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九大生両親殺人事件 〜経過を知りやり切れない思い

東海中学受験生の刺殺事件 〜なんと父親はASDだったのか!
小野仁選手の逮捕 〜追い詰める親とクレプトマニア・蛙化現象


本日の共同通信の配信記事です。
この事件は刺した九大生の詳報がメディアでは、なかなか明らかになりませんでした。本日のニュースで、九大工学部の学生と初めて知りました。

両親殺害、19歳に懲役24年 弁護側は保護処分主張、佐賀地裁


佐賀県鳥栖市で3月、両親を殺害したとして殺人の罪に問われた元大学生の長男(19)の裁判員裁判で、佐賀地裁(岡崎忠之裁判長)は15日、懲役24年(求刑懲役28年)の判決を言い渡した。弁護側は保護処分が相当だとして、家裁移送を求めていた。

 起訴状によると、3月9日午前11時45分~午後0時半ごろ、実家で50代の父親の胸や首を、40代の母親の胸や背中をそれぞれ刃渡り約15.3センチのナイフで複数回刺すなどし殺害したとしている。

 長男は少年法で起訴後の実名公表が可能な「特定少年」に当たり、佐賀地検は5月の起訴時に氏名を公表。地裁は5月、公判で秘匿する決定をした。


そうか、久留米大附設中高の出身だったのですね。「附設」といえば九州トップの進学校で、東大とか九大など国立大医学部に行く生徒も相当多いです。しかし、この学生も優秀だと思います。決して落ちこぼれでもないのに、大学下宿まで押しかけて成績のことで叱責したという父親の気持ちがよくわかりません。なんでそんなに怒るの?

このコメントは気になります。調べたら読売新聞の九州板に報道されていました。長いですが、重要なポイントだと思うので、引用させていただきます。

鳥栖市の両親刺殺「つらい思いさせ、覚えがないのかと怒り」…すれ違った父子関係


「待ち受けは長男の写真」「1時間以上正座させて説教」――。佐賀県鳥栖市の実家で3月、両親を刺殺したとして殺人罪に問われた元九州大生の長男(19)の裁判員裁判で、長男に関する父親(当時51歳)の言動が明らかになった。浮き彫りになったのは期待をかける父親と、殺意を募らせた長男のすれ違う親子関係。法廷で父親殺害が「心の支えだった」と語った長男の心の 深淵 は裁判員の目にどう映るのか。判決は15日に佐賀地裁で言い渡される。(上本虎之介、小林夏奈美)

 「なんで……」。とどめを刺そうとする長男に対し、父親はこう口にした。「あれだけつらい思いをさせておいて、覚えがないのかと怒りを感じた」。長男は被告人質問でよどみなく話した。止めに入った母親(当時46歳)も刺したが、父親しか目に入っていなかったという。

 成績が悪いと1時間以上正座させて説教し、平手打ち、脇腹を蹴る、「失敗作」などと発言し、建築士の夢や本の好みを否定する――。長男は父親から受けてきたとする「虐待」を挙げ、父親殺害について「しなければならない心の支えだった。放棄すれば生きてきた意味がなくなる」と説明した。

 父親を恐れて迎合する習慣があり、父親が行ったと語っていた九大に自ら志望し、進学。福岡市で一人暮らしを始めたが、 復讐 心は消えず、わざと成績を落として呼び出された実家で殺害を実行した。「もう生きても死んでも、どちらでもいい。残る人生は消化試合」。投げやりな言葉を発した。

ここまでは今までも何度か報道されている内容ですが、後半部分に驚愕しました。

法廷では、長男の説明とは対照的な子を愛する父親像も示された。

 父親の弟は、父親が携帯電話の待ち受け画面をテーマパークで撮影した長男と長女の写真にし、長男が幼い頃に「お父さんがんばって」などと書いた手紙を車の中にしのばせていたと証言。親子2人の携帯でのやりとりからは、長男がほしがると思ったCDをこっそり買い、LINEで「やればできる子」と励ます姿も明らかになった。

 臨床心理学の専門家は尋問で、長男について、上位2%ほどの高い知能がある一方、人の気持ちの理解が苦手と指摘。父親については、実際には入学していない九大を中退したと周囲にうそをついていた点などから「劣等感を 払拭 するため、長男に厳しく高学歴を望んだ可能性がある」と言及した。

佐賀地方裁判所

 審理最終日の7日は、検察、弁護側が親子それぞれの視点で訴えた。検察側は論告で「愛情をうまく伝えられなかっただけ」と述べ、懲役28年を求刑。弁護側は最終弁論で「愛情があったとしても深刻な虐待」と反論し、保護処分にすべきだとした。

 長男の妹にあたる長女は残された家族としての揺れる思いを調書でこう吐露する。「父は優秀な兄に期待していたから厳しかったのだと思う。兄もつらい思いをして、我慢してきたのが爆発したのだと思う。ただ、母まで手にかけることはなかったのに。私にとっては優しい兄。心配している」

