「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(2)
「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(1)
「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(3)
例年4月から始まる筑波大学の授業が1カ月遅れ、それ以降もオンライン授業で行われることを知った水無月さん。時を同じくして、ようやく寮から脱出したこともあり、体調が回復してきた彼は、少しずつ勉強ができる環境が整ったそうです。
「寮にいた頃は1週間で勉強時間がゼロのときもありました。でも、筑波大学に入ってからはオンラインで授業を受け、課題をこなし、それが終わってから参考書をやるサイクルができました。課題が終わった夜9時ごろから深夜1時くらいまで、現役のときに使っていた参考書を使って勉強していましたね」
新型コロナの影響でこの3年ほどオンライン授業が増えましたが、こういう活用法もあったのか。
彼はこうして慌ただしい日々を送りながら、東京大学の編入試験日である6月28日と京都大学の編入試験日である8月25日、26日に向けて勉強を進めていました。しかし、先に落ちた東京大学では残念ながら力を発揮できずに落ちてしまったそうです。
「実は編入試験は、東大より京大のほうがだいぶ楽なんです。東大は時間制限がものすごく厳しいのですが、京大は時間をたくさんくれて、難易度も東大より低いのです。全然対策できなかった東大でこれなら、京大はチャンスがあると思いました」
そして迎えた2カ月後の京都大学の試験。
現役時の受験は「緊張で眠れず、試験時間で爆睡をして3割5分しか取れずに落ちた」そうでしたが、今回の試験では、体をほぐしてリラックスする筋弛緩法を導入したところ、心拍数が軽い運動をしている時と同じくらいと言われている120くらいから70まで落ちたようで眠れたそうです。
こうして現役時の失敗を生かして実力を発揮できた彼は、無事京都大学の2年次編入学試験に合格し、京都大学工学部情報学科数理工学コースに入学しました。
「筆記試験の出来は悪くなかったのですが、自分がいいと思ったときは周りもできているなって思っていたんです。だから、受かったときは驚きが大きかったですね。一回不合格になった経験が生きた合格だったなと思います」
京大工学部の情報学科は大学受験では工学系の最難関です。無論京大工学部の中でももっとも入試偏差値が高い学科ですから、東大に落ちたとはいえ水無月さんにはかえってラッキーなことだったかもしれません。
「筑波大学も京都大学も、志が高い方が多く、熱意が違うなと感じました。その環境の中で勉強や趣味をやるのは刺激になるし、優秀な人が集まる中で切磋琢磨するというのは何事にも変えがたい経験だと思っています。
高専だと進学に関する情報がないうえに、先生からの進路指導や催促がほぼなく、そのような場所で勉強したいと思っている方でも、気づいたときにはもう受験が間近に迫っていて進学できないという事態に陥っていることがあります。
それをなんとかしたいと思って、全国の高専から大学に行った人と一緒にUni-KOSENという学生サークルで、高専生に編入学のための情報を届けています。高専は家系内に大卒者がいないためにあまり大学への理解がない親御さんを持つ学生や、普通の高校に進学していたら予備校代が出せなかったであろう学生が多いですが、そういう環境の人でも難関大学に行けるチャンスがあるので、頑張ってほしいと思っています」
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