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日常考えたことを書きます

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サクラマス 〜桜の時期に旬を迎える美味な魚

シマフクロウ 〜ダーウィンが来た!


年度末はなかなか忙しく、余暇にまとまった時間が取れません。簡単な忘備録になります。


 サクラマスという名前をはっきり知ったのは、もう10年以上前である会の集いがちょうど今の時期3月にあった時です。日本酒同好家の集まりですが、美味しい日本酒に合う肴として、サクラマスの塩焼きも出されました。その時は正直「サケかマスの一種かな。まあ時期的に良い名前だな」くらいにしか思いませんでした。「三陸沖で上がったんですよ」という説明で、60センチくらいある魚体がどてんとお皿に乗っていました。美味しかったという記憶はありますが、例によって飲み過ぎてしまい印象はぼんやりしたものでした。


 近年になって通販のサイトにサクラマスが出てくるようになり、調べてみると「とても美味。あまり多くなく貴重」と出て来ます。そうか、物は試しで注文してみるかとなりました。案外ほどほどの値段で買えるので、失敗してもいいかと考えました。2枚下ろしで送るようお願いすると、結構大きい発泡スチロール箱で届きました。早速片身ずつ塩をして切り分けます。しかしこれが結構切りにくく、特に皮が引っかかります。庖丁のきれが悪いせいかと思ったが、そうでもないようです。しかし何とか切り終えて冷蔵庫にまとめてしばし置きます。


 生でも美味しそうですが、箱の説明に「刺身にする時は必ず一度冷凍して、解凍してください」と書いてあります。サケ・マスの天然物は寄生虫が居る可能性があります。大学時代、寄生虫学の講義では広節裂頭条虫を習いました。これサナダムシの仲間ですが、サナダムシの中でももっと長くなることで有名です。最大10メートル(!)を超えるとか。そのせいで栄養吸収も激しく、以前痩せるためにこの条虫の卵を飲んだ女性がアメリカでいたとか聞いたことがあります。医師国試だと必ず覚えるのが「ビタミンB12不足による巨赤芽球貧血」ですかね。僕らの頃からよく試験に出ましたが、40年近く経つ今も出るらしい。うーむ、しかしそうなった患者さん、見たことないけどね。北欧でも感染者が多いと聞くから、そちらの話かな?あとは最近の新顔でアニサキス。アニサキス自体は昔から有名ですが、サクラマスに寄生率が高いことは最近まで知りませんでした。寄生率95%となると、ほぼ全数か。こんなことを調子に乗って得意げに家族に説明しながらサクラマスをいただいていたら、とても嫌な顔をされました。えー、だっておもしろいじゃん!それに特に医学生なら知るべきだよ!あ、ちなみにスーパーで売っている刺身用サーモンは養殖魚だから、寄生虫はいないんだよ、安心だね!(殴られそう)ちなみにサケのお刺身をアイヌ語でルイベと言い、よく居酒屋でも普通のサーモン刺身を「ルイベ」と気取ってメニューに書いています。ルイベは刺身という意味ではなく「解けた」という意味で、凍らせたサケの身を解凍して食べたアイヌの習慣から来ています。これ中学生の時本で知りましたが、アイヌはサケの寄生虫の問題を昔からよく知っていたのでしょうね。


 閑話休題。そこまで危険を冒してサクラマスを生で食べたいとは思いません。うちでは焼いていただきます。もうね、とても美味しい!普通のサケと違って焼いても身がしっとりしています。養殖もののギンザケみたいに脂ぎとぎとではなく、どちらかというと淡泊なお味です。しかしじっくり味わうと何とも言えない旨みがあります。そして皮。サケの塩焼きで皮が好きな方は結構多いと思いますが、サクラマスのそれはもう絶品です。上に書いたように庖丁で切ると皮は切りにくく、はさみを使ったりします(硬いわけではないです)。しかしその弾力性がある皮が焼くとコラーゲンたっぷりのぷるぷるでしかも脂が乗っていてうまい!サケの皮好きなひとは是非お試しを!こんなに美味しいサクラマスなのに、うちの両親とかには「あっさりしてる」とかで低評価です。このうま味がわからんのかい!と思うのですが。


 こんなに美味しいサクラマスですが、街のスーパーではまず見ません。デパートの北海道や東北の物産展で見掛けるくらいですかね。漁獲量が他のサケ・マスとくらべて格段に少なく、かつ獲れる地方や時期が限られているせいでしょう。物産展でも知る人ぞ知るみたいで、時鮭や紅鮭が残っていてもサクラマスは売り切れになっていることがよくあります。北海道や東北北部に住んでいる方々以外は、通販で頼んだ方がいいでしょう。


 富山の「鱒寿司」のマスはサクラマスが本物です。鱒寿司にする時に身は薄くスライスするので、少なくともアニサキスはカットされて死んでしまうのでしょう(酢ではアニサキスは死にません)。しかし最近北陸地方でサクラマスは入手難とのことで、他のサケ・マスを使うこともあると聞きます。サクラマスは降海型のサケ・マスですが、その陸封型あるいは海に下らないで川にいるのがヤマメです。ヤマメは食べたことがないですが、おそらく栄養状態の良いサクラマスの方がずっと美味しいでしょう。もし見掛けたら、是非ご賞味あれ。魚好きなら、期待を裏切らないはずです。