gillespoire

日常考えたことを書きます

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(1)

「新理系エリート」 〜鉄緑会の指定校今昔
「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(2)
「新理系エリート」 〜高専から東大・京大への進学(3)


今週の「週刊ダイヤモンド」の記事からですが、少し前の「東洋経済」のニュースと合わせて触れます。


 まず週刊ダイヤモンドでは高等専門工業学校(高専)は国立大学理系にコスパよく進学できる穴場だと紹介しています。高専から大学工学部に進むルートはかなり昔から開かれています。特に東工大は積極的に募集・入学させていましたが、東大や京大の工学部でも編入試験を実施しています。高専は高校と違って5年制ですから、卒時は短大卒と同等ということになります。ですから編入は大学3年次あるいは2年次になり、学士編入と近い感じです。


 週刊ダイヤモンドには旧帝大と東工大の2021年〜2023年の高専編入実績数をリストにしています。全体合格者数が多いのは、九州大(189人)、大阪大(125人)となりますが、九大は工学部以外に旧九州芸工大を併合してできた芸術工学部、阪大も工学部以外に基礎工学部と実質的に工学系が2学部あることが大きいのでないでしょうか。つまりこの2校は、工学系学部の定員が大学規模に比して多いです。ここでは合格者が多くない東大(54人)と京大(16人)の合格者出身高専に焦点を当てています。目立つのは明石、豊田、久留米といった地方の高専出身の合格者がとても多いことです。この3校は他の旧帝大や東工大の合格者数も多く、突出しています。しかし、その理由は述べられていません。想像するに合格した卒業生や教員から、難関大受験のノウハウが代々伝授されているのでないでしょうか。


 国立高専から千葉大学に進学したUすけさんという方のブログに、高専から編入できる大学のランク付けが示されています。それによると、


編入難易度ランキング


SSランク

東京大学・東京工業大学・京都大学


Sランク

北海道大学・東北大学・名古屋大学・大阪大学・九州大学


Aランク

筑波大学・千葉大学・横浜国立大学・東京農工大学・神戸大学


Bランク

首都大学東京・埼玉大学・名古屋工業大学・金沢大学・大阪府立大学・広島大学・岡山大学


Cランク

長岡技術科学大学・豊橋技術科学大学・九州工業大学・その他地方国立大学



ということで、東大・京大・東工大の3校が高専生あこがれの進学先のようです。



 東洋経済に高専卒「筑波で仮面浪人→京大」というちょっと複雑な経歴の方のインタビューが出ています。水無月さんというペンネームです。

「幼少期からすでに親のパソコンを触ってGoogle検索やYouTubeを見ていた」と語るように利発な子どもであった彼は、くもんとそろばんなどの習い事にも通わせてもらったこともあり、優秀な成績で公立の中学校に進学しました。

 しかし、ここから生活習慣が乱れ始めたそうです。


「中学1年生になっても定期試験では8~9割をキープしていました。でも、中学2年生になってから、朝3~4時まで『小説家になろう』というサイトとゲームを行き来する生活を送るようになっていました。その結果、授業でほとんど寝るという昼夜逆転の生活を送ってしまい、定期試験では7割を切るようになりましたし、9教科それぞれ5点満点の内申点の平均が3点を切るくらいになっていました」


「当時、僕は『太鼓の達人』というゲームにはまっていて、Twitterで知り合った人とゲームセンターで遊んでいたんです。そこで知り合った高専の人に、『確実に手に職をつけたいなら高専がいいよ』ってアドバイスをいただいたんです。それで調べてみるとその高専は学力が上位なら内申点が関係ないことを知り、オープンキャンパスに行って面白そうだと思ったこともあって受験することを決意しました」


〜中略


 最終的には高専の電気電子工学科に入学することを決め、家が遠いこともあり、高専の近くの寮に入ることにした水無月さん。しかし、この寮に入ったことが彼の生活に暗い影を落とします。


 「入寮してからすぐ、上級生から1年生が呼ばれて、挨拶の練習をさせられたんです。『足を90度直角に揃えて、大声でこんにちは! って言いながら挨拶しろ』と言われまして……。


 この時点ですでにヤバいなと思っていたんですが、入学式の日の朝から3日間、朝5時45分に起こされて、上級生が怒鳴り狂う中で6時から1時間掃除をやらされる日が続いたんです。それからも月1で深夜に呼び出されて怒鳴られる日々が続きました。家が遠いから退寮もできず、結局5年間この寮から学校に通いました」

なんか大学の体育会みたいで、ゲーマーにとっては異質な世界だったでしょう。


そんな彼が大学に行きたいと思ったきっかけは、寮の環境から脱出するということもあったようですが、大きなきっかけとなったのが飲食店でのアルバイトの経験だったそうです。


 「高1のときから、ぼんやり大学に行こうとは思っていたのですが、3年生のときに始めた接客業がうまくいかなかったことで真面目に進路について考えるようになりました。僕は朝早く起きるのが苦手な人間なので、早朝にフラフラの状態でバイトに行ってはコミュニケーションで失敗したり、ミスをしたりしていました。


 そうした挫折経験から、高専から就職できるような企業だと、自分に合うような仕事ができないんじゃないか、すぐにやめてしまうんじゃないかと考えたんです。だから、大学に行くことで専門性の高い仕事に就けるようにして、フレックスタイムやテレワークなど将来の働き方も選べるようにしたいと思いました」


一般的な高専生は4年生から大学の進学を目指して勉強を始めますが、彼は3年の半ばから猛スパートをかけ、1年半ほど編入試験の対策に充てます。



 「高専の4~5年生で学ぶ内容はほとんど大学の専門科目・教養科目でした。編入試験のレベルは、大学によって違いますが、大半の大学では通常の大学生が1~2年生くらいでやる数学や物理について聞かれるので一般的な理系の大学院入試と同じくらいの難易度と言われています。

これは学士編入の入試とかなり似ています。

こうして、5年生に上がってから複数の大学に出願して編入試験を受けた水無月さんは、進学する筑波大学をはじめ、電気通信大学・東京農工大学などの難関大学に合格しました。


〜中略

 高専は進路が決まらないまま卒業する人がほぼいない学校なので、『浪人』という概念がそもそもありません。だから、後悔をしたくなかったので、先生に伝えたときは驚いていましたが、筑波大学で仮面浪人をしようと思いました」

「勉強量の不足や、体調管理・精神状態の管理の甘さ」で落ちた自分を責めた水無月さん。その後悔を払拭するために、もう一度東大・京大を受験しようと決意しました。

こういうコースでも「仮面浪人」が存在するとは、ちょっと驚きです。


続きます。