引用です(2023年7月7日)。

科学技術振興機構(JST)は7日、資産10兆円規模の「大学ファンド」の2022年度の運用実績が604億円の赤字だったと発表した。運用成績はマイナス0.6%。年度を通じた運用成果の公表は初めてで、厳しい船出となった。

ファンドは巨額助成で世界トップの大学をつくるため政府が創設した。株式の配当や確定した損益を合算した損益計算書上の当期利益は742億円となった。一方で3月末時点で含み損は1259億円に上った。

JSTによると、助成財源はファンドの財務状況や当期損益なども踏まえて決める。文部科学省幹部は「運用益の範囲内で助成をするため、成果が出なければ支援が難しくなる」としている。

23年3月末時点の運用資産の比率は「グローバル債券」が55%、「グローバル株式」が17%となった。初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた。

世界的な金利上昇で債券による損失が1263億円となった。株式の運用益は655億円と小さく、全体の運用実績は赤字となった。

この同じ内容で、読売はこう書いています。

科学技術振興機構(JST)は7日、政府が設置した10兆円規模の「大学ファンド」の2022年度の運用実績を発表した。債券や株式などの収益額は604億円の赤字となったが、株の配当や利子を含めた当期総利益は742億円の黒字を確保。世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大」認定校に24年度から助成するための財源は確保できる見通しだという。

いや、「ものは言いよう」といいますが、読売は含み損についてマル無視してます。完全に政府の提灯持ちになってるな。そして、元本の目減りには目を瞑って、このなけなしの配当を元にしてこうなったわけです。

世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大学」に関し、文部科学省は1日、東北大を初の認定候補に選定したと発表した。選定した有識者会議は、体制強化計画の磨き上げや民間からの資金増額に向けた戦略の具体化などの条件を満たした場合に認定するとの留保を付けたが、令和6年度中にも正式認定の見通し。政府支出の10兆円規模の大学ファンドから、初年度は100億円前後が支援される

3000億円だったはずがたったの100億円(捕らぬ狸の皮算用)。大丈夫なのか?こんな運用で?しかし、これでは東北大学しか卓越研究大学に選定されなかったのは、「お金がなかったので、大学予算規模からみて効果が出そうな東北大学だけにした」が、本当の選定理由でないか?と思うのは、げすの勘ぐりでしょうか??


 プレジデントオンラインで知野惠子氏がこう批判しています。

また同じ失敗を繰り返すのか


これまでも、政府が税金を投じて、民間も走らせ、結果、頓挫してしまった例は多々ある。

最近の例でいえば、三菱重工業を説き伏せて、国産初のジェット旅客機MSJ(旧名MRJ)を開発したが、開始15年後の今春に頓挫した。三菱重工は当初予定の1500億円を大幅に超える1兆円規模を投じたと見られている。


民間にも資金を出資させて官民ファンドをたくさん作ったが、赤字を流し続けていたり、きちんと機能していなかったりするところも目立つ。

ビジネス感覚に乏しい官主導の問題点を露呈しているのではないか。


大学ファンドについても、運用益を約3%~約4%と見積もったことに対して、経済関係者からは「甘すぎる」と批判が出ている。


研究力の低下からの脱却は日本にとって喫緊の課題である。これまで通りの大学の在り方では、新しい時代にそぐわないこともある。ただ、甘い見通しと希望的観測が先行して大学を巻き込んでの失敗となると、日本の将来を潰しかねない。


大学の組織改革や巨費のファンドだけで、研究力や大学の国際競争力向上につながるわけではない。研究に必要な予算をきちんと投じて成果を上げるためには、現場の意見をもっと聞きながら着実に進める必要があるだろう。


税金を使う以上、国民への説明責任や透明性確保という問題があることも忘れてはならない。

知野氏が指摘する政府系ファンドに対する同じような批判は、私も知り合いの金融関係者から聞きました。