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酢豚にパイン2 〜アジア起源かもしれない(知らんが)

酢豚にパイン1 〜「アメリカ人向け」が起源?


チコちゃんに叱られる!」の「酢豚パイン」で、岡村は盛んにイジられていました。「肉だけの酢豚を食べたことがあります」と冒頭で言って、あとでチコちゃんに「岡村はだいぶお高いところに行ってらっしゃる」と皮肉られていました。実はごく最近、そういう酢豚のレシピーをyoutubeで見ました。いわゆる「京中華の酢豚」の作り方です。「けんた食堂」で、「舞子さんが食べる酢豚」として出ていました。京都の中華は独特な進化を遂げていることがよく知られています。あまりくどくなくあっさりした味と言われています。四条河原町の「東華菜館」もそれに近い系統と思いますが、ちと「お高い」ですね。しかし、この酢豚は作り方としては合理的です。というのは野菜を色々入れる普通の酢豚は、それぞれの野菜に適切な火を通すのが結構めんどくさいです。火が通り過ぎたり生っぽかったりと、自宅でつくるとなかなか上手くいきません。中華をつくる本格的なごく強火のガスレンジを入れたらもう少しうまくできるでしょうが、一般家庭で導入は無理です。しかし、豚肉単品の酢豚だったら、うまく出来そうです。舞子さんも固いパインやピーマン片がつるっと口から滑って、ビシャーっとその辺に汁が跳ね飛ぶ惨事を避けられそうです


 東北大学の川口幸大先生が言うような、「酢豚にパイナップルを入れるのは、アメリカ起源」には疑念があります。というのも中華料理で、フルーツを料理に使うことは昔から知られているからです。例えばナツメ(棗)です。ナツメはクロウメモドキ科の木で、その実は中華の豚肉料理でよく使われます。

その実は生だとリンゴに似たうす甘い味と聞きますが、私は乾燥果しか知りません。

時々買って来て、茹で豚の汁で煮て下のような感じに仕上げます。


美味しいですよ。


あとサンザシ(山査子)もバラ科の果物として、中国でよく食べます。

こちらは煮てから型に入れて固めて乾燥させたものを、よく売っています。


これもやはり中華では溶かしてからソースとして豚料理に使います。


ですから、甘酸っぱい果物を料理に使うのは、欧米だけでなく中国でも同じなのです。使わないのは伝統的な和食料理くらいかもしれません。


 棗も山査子も身体に良いものとされ、薬膳料理でよく出て来ます。しかし、いずれも日本ではあまりポピュラーでありません。少なくとも生をほとんど見掛けないのは、いずれも中国でも北の方、涼しくて乾燥した地域の植物だからでしょう。しかし、南方だって中華料理の基本は通じるところがあると思います。日本より暖かい広東地方には自生のナツメやサンザシは当然ないですから、何らかの別な果物を使ってきているのでないでしょうか。


 パイナップルに関しては、こんな記載がありました。

パイナップルは1000年以上前からブラジル南部、アルゼンチン北部、パラグアイにかけた地域で栽培されていました。そして1493年にコロンブスの第2次探検隊が西インド諸島でパイナップルを発見。大航海時代の波に乗り、16世紀にはスペイン、アフリカ、アジア、フィリピンなどにも渡来しました。


 確かにハワイが19世紀にパイナップルの一大生産地となったのは事実ですが、アジア各地の栽培も歴史が古いでしょう。中国南部や華僑として移民した東南アジア各地でもパイナップルは果物として食べられ、また料理に使われていたとしても全く不自然ではありません。台湾には有名な「パイナップルケーキ」(鳳梨酥)があります。川口先生は文献派の歴史学者のようなので、文献がないと納得しないかもしれませんが、多分19世紀半ばのアメリカ以前に中華料理にパイナップルが使われていたと思います。


 こんな記載がネットにありました。C.Q. Yee Hop (1867-1954)という中国からハワイに来た移民がホノルルのチャイナタウンで大きな成功を収め、絶大な影響があったという話です。彼の商売のひとつにテイクアウトのレストランがあり、1930年代にそこでこんなものを出したようです。

The Hawaiian-American Influence on Chinese Cuisine in the 1930s


The menu contains a dish called “pineapple spare ribs” which may have Hawaiian influence since Hawaii was a dominant producer of pineapples in the 20th century. Sweet-and-sour meats appealed more to Western tastes. Traditionally in Cantonese cuisine, sweet-and-sour pork was not a common dish, but sweet-and-sour fish was a dish that was often cooked. Both sweet-and-sour fish or pork includes no fruit, which differs from the pineapple spare rib dish served at Yee Hop’s Chop Suey.


なるほど、豚スペアリブのパイン入り甘酢あん掛けより白身魚のパイン入りあん掛けが先だったのか。となると、魚とフルーツ(パイナップル)の組み合わせ料理を調べないとなりません。広東風だと白身魚はハタとかかな?川口幸大先生は「酢豚パイン、アメリカ起源説」には自信がないようで、「求む、パイナップルの酢豚投入起源情報」と「チコちゃんに叱られる!」でも仰ってましたが、この探索はちょっと先が長そう。


 全然関係ないけど、川口先生は関西人なのだろうか?東北大学は学部かららしいですけど、関西なまりがかすかに感じられるしゃべり方。大阪・吹田の国立民博(国立民族学博物館)にも東北大学大学院修了後ポスドクとしていたようですが、生粋の関西人なのか東北(とーほぐ)人が関西弁マネしているのか、そっちも気になるー。