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純金茶椀・窃盗 〜父親が独白した“ギリギリの生活”

純金茶碗 東京・台東区の“転売先”で発見 〜故買屋暗躍


再び、日本橋高島屋の純金茶碗窃盗の話ですが、窃盗犯の父親のインタビューが出ていました。集英社オンラインから引用します。


「150万円くらい借金があった」「生活保護を受け昼食はバナナ」逮捕された男の父親が独白した“ギリギリの生活”と展示場の杜撰な警備体制「1万円落ちていたら拾うのと同じですよ」

のっけから何か情けない話が出るだろなという見出しです。

本人のSNSのプロフィールや書き込みなどを見ると、北海道旭川市の出身で、埼玉県を経て江東区に転居、父親と家賃6万8000円の集合住宅に2人で暮らしているらしい。

取材班が自宅を訪ねると、父親がちょうど出てくるところだった。当初は困惑気味だったが、近くの公園のベンチに腰を下ろすと、とつとつと妻や息子、自身のことを語り始めた。


堀江容疑者は一人っ子で、妻は精神疾患で長いこと入院しているという。堀江容疑者が定時制高校を卒業した後に上京し、父は3~4年前に息子を追うように北海道を出て合流したものの、2人とも病弱で仕事も長続きせず、生活保護を受けて暮らしてきたようだ。


「息子が東京に出てきたもんで、私も。息子はコンビニの店員や本屋、警備会社とかいろいろやったけど、朝早いし夜も遅いから長続きしなかった。何に使ってるか本人が言わないからわからないけど、借金もあるらしい。最後に聞いたときは150万円ぐらい、ローンがあるとか言ってた。息子は、勉強はできるんです。読書も好きだった。大学も行きたがってたんだけど、そんな金ないから」

「息子は、勉強はできるんです」かぁ。監視カメラだらけの中で盗みとは「先見の明」ゼロと感じますが?

「いや、私は(純金茶碗を)見てないです。そんなの。(逮捕されるようなことは)初めて。そんなことする子じゃないんです。私からしたら、なんでそんな高いもん、簡単に(ショーケースが)開くようにしてたのかって。一千万円もするのに、そんな『はい、持って行っていいよ』みたいな準備するの、おかしいですよって本当なら言いたいですよ。


結局、手ぇ出した人が一番悪いんだけど。でも、一万円札が落ちてるのも拾ったらダメですよ、というみたいなもんです。だって、お金に困った人を10人歩かせて、その前に一万円札置いたら9人は拾うと思いますよ」

悪事を犯した責任が相手の隙にあるかのような転嫁!確かに金に困っていればネコババしようとする輩が圧倒的に多いと思うけど、それここで言うかね?第一純金茶碗は道ばたに落ちてたんじゃなくて、ケースに収められていたのを開けて取ったんでしょ?

独特な表現をする父親だが、それだけ生活が苦しかったのだろう。普段から、外食などはもってのほかだったという。


「なるべく金かからないようにするには自炊しかないですよ。私がつくってました。1日2食の方が多いですね。昼は大体飛ばして。バナナ1本くらいにして。お金のためです、こっち(東京)は物価が高いから。ちょっと買ったら千円、二千円すぐ飛んじゃうんで。朝はみそ汁つくって、ふりかけでご飯食べて。昼はもしお腹すいたらバナナ。


私は食べない方がいいんですけど。あいつは自分でカップ麺買ってきたりして、お腹がすいた時は食っていました。最低限のお金しかもらえないんです。もうそれ以上は一切出ていない。一円たりとも出ていない。そりゃそうですよ。みなさんの税金でね、私らそれで生かされてんだから。それで十分。


贅沢するといえば、2人で歩いて、まあ公園ぶらぶらしたり。まあ、そんなもんです。今だったら花がいっぱい咲いているからね。『ああ、東京にはこんな花があるんだな』とか。それが私は幸せなんですね。2人で歩けるのが」

頭にもお花がたくさん咲いているようです。働いて稼ごうという気力がまるで感じられない。うちだってめったに外食せんわ。

「優しい子でクソまじめで、仕事があるときは『遅れないように』と始業より何時間も前に家を出ていた。本が好きで、英語も独学で10年ぐらいやってたからできると思うんだけど」


