消えたスルメイカ 〜イカが海底に移動したのが原因?
NHKで放映するローカル番組「北海道道」は北海道のいろいろな風物をドキュメントする番組です。今回放映されたのは「“消えたスルメイカ”を探せ」です。スルメイカ、ずっと庶民の魚で安くて美味しいのが取り柄でした。ところがこの10年ほどは極端な不漁となり、価格が高騰しておいそれとは買えなくなりました。10年前に函館を旅行した時朝市で活きスルメイカのイカソーメンをいただいた時がリーズナブルな値段だった最後だったかな。
しかし、今夏は少しましになったようで、自宅近所のスーパーでも3杯600円くらいで買えるようになりよく食べています。今回の道南の旅でもあちこちでイカ刺しをいただけました。
このドキュメンタリーは水産資源研究所の日本海調査を軸にしています。スルメイカは東シナ海で産卵し、生まれた幼生は北に向かって主に日本海を回遊するためです。
石川県沖や山形県沖の調査だと、スルメイカは海底近くあるいは海底を這うように回遊しているのでないかということでした。
(放映された海底でくつろぐスルメイカ)
スルメイカ漁というと夜間明かりを煌々と輝かせて集まってくるイカを捕獲するものという感じですが、これでは獲れないはずです。スルメイカは浅海から深海まで自在に動けますが、イカの数が少ないなら海底近くのオキアミのような餌で十分賄えるということでないかということでした。それなら漁法を変えればまたスルメイカが獲れるということになり、海底近くまで照明灯を降ろしてスルメイカを誘うという漁法を紹介していました。常時点灯では集まらないものの、点滅すると獲れるようになったそうです。獲れたのはよかったですが、基本生息数が少ないことには変わりないです。減少は2015年2016年の産卵期に東シナ海の海水温が低く、幼生が大量に死んだことが切っ掛けと言いますが、その後海水温が戻っても数は回復しないとのことでした。理由として、
1日本海の海流変化
2海水温の上昇
3漁獲し過ぎ
の3つを挙げていましたが、はっきりとはわからないと番組ではしていました。しかし、普通に考えて3の濫獲が原因でないか?2000年代に入ってから北朝鮮が大々的にスルメイカ漁獲に乗り出しましたが、日本の領海で好漁場として知られる大和堆までやってきました。そして日本の警告を無視して、濫獲する濫獲する。下のは2017年の光景です。
まるで旗のように獲ったイカを干している。北朝鮮の漁船は木造の小型船ですが、何百隻も出漁するのですからたまったものでないです。
最近は中国の大型漁船が北朝鮮や韓国の領海で、イカを大量に密漁する様子も報道されています。
2020年7月の韓国・東亜日報の記事から引用します。
●零細な北朝鮮の漁民は沖に押し出される
研究チームは、船体の長さが10〜20メートルに過ぎず、数個の電球だけをつけて操業する小型で零細な北朝鮮漁船が、ロシア沿岸でイカ漁をしている状況をとらえた。2018年だけで、このような活動は、3000件以上捉えられた。韓国海洋水産開発院のイ・ジョンサム研究委員は、「長さが50メートルで先端機器で武装した中国のはえ縄漁船との競争に押されて、北朝鮮の漁民が近くのロシア沿岸まで行ったものと見られる」とし、「彼らが乗っている小型の木船は、小さく劣悪なので、このように沖に出るのに適しておらず、危険だ」と語った。
実際、最近、北朝鮮の漁船数百隻がロシアや日本の海岸に漂流し、一部の漁民が死亡したまま発見されているのも、中国漁船の北朝鮮水域への進出と無縁ではない、というのが研究チームの分析だ。2018年のロシア海域での北朝鮮漁船の漁労活動が、2015年に比べて約6倍に増えたことも、今回明らかになり、年々、中国暗黒船団の横暴が深刻になっていることが分かった。
パク首席科学者は、「中国の大規模な商業漁船団のために零細漁民が被害を受ける事例は、リベリアなどの西アフリカでも発生している」とし、「衛星データとAIを利用して国漁業監視機構に技術を支援すれば、持続可能で公正 漁労活動を提供できる」と語った。
中国暗黒船団の違法乱獲で東海の魚類資源が枯渇し、海洋生態系が破壊されているのも問題だ。2003年以降、韓国と日本のイカの漁獲量は、それぞれ80%と82%減少しており、その背景には中国の違法操業があると推定される。パク首席科学者は、「イカのように国家間の境界線を行き来する魚種を管理するためには、情報共有が重要だ」とし、「域内諸国がデータと科学的アプローチに基づいて、地域漁業を協力的に管理できるメカニズムを作ることを期待する」と話した。
同じく2020年8月のAlternaの記事も引用します。
■「他国領海内で操業する違法漁船としては最大規模」
中国漁船は韓国のイカ釣り漁船に比べて大型で2017~2018年に中国の漁船が漁獲したスルメイカの量は同時期の日本と韓国の年間漁獲量の合計に匹敵する約16万トンと推定され、金額では4億4千万ドルにもなるという。
GFWの科学者、パク・ジェヨン氏は「公になったものとしては他国の領海内で操業する違法漁船としては最大規模だ」と指摘した。
日本の水産庁などによると、日本や韓国のスルメイカ漁獲量は2000年ごろから急減している。特に秋に生まれるスルメイカの資源量が悪く、水産庁は「低位で減少傾向」と評価。「中国や北朝鮮による漁獲量や漁場などの情報が不明であるため資源評価が不確実になっている」としている。
パク氏は「成長して産卵期を迎える前のスルメイカが北朝鮮領海内で大量に漁獲されていることが、スルメイカ資源が減少する大きな理由で、このままでは漁業が崩壊しかねない」と述べた。
今回明らかになった中国漁船の活動は、IUU漁業の典型例だ。IUUとは国際的な資源管理機関が定めた規制を無視したり、漁獲量をごまかして漁獲枠を守らなかったりという形で不当な利益を得る漁業のことを指す。
ここでも中国の無法ぶりがよくわかります。おそらく自国領海の東シナ海や南シナ海の濫獲がもっと激しいでしょう。日本もかつては漁業大国ということで、全世界の海でかなりの魚を獲りました。しかし200海里までを領海とする国が急速に増えて、かつてのような濫獲はできなくなっています。地球は有限で資源も有限です。ますます増加する世界人口を考えると、天然資源の濫獲はイカに限らず止めないと不可逆的な絶滅を招いて大変なことになると思います。スルメイカはサンマと並んで1年魚で、毎年更新です。こういう生物種は一旦減り出すと歯止めがかからなくなると言われており、非常に心配です。
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