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千葉大の学長選考4 〜国立大学の受益者は誰なのか

千葉大の学長選考1 〜大学の学長はどう決めるべきなのか?
千葉大の学長選考2 〜千葉大文学部の反応と学費値上げ
千葉大の学長選考3 〜学長候補たちと「白い巨塔」のモデル


谷川久治氏以降、千葉大の学長は12人いますが、そのうち9人が医学部からです。その9人のうち1人を除いて(東大学部出身の川喜田愛郎氏)、残りは全員千葉大医学部(千葉医大)出身です。第11代の磯野可一氏が第2外科出身ですが(1958年3月千葉大学医学部卒業。1959年4月千葉大学医学部第二外科(中山外科)入局)、その後第2外科出身の学長はいません。現在第2外科教授で医学部長も務めた松原氏が、学長を考えるのは当然なのかも知れません。はっきりわかりませんが、医学部として推薦した学長候補者は松原氏で、横手氏ではなかったようです。横手氏は学長選考・監察会議の推薦候補だったのかもしれません。


 今回の千葉大学長選に関しては文学部でなく、他からも疑問の声が上がっているようです。千葉テレの報道です。

同問題を巡っては、同大の学生や卒業生の有志が適切な説明するよう同会議に求める署名活動もオンライン上で行っている。1月28日に開始し、2月1日午後7時現在で450人以上が署名した。


大学で受益者はだれかという定義がなかなか難しいですが、少なくとも在籍する学生は受益者です。この問いに学長選考・監察会議は真摯に向き合うべきだと思います。


 このニュースに関して、ヤフコメを見ると以下のようなものがあります。

got********5日前


学内の選挙で選ぶべきだと言う論調のようですが、会社で喩えれば社長の選考を社員の選挙で決めるべきだと言うようなものでしょ?公的な組織でそんなの、大学以外の他にあります?

本当に、大学と言うのは、世間に取り残された時代遅れのシステムを維持してるんだなあと思います。

ハリマオ5日前


今時、大学の管理者を人気投票で選ぶなんてナンセンスですよ。

朝日新聞だって、労働組合のトップが社長にならないんじゃないですか?まして国民の税金で運営されてる国立大学でそれはいけないでしょう。

上記のコメントで一番おかしいと思うのは、「大学は企業と同じなのか?」という点です。最近大学の運営協議会で、企業の外部役員よろしく営利企業の役員を入れるところが多いです。私はそれに相当に違和感があります。営利企業なら経営トップを決めるのは、受益者である投資家です。ですから株主総会で収益を上げてくれそうなひとを経営トップに選ぶわけです。しかし大学で教員たちの多くが出す研究成果は金を儲けることと直接関係しないし、その内容評価ができるのは主に同業他者です。国立大学が主に税金で運営されるといっても、一般人が大学の活動内容を適正に評価できるのか?というと、まず無理でしょう。企業の役員たちでも、その方面のエキスパートはまずいません。文科省はじめ官庁の役人で研究内容の価値が判断できるひとも、ほとんどいません。ですから千葉大に限らず、現在の国立大の学長選考・監察会議のメンバー構成は相当に微妙です。


 ひとつだけ研究評価に関して手掛かりになるものがあって、それは外部資金の導入です。外部から獲得する研究資金は多分に研究内容の大学外からの評価が反映されます。千葉大で研究費取得はどうなっているのでしょうか。2022年度でみると、以下のようです。

一見してわかるのは医学部教員がずらりと上位に並んでいることです。今回学長に選任された横手氏は第3位です。前々学長の徳久氏は第1位、前学長の中山氏は第8位です。松原久裕氏や山田賢氏も学振の科研費を取得していますが、総合的な外部資金導入ではこのような上位には来ていません。


 千葉大に限らず国立大学一般で医学部の教授が学長になるケースがとても多いのは、所属する学部の教員数もさることながら、外部資金の獲得状況が大きくものを言うのでないでしょうか?しかし、異なる分野で研究資金の多寡をもって比較するのも相当問題があります。


また2016年の旧聞ですが、横手氏に関してはこういう指摘もあります。


横手氏は製薬会社から受ける講演料収入が第1位となっています。もちろん所属研究室や分野にも研究費として分配しているとは思いますが、個人的な収入であることには変わりません。


 ヤフコメにはこんなことも書かれていました。

khr********6日前


旧六なので、文系から学長は難しいだろう、諦めた方がよい。

副学長がちょうどよい立ち位置だ。

旧六の学長は、医学部が基本で、たまぁ~に工学部から選出される。

このことは、文系の連中も理解しているのではないの。

文系が下手に学長になって、痛い目に遭う必要はないと思う。

こんなこと言われてしまうと、「大学で研究評価なんてどうせムダ。長いものには巻かれろ」という投げやりな思考を感じてしまいます。こういう投げやりな姿勢が長く続いていたことも、日本の大学の研究レベルが下がっていく一因ではないかと思えます。今回の千葉大学長選に対する議論が、その悪しき風潮に一石を投じてくれるといいのですが。