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シマフクロウ 〜ダーウィンが来た!

ヤツガシラ 〜ダーウィンが来た!
サクラマス 〜桜の時期に旬を迎える美味な魚


日曜のNHK「ダーウィンが来た!」はシマフクロウでした。私は現在のシマフクロウ生息地が道東限定だと思っていましたが、意外と広く大雪山系や日高山系方面にもいることを知りました。もっとも後で調べたら、第二次世界大戦前は北海道全体に広くいて、支笏湖近辺でも捕獲されていたことを知りました。シマフクロウは日本最大のフクロウ、いや世界最大のフクロウです。世界的にはオホーツク海沿岸地域が中心で、中国東北部から極東ロシア・北朝鮮に分布するシマフクロウは亜種レベルの違いがあるようです。


 シマフクロウは魚食性という意味でも、かなり変わったフクロウです。魚食性という意味では、オジロワシやオオワシといった大型の海鷲類も主に魚食性なので、魚の方がネズミなどより餌として大きくかつ豊富で、捕食者は大型化しやすいのかもしれませんね。「ダーウィンが来た!」で紹介されていたひな鳥も大きい、大きい。抱きかかえられた映像からすると、ヒトの赤ん坊くらいありそうでした。白いうぶ毛で可愛い!と言いたいところですが、大きく鋭い目とくちばしが親そっくりでちょとカワイクなかったです。ひな鳥も当然魚が主食ですが、なんと!サクラマスも与えられていました。サクラマス、大変に美味な魚です。シマフクロウはグルメですねと言いたいところですが、残念ながら鳥類は味覚受容体があまり多くありません。折角の美味を賞味できているかどうかよくわかりませんが、羨ましい話です。普段主食とする魚はエゾハナカジカと紹介されていましたが、この魚も美味しいようです。


 シマフクロウが川で魚を捕まえるシーンは初めてみました。意外と動きが少なくさっと捕まえるのに驚きましたが、月明かり程度で川中の魚を認識できるとはすごいです。しかしそれでもそういった狩りの場は十分でないので、採餌場となる川や森林などの整備も保護活動として重要でしょう。映像に出ていたシマフクロウの人工巣箱は超巨大ですね!今人間の手で生育環境がいろいろ整えられてきて、以前よりは少し増えているのは喜ばしい限りです。しかしそれでも北海道全体で200羽程度だそうなので、決して多い数ではありません。豊かな自然環境の象徴として、シマフクロウには是非増えていただきたいものです。


 ところでアイヌの人々はシマフクロウを神として崇めてきました。コタンコロカムイ(村を守る神)として、イオマンテの対象でもあったそうです。イオマンテは「神送り」の祭礼で、ヒグマが有名です。春に捉えたヒグマの子供を養育し、1,2年後に「神送り」の祭礼で殺し、その肉を皆で食べるのです。wikiによると、地上で大切にされた熊のカムイ(神というか魂)は、天界に帰った後も再度肉と毛皮を土産に携え、人間界を訪れる。さらに人間界の素晴らしさを伝え聞いたほかの神々も、肉や毛皮とともに人間界を訪れることになるそうです。クマのイオマンテは昔テレビの映像で何度か見た記憶がありましたが、今調べるともう30年以上北海道ではおこなわれてないそうです。


 そして、このイオマンテがシマフクロウでもおこなわれていたのです。私は相当以前にNHKでこの映像を見た記憶があったので、調べてみました。そうしますと苫小牧市博物館の長谷川充氏という方が、このドキュメンタリー番組について述べておられました。(「シマフクロウとアイヌ民族」長谷川充 2005年)。内容としてはNHK特集「幻のイオマンテ ~75 年目の森と湖のまつり~」です。


 撮影は1983年11月に弟子屈の屈斜路湖畔のコタンでおこなったそうです。本当のイオマンテではクマ同様に射て殺したシマフクロウを食べることになるはずですが、この時のシマフクロウには矢で射る真似をしただけでした。ただその後で棒みたいなもので叩いていたのを見た記憶があり可哀想でしたが、殺すよりましだったでしょう。長谷川氏によるとこの時使ったシマフクロウは釧路市動物園で飼育されていた個体だそうで、殺すなんてもっての外でした。私はこの40年前の映像を鮮明に憶えていてよく撮れたドキュメンタリーと思っていましたが、長谷川氏はそうでもなくNHK取材班を非難しています。「イオマンテの記録ではなく、アイヌのこころのあり方を撮る方に力点が掛かっていた」と批判していますが、ちょっと意味がわかりません。イオマンテは自然現象でなく、アイヌの生活そのものではありませんか?また「北海道の土門拳」とかいう写真家にも撮影を依頼していたのに、NHK撮影中はシャッターを押すな、ストロボを炊くなと色々制限されたことに、長谷川氏は不満を述べています。あのー、映像でカシャカシャとシャッター音が聞こえるのは嫌だし、ストロボなんか炊かれたら夜行性のシマフクロウには相当なストレスでしょう?長谷川氏は何か自分の思い通りに再現イオマンテを実現できなかったことにいらいらしているようで、読後感が悪いです。それは措くとして、今後シマフクロウのイオマンテはその生息数の少なさからみて、二度とおこなわれない気がします。非常に貴重な映像なので、NHKアーカイブとして再放送してほしいです。


 なお別件ですが、苫小牧のウトナイ湖や知床羅臼には「シマフクロウを観察できる場所」があるそうです。将来訪れて、野生のシマフクロウを是非見てみたいです。