クロ現・私の知らない「私の息子」 ~剱岳山ガールと似た匂いが
2019年の剱岳滑落事故 〜ADHDはヒトの特性の1つかもしれない
このNHK「クローズアップ現代」は今年5月30日放映で、キャスターは桑子真帆 、ゲストは
真鍋昌平(漫画家)でした。眞鍋さんは著書「闇金ウシジマくん』があるように、闇社会に明るい人物として(皮肉か?笑)呼ばれたようです。NHK番組のキャプションは
ある1人の大学生が命を落とした交通事故。しかし、それは単なる事故では終わらなかった―。亡くなる直前、大学生は民家を狙った窃盗に加担していたことが発覚。事故車両に乗っていた5人は、“闇バイト”仲間でした。こんな息子の顔を私は知らない・・・。地元でも有数の進学校を卒業し、大学生になったばかりの息子がどうして?両親は、手がかりを求め続けています。なぜ今、若者の間で闇バイトが広がっているのか?真相に迫りました。
となっています。この人物、前回取り上げた剱岳遭難の女子とよく似ていると思いました。
亡くなった学生は仮名「健太さん」となっています。
交通事故が起きたのは2021年5月30日。路肩からはみ出して停車していた軽自動車に大型トラックが追突しました。この車に4人の若者と乗っていた健太さん。車外に投げ出され、2時間後に亡くなりました。突然飛び込んできた、息子の訃報。連絡を受けて息子のアパートに向かった父親は、そこで予期せぬものを目にします。机の上にあったのは詐欺のマニュアルのような書類。
父親
「何かの走り書きというか、メモみたいなものがあって。想定問答みたいな感じで」
郵便受けにあったレターパックを開けると…
父親
「見ればSIMカードは分かるんですけど、何でそんなに大量にあるのだと。ちょっと正直怖かったです。まさか、みたいな。考えが止まっちゃうんですよ。思考停止に陥るというか。考えたくもないし、考えても分からないし。なんか目を背けてしまいます」
不審に思った父親は警察に通報。その2か月後、ある事実を知らされました。大破した車のトランクから金庫が見つかり、それは事故の直前に民家から盗み出されたものだったというのです。
父親
「びっくりしました。金庫を運んでたところで追突されて、みたいな話を聞いて。何とも言えない気持ちでした」
仕送りした生活費はほとんど手つかずのままで、お金に困っていた様子もありませんでした。
父親
「分からない、本当に分からない。なんでだろうって。普通に生活していればそういった誘惑とか、そういったものには巻き込まれないはずなので。何も分からない状況で終わってしまうのが何かすごく違和感があったので、真実は知りたいなとどうしても思いました」
あの日、息子は一体何をしていたのか。両親は真相を知りたいという一心で窃盗事件の裁判に通い続けました。被告はいずれも20代前半で、無職と会社員、そして大学生の3人。法廷で初めて、あの窃盗が“闇バイト”だったと明かされました。
健太さんは数学が得意で中高一貫校を卒業し、滋賀県草津市にある大学の情報系に進学したとなっています。はっきり書いた記事はありませんが、5chだと立命館大学・理工学部でないかと推測されています。
しかし、明らかになる健太さんの転落の軌跡がきわめて速いです。
2021年4月 草津市にある大学に入学。一人暮らし開始
大学入学直後から大阪のミナミにあるホストクラブで働き始めて、大阪にある寮に住み込む(親には言わないで)。健太さんはホストの寮で暮らしながら店に通う日々を送る。夜遅くまで働きながらも、大学の授業には出席し続けていた。
同じ授業を受けたことがある学生
「オンライン授業のため顔はわかりませんでしたが、コロナ禍でほぼ知らない人だらけの授業の中、先生に真っ先に質問していたので『勇気があるな』と思って印象に残りました。発言もハキハキしていたと思います」
ここ3年間の新型コロナ流行で、学校がオンライン教育主体となった影響をもろに受けている点は特異な事情だったといえます。
しかし入所したホスト寮でも、慣れた感じではなかったようです。
同僚のホスト
「しゃべり方はおどおどしとったけど、おもしろいことを言うなみたいな。こっちからすると、いじりがいがあるなみたいな感じだった。一緒に頑張っていこうみたいな、その当時僕も新人だったので」
しかし、そのホストクラブも3週間がたった4月末、辞めていました。この頃から友人との連絡も滞りがちになり、詳しい足取りも分からなくなったとなっています。何をしていたのかと言うと、おそらく闇バイト。遺品のスマホの記録を見ると、5月連休明けにはテレグラムを通じた闇バイト活動に精を出しています。連休期間中に実家に帰省した健太さんは髪を金色に染めていましたが、父親は「今時の若者の行動の一環」と大して気にも留めなかったと述べています。
しかし連休明けには普通からちょっと変わったから犯罪まっしぐらとなったことは、以下の記述でもわかります。
たった2月前には、こんなことを述べていた健太さんなのに