ここがわからない。
「父親については、実際には入学していない九大を中退したと周囲にうそをついていた点などから「劣等感を 払拭 するため、長男に厳しく高学歴を望んだ可能性がある」と言及した。」
なんでそんなウソというか見栄張りをしたのでしょうか?いろいろ考えましたが、この父親が「自己愛性パーソナリティ障害」だったと考えると、一番しっくりします。自己愛性パーソナリティ障害は一言でいうと、「自分エライ。他人はすべてバカ。」に尽きますが、大きく2つに分かれると教科書で習いました。一つは「能力がある自己愛性パーソナリティ障害」です。能力といっても色々ありますが、特定のでもいい。明らかに他人より優れた能力があって、それを基盤とした自己愛性パーソナリティ障害です。芸術家とか研究者などに多いと言われ、実際成功して社会的名誉も伴っていることが多いです。基本「イヤな奴」であることに変わりありませんが、一応能力はあるので他人は面と向かって抗議しにくいです。もう一つが「能力がない自己愛性パーソナリティ障害」です。「自分はエライ」と思っていても内実がないから、否応が上にも周囲とのあつれきが増えます。当然衝突が絶えず他人からの侮蔑もしょっちゅうです。自尊心は肥大しているのでさらに傷つきやすく、本当は劣等感を抱いている。ちょっとしたことでその劣等感が傷つけられると逆上して手が付けられない。境界型人格障害でもよく使われる表現ですが、「薄い卵殻の上をそっと歩く」状況なのです。この父親はまさにこの後者でないでしょうか。


 あと気になるのが、以下です。
「臨床心理学の専門家は尋問で、長男について、上位2%ほどの高い知能がある一方、人の気持ちの理解が苦手と指摘。」
息子にはアスペルガー的気質があると暗に述べています。ASDは多分に遺伝性があります。父親は死んでいるので分析できませんが、その可能性はあると思います。佐竹憲吾の事件では、父親が息子を刺殺しました。今回の事件では逆に、息子が父親(と母親)を刺殺しました。広い意味での教育虐待と感じますが、2つの殺人事件はみごとに相似形を成しています。今回の父親も佐竹憲吾と同じくそれなりの愛情を子供にもっていたことはわかります。しかし、自分が決めた枠に固執しそれからの逸脱を許さない。


 また子供が実際に能力を発揮して父親を超えていきそうになることに、父親は自分の自尊心が毀損される恐怖を感じ、必要以上に強い叱責で押さえつけを図っていたのでないでしょうか。読売九州版の別な記事で、息子が父親の抑圧に耐えていたことが触れられています。

「鳥栖市の両親刺殺、元九州大生「父の支配から無意識下で逃れたいと思っていたのかも」


佐賀県鳥栖市の実家で3月、両親を刺殺したとして、殺人罪に問われた元九州大生の長男(19)の裁判員裁判。第4回公判が佐賀地裁(岡崎忠之裁判長)で行われた7日、長男は最終意見陳述で、父親(当時51歳)殺害について「(父の)支配から無意識下で逃れたいと思っていたのかもしれない」などと語った。

 長男は終始落ち着いた調子で父親との関係に言及。「一挙手一投足に注意を払って、尊敬しているかのように(父が)感じるように戦々恐々と演技をしていた」「父が僕に望む息子像を徐々に理解して、利用することで 叱責 を減らすことだけを考えていた」などと述べた。

 最後に今後について触れ、「どうすることが償いになるのかわからないが、それを考えることが償いの一部だと思う。以上です。ありがとうございました」などと静かに話した。

この学生にASD傾向があったとしても、ごく軽微なのでないでしょうか。中学生時代から10年近く続いていたという父親への殺意を押し殺して演技できたのには、それなりの理性を感じます。しかし、父親は死に際の「なんで?」でわかるように、こどもの心の葛藤にまるで気づいていませんでした。小野仁選手の父親も死ぬまで息子の苦しみを理解してなかったでしょう。


 大学生になって親元を離れたというのに、父親が下宿先まで押しかけ殴る蹴るの暴力。まさに「この世の地獄」だったでしょう。私は24年の懲役を科した裁判官の見識を疑います。この元九大生に必要なのは、医療行為による正常な認知の回復です。


追記:
2024年8月の共同通信です。

両親刺殺、懲役24年確定へ 元大学生長男の上告棄却

8/21(水) 18:11配信


最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は、佐賀県鳥栖市で昨年3月、両親を刺殺したとして殺人罪に問われた元大学生の長男(20)の上告を棄却する決定をした。19日付。懲役24年とした一、二審判決が確定する。


 判決によると、幼少期より父親=当時(51)=から心理的、身体的虐待を受けていた長男は19歳だった昨年3月9日、父親の胸などをナイフで複数回刺し、止めに入った母親=同(46)=も複数回刺して2人を殺害した。

 一審佐賀地裁判決は「暴力や教育虐待がなければ、犯行に及ぶことはなかった」とする一方、母親まで殺害し、結果は重大だと指摘。「相当長期間の実刑をもって臨むしかない」と結論付けた。

結局判決は地裁から一度も覆されることはありませんでした。非常に残念な判決で、旧法の「尊属殺人」に対する量刑の決め方が依然として残っていると感じます。家庭内における子どもの虐待に関する司法の判断を根本的に改める重要な契機にするべきと思います。