gillespoire

日常考えたことを書きます

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ホタテ貝 〜三日月状のオレンジ色の部分の正体とは

Hint-Potの記事です。これですよ、お馴染みの。



答えは生殖腺で、卵巣・精巣です。思っていた通り、赤い方が卵巣、白い方が精巣だそうです。普通ホタテ貝は両性具有で、両方の生殖腺を持ってます。しかし、記事はその謎解きに答えてはいるもの、それ以上の論評はなく、「この部位を食べる時は火を通す」しか書かれていません。なんだ、つまらん。


 実はですね、フランス人はホタテ貝のこの部位に非常に関心があるらしいのです。というのは、フランスのスーパー広告とかを見ると
Coquilles St Jacques avec le corail(コキーユ・サンジャック・アヴェック・ルコラーユ)
と書いてあることが多いからです。コキーユ・サンジャックはホタテ貝、コラーユとは英語のcoral、すなわち「サンゴ」ですが、サンゴ付きホタテ貝の「サンゴ」はこの卵巣の赤いところから来ています。「ウロ」と呼ぶ黒い塊は中腸腺(ヒトでいえば肝臓に相当)で、こちらは時々貝毒を含むことがあるのでフランスでも除きますが、コラーユは付けて売るのがフランスでのホタテ貝の「売り」なのです。

なぜか?というと、

On sait les Saint-Jacques délicieuses. Mais qu'en est-il de leur corail ? Souvent défini, à tort, comme toxique, cette partie est bien comestible. En crème, en sauce ou en chantilly, le corail de Saint-Jacques est un régal en apéritif. Voilà comment le cuisiner.

つまり、この部分を潰してクリームなどとソースに仕立てて、調理した貝柱に合わせるからです。

美味しそうですね。さすがフランス人は美味を追求するのに貪欲です。ところで、フランスでホタテ貝はかなり高いです。1枚で、そうですね600円くらいのことが多かった。というのは、フランスでホタテ貝は完全に天然物で、日本のように稚貝を養殖したり放流したりして管理することなんて全くないからです。ただ海で網を流してかかるのを獲るだけ。日本の感覚でホイホイ買ってると、財布がいたんでしまいます(苦笑)。


 日本でホタテ貝が安いのは、主に北海道および東北の漁民が上記した養殖と管理した放流を繰り返してきたからだと思います。自然界では、ホタテ貝は10数年に1回大漁になる増減を繰り返しているようです。しかし、豊漁時の勢いにまかせて獲りすぎたため、大正時代には資源が枯渇しそうになったとのこと。安定して獲るには、結局増殖の管理しかありません。そういう激減の結果、第二次大戦前に北海道などで稚貝の養殖や放流が始まったようです。しかし多すぎても餌のプランクトンが不足して育たないので、適正数を維持するのはなかなか大変なようです。


 オホーツク海に面した道北の猿払村や北見市が盛んで、特にサロマ湖周囲を中心に安定してたくさん獲れるようになりました。このため漁師の収入がすごく増えて、「ホタテ御殿」も建っているらしいですね。うらやましい。しかし、今夏の原発汚染水放出で、中国が日本の海産物輸入を一切禁止したため、とりわけ中国との取引が多かったホタテ貝業界は苦戦しているとのことです。漁民を救わねばということで、猿払村などではふるさと納税が急増していると聞きます。しかし、スーパーなどでホタテ貝がそう安値になっている印象はありません。消費者からすると、買うからもう少し安くなってくれです。でもフランスと比べれば遥かに安い日本のホタテ貝。ありがたくいただきたいと思います。