2021年3月3日 Youtubeより
「久しぶりに学校行って思ったことは、自分の会話力があんまり上がってないこと。だからそういうのをつけるために、何かホストになりたいと思いはあるわけですよ。本当に今進まないと、これからは変わらないからね」
そこから一足飛びにこれです。
2021年4月1日 Youtubeより
「人気になりてー有名になりてー。登録者を稼ぎたいねん、とにかく」
コミュ力を鍛える動機だったはずが、なんで金稼ぎに走る?というのが、私の率直な感想です。youtubeで有名人になること=金儲けになると知ったことがまずかったのでしょうか。そして、
2021年5月25日 Youtubeより
「光の世界で金を稼いで生きていくのか、闇の世界で金を稼いで生きていくのか、それがどっちがいいのかっていうね。やばい、8時半や。そろそろ新しい世界へと旅立たなあかん。正直、犯罪はやりたくないんよね」
この時点で、もう引き返すことができない分岐点を過ぎてしまったことが、はっきりわかります。そしてこの5日後に、名古屋で押し込み強盗を働き、その帰路上記の事故に遭って、死亡しました。「新しい世界への旅立ち」とは、「地獄への旅立ち」でした。
高校時代の友人は以下のように述べています。
健太さんの友人
「彼はとても素直で愚直な人であり、『少し怪しいもの』を注意深く疑うということが少ない人でした。皆で深夜の繁華街の危険性を思いつく限り説明し、説得を試みましたが、彼の頑固さの前ではあまり効果がないこともわかっていました」
子どもは1人だけで、結婚して7年目に授かった。
算数・数学が得意で、小学生のときに学習教室に通い、表彰状やトロフィーをもらった。父親「ちっちゃい頃は(電車の)先頭に行って」
電車が大好きだった息子。休みの日にはよく、親子3人で電車を見に出かけた。駅名や電車の種類をたくさん覚えた。興味のあることに、記憶力を発揮した。
一方、争いごとは苦手。テレビでも暴力的なシーンを嫌がった。
登場人物が戦ったりするものより「サザエさん」や「ドラえもん」のような、ほのぼのとした番組を好んだ。
中学生のときは生徒会長を務めた。2021年4月、大学入学と同時に実家を出て、一人暮らしを始めた。本人の希望だった。
父親
「反抗期らしい反抗期なんてほとんどなくて、親に逆らうことはほとんどなかったと思います」
大学生になってから髪を染め始めましたが、それ以外の変化は感じなかった。
父親「親と口きかないとかそんなんじゃないし普通にしてたし、ちゃんと授業受けてるのかって言ったらちゃんと受けてると」
頻繁に連絡も取り合い、息子のことを知っているつもりだった父親。
しかし事故後、その足跡をたどる中で上記したように思いがけないものを見つけました。そして息子が高校時代から毎日のように投稿していたyoutube動画とスマホの記録で健太さんの真実を知り、驚愕の変貌を知ることになりました。
さらに、3人の供述などから、息子が名古屋に向かう途中に犯行を嫌がって泣いていたことや、金庫を盗んだ現場で立ちすくんでいたことなどを知った。
同乗者の供述より
「(息子は)名古屋に向かっている道中等でも、ずっともう本当に帰らせてくださいよ等と言って、時には涙を流していました」
「同乗者は、盗みをする時等に(息子に対し)はよ行けや等と言っていました。
別の同乗者は(息子)から携帯電話機を取り上げて勝手にラインを送ったりして遊んだりしていました」
「(息子は)まだパニック状態なのか車に乗ろうとせず、家の前に立ち尽くしていました。
すると、同乗者があいつもういいやん等と言い出し車を発進させたのです。
私は、さすがに放っていくのはやばいやろう(息子が)捕まったら俺らも捕まってしまうやろうと思い、
とても焦ったのを覚えています」
父親
「もっともっと小さいことで失敗させてくればよかったなってずっと思ってて。あまりにもその手前で止めちゃってた部分もある。過保護にするつもりではないけど、どうしてもそういうふうになっていたのかなと。もっと早くきちっといろんなことを教えてあげてたらよかったのに、ごめんねって」
もっと小さな失敗を重ねて学んでいってほしかった。
真鍋さん:
まず、親と子どもの断絶というのをすごく感じました。
桑子:
親子の断絶?
真鍋さん:
仲よくしているように見えても、実際は共通しているものや、見えてるものが違う。
桑子:
見えているもの?具体的にどういうことでしょうか。
真鍋さん:
父親世代とか自分たち世代が知っていたルールと、今のルールは全然違くて。スマホの中にたくさんの欲望があって、判断するのが難しいぐらいの情報にさらされているわけじゃないですか。今回の闇バイトのケースにしても、犯罪という認識は多分なかったんじゃないかなと思うんです。
〜後略
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