父がそう語る堀江容疑者は、心身ともにもろいところがあり、疲労がたまりやすく、すぐに体のあちこちが痛くなっては仕事を休み、長続きしなかったようだ。母親も病弱だったため、堀江容疑者が幼いころから父親が家事も仕事も両方こなしてきたが、脳梗塞の発作を2回経験し、今も薬が手放せないという。


「息子は体に痛みがあって、ひどい時はトイレにも這って行くくらいで、どうにもならないんですよ。救急車も3回くらい呼んでるんですけど、病院に行って1時間くらいしたら何ともなくて歩いて帰ってきたりすることもあるし。


原因も含めてよくわからないんです。普段、歩いていても突然、脂汗をかいてきて、だるくてすぐに座り込む。『どうしたね』と聞くと『ちょっと座る』とかね。(ここまでひどくなったのは)所沢に住んでガードマンの仕事をしてたんだけど、一昨年にそこを辞めてからだね」

体調不良は脚気のようなビタミン不足と栄養失調が原因でないかと感じますが?母親の精神疾患は息子と関係ないと思うよ。

堀江容疑者は4月に入って体調不良が続き、純金茶わんを盗んだ11日は久しぶりに外出できるほど体力が回復したのだそうだ。そんな堀江容疑者は、どんな少年時代を過ごしたのだろう。


「小学校のころは野球をやってたけど、体もちっちゃいし活発じゃないというか、鈍臭いとこがあるから、レギュラーにはなれなかった。中学になると、理由がわからないんだけど、学校に行かなくなった。『なんで学校行きたくないんだ?』って聞いても、ただ「行きたくない」って。1年生の途中からで、その後ずっと行かなかった。


で、『これじゃだめだ』と思って、不登校の子どもを集めるところに連れて行ってちょっと通わせて。それでも高校は、定時制に入れたんですけど、本人もそこから休みなく4年間無事通ってくれて。この間は働かずに高校に行ってただけだけど、友達も4~5人できて何とか4年間すごしたみたいです」

定時制高校進学は働くためじゃなかったのか。

不登校だった中学時代から打って変わって充実した高校時代を過ごし、大学進学を希望した堀江容疑者だったが…。


「勉強、できるんです。できるから今度は『大学行きたい』って言い出したんだけど、こっちが『ええ?冗談じゃないわ。高校だけでもお前、(カネで)大変な目に遭ったのに』って。まあ仕方ないです。母親のアレ(治療費)もあるし。

♯1でも報じたように、体調不良から定職に就くことは難しかったようだ。


「そうですね。体調悪いもんで。(1日に)1、2時間ならいいかもしれんけど。だから、仕事の紹介状を書いてもらうにしても、1、2時間でまず慣らして、次に3時間,4時間と延ばすという段取りにせないかんね、という話まできていたんです。ようやく。


それまではもう、きょう調子いいかと思うと次の日にはがくんときたり。波がきつくて。ようやく最近波が少なくなってきたら…そういう(物を盗むような)子でなかったんだけれど、どうしたのかな…魔が差したのかな、何だろな…。その矢先なんですよね」

どうみても体調不良は栄養不足が原因と感じます。ビタミンB1不足による「脚気」の症状をDoctors Fileサイトから引用しておきます。堀江大容疑者の容態はまったくそのままと感じます。

ビタミンB1が欠乏すると、まずはイライラ、倦怠感、食欲の低下などの症状が表れます。また末梢神経や中枢神経に異常が生じ、手や足の先に痛みやしびれが出るようになります。さらに進行すると筋力が衰え、感覚障害が出て歩行が不自由になります。


身体だけではなく頭があまりにも弱い父親の発言を聞き、脱力しました。脱力したのでヤフコメを集める気にもならず、ひとつだけ。

みたらしらたま3日前


普通に働け。田舎で家賃2万円ぐらいであります。介護の仕事なら手取り20万円ぐらいはあるので窃盗するぐらいなら何とかなるだろう。働けない理由を探すより働く方法を考えましょう。

おしまい。ただ、これ読んで最近愛読しているブログ「HOUKOUの彷徨人生」の記事を思い出しました。エマニュエル・ボーヴ『のけ者』という本が紹介されています。HOUKOU氏によると、

