飛行機事故に始まり終わった2024 〜2025年への暗い緊張感
2024年は元旦早々の能登地震で度肝を抜かれましたが、翌日2日の羽田空港の飛行機追突事故にも息を呑みました。燃えさかる日航機の機体を見て乗客は無事なのかと思いましたが、海保機の乗員5人死亡は残念でした。先日の産経新聞にこんなニュースがありました。
海保機長、時間余裕なく判断鈍る「ハリーアップ症候群」か 羽田事故報告で元機長ら指摘
12/25(水) 21:29配信
運輸安全委員会が25日に公表した羽田航空機衝突事故の経過報告について、パイロット経験者らは海保機の機長が時間的余裕がない状況で判断力が鈍る「ハリーアップ症候群」に陥った可能性を指摘する。
海保機は機材変更などで出発時間が遅れた上、滑走路の途中から離陸する「インターセクション・デパーチャー」を行うなど離陸準備を急いでいた。元日航機長の土井厚氏は「原因はそれだけとはいえないが、世界の事故にはハリーアップ症候群が原因とみられる事例は多々ある」と話す。
その上で土井氏はインターセクション・デパーチャーを決定した経緯が不透明と指摘し、「機長の確認があいまいなまま、副操縦士が管制に応答するなど手順に違和感もある。書き起こしでなく音声自体を聞けば、こうした疑問が解消するのではないか」と述べた。
一方、航空評論家の青木謙知氏は「離陸順位1位と言われて進入の許可を得たと思ったのがおかしいが、海保機の動きを追えていない管制官にも責任がある」とする。
「ハリーアップ症候群」は初めて聞く言葉で、こんな用語あるのか?と思って検索しました。そうすると、2013年に国交省が航空機重大インシデントの報告で紹介していました。
「ハリーアップ症候群」とは、米国NASAの航空安全報告システム (Aviation Safety Reporting System)のウェブサイトに掲載された記事 (Hurry-Up Syndrome; ASRS Directline, Issue No.5) によれば、様々な理由により、作業や業務を実際に急いでいる場合または急ぐ必要があると感じている場合に、操縦士の人的能力が低下することをいう。
あえて症候群と名付けるほどでもなく、人間のマルチタスク機能には限界があり、特に判断を急ぐ状況下では処理しきれなくなるということでしょう。海保機はこの日忙しく往復飛行しており、事故が起こった時は能登地震対応が焦眉でした。管制官の警告見過ごしが悔やまれますが、誰にでも起こるリスクと考えます。今年は幸いながら能登地震以上の大きな地震はなかったです。特に首都圏は東日本大震災の余震以外大きな地震がなかったですが、かえってそれが怖い。首都圏直下型はいつ起こるかわからないですが、確率的にますますリスクが高まったといえるでしょう。今夏のような激暑の時期に大震災となればどうなるか。倒壊や火災といった直接被害だけでなく、電気・水道といったインフラが数日間でも途絶したら、熱中症や脱水で大量の死者が出ると思います。通信や交通も長期間障害を受けデマが飛び交い、不測の事態が多発すると思います。最近のSNSによる極端な意見傾斜やトクリュウによる強盗事件多発を考えると、杞憂ではないです。少しでも不慮の事故や事件をなくすにはどうしたらいいのか。真剣に備えるべきでしょう。
12月25日のアゼルバイジャン航空機のロシアによる撃墜は、改めてロシアという国の恐ろしさを実感しました。2014年のマレーシア航空機撃墜事件に続いて、ウクライナ戦争に関係するロシアの民間機撃墜事件は二度目です。戦争だから起こった偶発事故と言うなら、なぜロシアは道義なきウクライナ戦争を強行し続けるのか?この事件は遠くだからといって傍観すべきものでないです。日本への北方領土返還などまったく期待してませんが、ロシアの日本への脅威はそれだけに留まらないでしょう。キチガイ独裁国の北朝鮮とロシアがウクライナ戦争で協力関係になったということは、北朝鮮の軍事戦略にもプーチン・ロシアが肩入れしていくということです。中国はロシアを警戒して北朝鮮との友好にブレーキをかけています。本日の読売新聞の報道だと、以下です。
中朝「75年」閉幕式なし 高官交流も途絶 思惑ずれ目立つ
2024/12/31 05:00
【北京=川瀬大介】中国と北朝鮮は、国交樹立から75年の節目を記念した「友好年」の閉幕式を開かずに越年する模様だ。前回2009年の友好年には閉幕式が開かれたが、今回は予想された高官交流がなく、思惑のずれが目立つ両国関係を浮き彫りにした。
