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日常考えたことを書きます

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酢豚にパイン1 〜「アメリカ人向け」が起源?

酢豚にパイン2 〜アジアかもしれない(知らんが)


もう3月になってしまった!年度終わりの仕事はあともう少しで終わりですが、次年度の準備も必要な時期となりました。減感作療法でだいぶ軽くなったとはいえ、花粉症が起こってきているので、楽とはいえない時期です。


 さて昨夜のNHK「チコちゃんに叱られる!」ですが、最初は「なぜ酢豚にパイナップルを入れるのか?」でした。今回もゲストや視聴者の回答はチコちゃんに駄目だしされたけど、そんなにバツかな?まず回答にも沢山あった「パイナップルに肉を柔らかくする作用があるから」はそうおかしくないのでは?なぜかよく知りませんが、亜熱帯産の果実にはタンパク分解酵素を含むものが多いです。パイナップルのブロメラインやパパイヤのパパインもそうだし、キウイフルーツのタンパク分解作用も有名です。これらの酵素はタンパク質で加熱で失活するから、酢豚でも肉の漬け込み汁に生パイナップルを加えるものだと思ってました。同じ作用のタンパク分解酵素を含む塩こうじも肉に加えてすぐ加熱したら、調味料としての役目しかないのは常識なんじゃないの?


 「酢豚にパイナップルを入れるのは、アメリカ人向けにしたから」が正解なんだそうです。東北大学文学部の川口幸大教授が述べていました。中国には元々パイナップルはなく、調理に使う習慣はなかった。19世紀半ばのカルフォルニアのゴールドラッシュで中国からも大量に移民がアメリカに流入しましたが、その時広東風の中華料理がアメリカに持ち込まれたと。アメリカ人は甘酸っぱい味が好きで、その頃ハワイで大量生産されるようになったパイナップルを広東料理の酢豚に入れるようになった。そのレシピーが日本や中国に逆輸入されるようになったというのが、川口先生が探究された文献で酢豚のレシピーの年代をみた結果だということでした。


 ・・・私が思うに川口幸大説は完全に間違いとも思わないが、まったく正しいとも思えません。はっきり言いますが、豚肉の調理に甘いものを使う習慣は、古来より広く知られています。古代ローマでも豚肉の料理に蜂蜜が使われていました。また豚肉は果実とも合うこともよく知られており、特にリンゴを煮たソースを使う機会はヨーロッパでは多いです。僕が好きなのは、boudin aux deux pommes(ブーダンオドゥポム)(ブーダンの2種リンゴ添え)です。

ブーダンとは豚の血でつくったブラッドソーセージです。「血でつくったソーセージ」と聞くと日本人の多くはびっくりするでしょうが、ヨーロッパでは普通の食習慣です。中世ヨーロッパだと冬が来る前に肥育した豚を殺して保存食をつくります(冬飼育するのは餌がもったいないのと、秋にどんぐりとか食わせて肥えさせることができたから)。


ピーター・ブリューゲル「四季 秋」の拡大
豚の脚を切断してハム作りするのと、その下で豚の喉を掻ききって、血を鍋に集めている



ハムやソーセージを作って、冬中それを食べて過ごし最後にカーニヴァル(謝肉祭)で食べきり(温度が上がって傷んでくる前に)、春を迎えます。しかしブラッドソーセージは美味しいものの、普通のソーセージと違ってあまり日持ちしません。ですから、冬になった直後のクリスマスのご馳走としてブーダンを食べるのはそのためだろうと思っています。このブーダンに添えるのが、フランスではジャガイモとリンゴなのです。なぜ2種のリンゴかというと、リンゴはpomme(ポム)、そしてジャガイモはpomme de terre(ポムドテール)(土の中のpomme)と呼ぶからです。この付け合わせは非常によく合い、僕が大好きなフランスの冬の料理です。ジャガイモは南米原産でヨーロッパで広く食べられるようになったのは18世紀以降ですが、リンゴはゲルマン部族の頃から普通だったと思います。


 アメリカにも当然ヨーロッパの食習慣が伝わり、豚肉料理にフルーツを添えるのが普通だったでしょう。川口幸大先生が言うアメリカの甘酸っぱいバーベキューソースもその一環でしょう。しかし同時に取り上げたサワークリームオニオンソースは別に甘くないですが?ともかく、酢豚にパイナップルを入れるのはアメリカの食習慣からすると、ごく自然な流れです。


 僕が子供だった頃アメリカで数年過ごしたせいで、我が家でもアメリカの食習慣が昭和時代の中期(1960年代)ながら結構入っていました。そこで食べさせられたのがこれ。「ベークト・ハムのパイナップル添え」です。ちょうどこんな感じ。



お歳暮で大きなロースハム、もらうことありますよね?あれ防腐剤が入ってない高級品だと、包装を切ったらすぐ食べないとたちまち傷んで酸っぱくなってしまいます。そのためだと思いますが、我が家では1月に上の写真のような料理がどーんと出て来ました。まずくはありません。ですが!ご飯のおかずとしてはどうにも合わない(こういう取り合わせが「ザ昭和」)。結構我慢して食べた記憶があります。


 しかし、大人は子供と違って無理くりに酢豚でご飯ぱくぱく食べなくても、酒のあてとしても食べられるでしょう。酒のあてならこの取り合わせは絶妙なものだと思います。ところが、「チコちゃん」では、「酢豚にパイナップルを入れるのはお子様向けにしたからで、(大人向けには)嫌がらせだと思っている。」とか言う視聴者、「嫌だけど、ダサイと思われるのがいやで、無理してパイナップルを食べていた」とか言うラランドのサーヤとか、何?貴方たちこそ、お子ちゃまの舌なんですね。多分、boudin aux deux pommes(
ブーダンオドゥポム)なんて、死んでも食べることができないでしょう!!