物語は、夫を無くしすっかり零落したアフタリオン夫人と、その息子二コラのどうしようもなく向上心がない親子のどうしようもない物語である。

勤勉な日本人であれば、「じゃ、働けば」と言いたくなる場面の連続である。

国の如何を問わずこうした類型の人間が、普遍的にいることを何となく感じさせる小説である。

だそうです。むむ、この堀江大容疑者親子とそっくりじゃん!早速アマゾンを参照すると、

ニコラ23歳、無職、宿ナシ》

 かつては「深窓の令嬢」でありながら、どこの馬の骨とも知らぬ移民の若者と駆け落ちし、長年消息を絶っていたルイーズ・アフタリオンは、ある日、夫の忘れ形見ニコラを連れ、姉を頼ってパリに舞い戻る。だが、姉夫婦の冷たい仕打ちに耐えかね、親子はホテル暮らしを決意。やがてその宿代も滞納し、徐々に宿泊先のランクを下げていく。

 金の工面の担当は息子のニコラ、方法はもっぱら無心。親類や友人、また行きずりの誰かから金を借りては、踏み倒していく。決して悪気はないのだが、「貧乏貴族」アフタリオン親子は、ついつい調子に乗って、分もわきまえず、すぐに浪費してしまうのだ。

 追い詰められたニコラは、ようやく郊外の工場に働き口を見つけるが、厳しい規律や表層的な人間関係に疲れ、たった二週間で突然の出社拒否。とうとう母親も精神のバランスを崩し、借金の当ても遂になくなり、親子は破滅へと向かっていく--。

こんな読後感想が出ています。

syaorie1124

5つ星のうち5.0

 悲惨だけどどこか可笑しい。でも他人事と笑ってもいられない。

2010年9月28日に日本でレビュー済み

本屋さんでこの素晴らしい表紙を見て一目惚れ。ただ今まで何度もフランスの小説を読んでは挫折してきたので(たまたま選んだ本が合わなかっただけだとは思うけれど・・・)ちょっと躊躇した。

けれどもこの本は文体も非常に読みやすく、描かれている内容も80年以上も前の本とは思えなくて、現代でも十分通じるというか、ああこういう奴、今でもいるよなあ・・・としみじみ思うのだ。

人間というのは国も時代も関係なく、普遍的なものなんだなあと。


この本では金が無くなる→他人から金を借りる→浪費する→金が尽きる→借金を踏み倒す、をひたすら繰り返し、どんどん金を貸してくれる人が減っていき、どんどん世の中から孤立して、他人に蔑んだ目で見られ自尊心をぼろぼろにされ、みじめになっていく様が淡々と描かれている。

それがいちいち面白い。


働こうともせず他人から金を借りては浪費ばかりしているくせに、自分たち親子に金をくれて助けてくれる人が誰も世の中にいないなんて信じられない!と悲嘆にくれ、散々自分たちが借金を踏み倒してきた親戚や友人や世の中を逆恨みしているというアホが主人公、しかも親子そろってである。

しかもどこかで何の根拠も無く自分の優れた資質を誰かが見抜いて注目してくれるかも、とか思っていたりするあたり、始末におえない。


たまにニュースとかで見かける金目当ての殺人事件。働きもせず自堕落な生活をして金を浪費して、挙句金のために他人を殺すような輩は今世の中にたくさんいるが、心理としてはこの本のアフタリオン親子のような感じなんだろうなあと思う。


〜以下長いので省略

嗚呼!昔からこういうろくでなし親子は洋の東西を問わず、そのへんにごろごろしているのですね。wikiによると、Boveとは以下のような人物。


Emmanuel Bove, né le 20 avril 1898 à Paris 14e et mort le 13 juillet 1945 dans le 17e1, est un écrivain français, connu également sous les pseudonymes de Pierre Dugast et Emmanuel Valois. De santé fragile, très affaibli par une pleurésie contractée durant son exil algérien (paludisme), Emmanuel Bove meurt, le 13 juillet 1945, à l'âge de 47 ans de cachexie et défaillance cardiaque.


Boveには3つもペンネームがあったのね。Boveは堀江大さんみたいに病弱で、結果早死にされたのか。でも彼の場合、閉塞性の胸膜炎とはつまり結核だったのでないか。実話が下敷きにあるかどうか知らんが、そういう情けない話を文学まで昇華させるのがすごい!せっかくだから、フランス語の原文で読んでみるか。