中国外務省の 毛寧 副報道局長は30日の記者会見で、友好年の総括を求める質問に対し、「中朝は友好的な隣国で常に伝統的な友好協力関係を保っている」と述べるにとどめた。閉幕式がない理由には言及しなかった。
これは中朝間の問題というより、露朝の急接近に中国が警戒感を抱いているせいだと思います。しかし、その結果孤立感を深める北朝鮮がますますロシアに傾斜する状況を形成し、その過激さがいや増しが上にも増していく予感です。北朝鮮が打ち上げるミサイルの性能はロシアの技術提供以降急速に向上していますが、民間飛行機や船舶がいつこのミサイルに当たるか心配で仕方ありません。もしそうなれば、戦争の危機は日本にとって最早「対岸の火事」ではなくなり、現実化します。
そして12月29日の韓国・務安(ムアン)空港でのチェジュ航空機の空港外壁衝突炎上事故です。航空機体の整備不良可能性も言われていますが、バードストライクが一義的な原因なのは間違いないです。調べてみるとバードストライク自体は恒常的に起きており、特に務安(ムアン)空港は韓国でもっとも発生が多い空港とされています。世界的にみると、バードストライクによる飛行機の重大インシデントはほぼ10年に1回のペースで起きています。ですから、務安空港の衝突炎上事故はいつ起こってもおかしくなかったと言えますが、時期がよくなかったです。今韓国は尹錫悦大統領の非常戒厳令の発出を巡って大揺れです。今回の飛行機事故は韓国政府の責任者不在の下で起こっており、事故による混乱は政情不安をさらに悪化させる可能性があります。韓国野党の首脳は非常時に際して尹大統領への攻撃をいったん沈静させようとしていましたが、本日以下のニュースが毎日新聞に出ていました。
韓国・尹錫悦大統領逮捕へ 逮捕状発付、現職で初 内乱首謀疑い
12/31(火) 9:35配信
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領=職務停止中=による「非常戒厳」の宣布を巡り、韓国のソウル西部地方裁判所は31日、尹氏への逮捕状を発付した。高官犯罪捜査庁(高捜庁)が30日未明、逮捕状を同地裁に請求していた。聯合ニュースによると、内乱と職権乱用の疑いがもたれている。韓国の現職大統領の逮捕が認められるのは初めて。
尹錫悦大統領の支持率は戒厳令の発出後さらに低下し、最早風前の灯火です。しかし、今回の事故で政府の早急な対応必要性を感じる韓国民からは、この逮捕状発付には疑問の声が出るでしょう。韓国の世論が割れて、混乱に拍車がかかる可能性があります。また事故機の乗客遺族からは早くも政府責任の声が上がっています。FNNからの引用です。
チェジュ航空179人死亡事故 遺族代表が韓国政府などに補償求める考え
12/31(火) 0:32
韓国の国際空港で179人が死亡した旅客機事故で、遺族の代表が、政府などにこの事故が人災なのか自然災害なのか明確にして補償を求める考えを示しました。
12月29日、韓国の務安(ムアン)国際空港でチェジュ航空の旅客機が着陸に失敗して炎上し、乗客乗員181人のうち179人が死亡しました。
遺族の代表は30日午後、空港で会見を開き、「この事故が人災なのか自然災害なのか明確にして、ふさわしい補償を行わなければいけない」として、政府やチェジュ航空に補償を求める考えを示しました。
遺族の悲嘆は大きいと思いますが、もう補償要求なのか。確かに空港のコンクリート外壁の設置はこの事故を最悪にしたわけですが、それがただちに政府の責任になり得るのでしょうか。なにか2014年の韓国・セウォル号沈没事故を思い出させます。あの時も朴槿恵大統領の対応拙速さに非難が集まり、政局が一挙に不安定になりました。今韓国が政情不安になれば、北朝鮮の思う壺です。僕はもともと韓国と北朝鮮の表面的な敵対関係に疑念を抱いており、実は北朝鮮にシンパシーを抱く韓国民は多いのでないかと感じています。韓国が政情不安から内乱状態になったら、一挙に北朝鮮が韓国取り込みに入る可能性もあります。サイバー攻撃の技術力を上げている北朝鮮は、兵力を使わなくても韓国を包囲できます。トランプが率いるアメリカは、今韓国に駐留する連合軍(=アメリカ軍)を維持しないかもしれません。そうなれば、東アジア状勢は台湾を含めて全面的な非常事態になり得ます。上記の首都圏直下型地震が起こったりしたら、日本は機敏な対応をできるでしょうか?
2025年は常に緊張感をもって非常事に備える年になるのでないかと思います。

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