gillespoire

日常考えたことを書きます

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

シラミやトコジラミ 〜復活する「南京虫」


ノミはなぜはねる」とパクチー(佐々学先生、1916-2006)


この前高校同級生たちと飲んだ時、シラミの話が出ました。血気盛んな若かりし頃、南方に雄飛した友人の一人は、彼の地の某所で一戦交えた結果、ケジラミをうつされたとのこと。大学時代、ケジラミは寄生虫学の講義で医動物学の一環で教わりましたが、私は実物を見たことがありません。何でも痒いというより「咬まれる」といった感じだそうで、食いつかれると如実にわかるそうです。退治するまでが本当に大変だったと嘆いていましたが、僕は「そうね、それ陰毛を全部剃れば割合早く退治できたと思うよ」と言いました。ケジラミは陰毛につかまって生活するせいか特殊な形態をしており、身体の他の部位では生きていけないからです。ケジラミは別名カニジラミとも呼ばれ、四角いカニみたいな形をしています。ちょとカワイイ!


 僕がケジラミを最初に知ったのは、佐々学先生の著書「ノミはなぜ跳ねるを読んだ時でした。第二次大戦中日本陸軍がインドネシアを占領した後、佐々先生も軍医として渡りました。その時兵士の間で広まったのがケジラミ。もちろん某所で一戦を交えてうつされるわけですが、その退治に「生肉を陰部に貼る」という治療法があったそうです。本当かどうか知りませぬが、ケジラミは生肉に惹かれて乗り移るそうでそれで退治できるとのことです。本当かね?そして噂に過ぎませんが、せっかくのお肉をそのまま捨ててしまうのはもったいないとのことで、「使用したお肉」をサテーというインドネシアの焼き肉料理に使っているとか言われたそうです。いやまさか、冗談でしょ?と思いましたが、おかげで屋台でサテーを買い食いする兵士が一気に減ったというようなことでした。


 ヒトに感染するシラミは大きく3つあり、頭髪にいるアタマジラミ、衣類などについて体幹部に感染するコロモジラミ、そして上記のケジラミです。源流となっている種類はコロモジラミだと思いますが、衣類をきちんと洗濯することが多い現代の日本においては、あまり聞きません。しかしコロモジラミ発疹チフスの原因菌のリケッチアを媒介する虫で、一番危険度が高いシラミと言えます。第二次大戦後、ソ連によってシベリア抑留に遭った兵士の間では劣悪な環境下で発疹チフスが流行し、大勢の方々が亡くなった話は有名です。DDTはアメリカ発の農薬で、シラミやノミなど節足動物には絶大な殺効果がありました。日本では戦後大量に使われましたが、ソ連が支配するシベリアにはなかったのです。


 アタマジラミは今日本でもっともポピュラーなシラミです。幼稚園や小学校などで流行し、なかなか退治できないとよくニュースに出て来ます。全国どこでもいるそうですが、ひとつの原因は「帽子」でしょう。学校に着くと帽子を帽子掛けに掛けますが、おそらくそこで拡がるのだと思います。田舎に行くと小学生がヘルメットをかぶって登校する姿をよく見掛けます。交通事故から身を守るためでしょうが、地方独特の光景です。実はあのヘルメットがくせもので、アタマジラミの媒介と繁殖に絶好なのです。ヘルメットはあちこち隙間があって隠れる場所を提供するし、帽子と違って洗濯できません。蒸れることもあってヘルメットでアタマジラミが流行し、退治がとても大変だそうです。これは地方で乗ったタクシーの運転手さんに聞きましたが、話しぶりに切実感がありました。おそらくお子さんが被害に遭われたのでしょう。


 上の話に戻ると、友人が「そう言えば最近トコジラミが大流行って言うじゃん」と言います。確かにそうですが、トコジラミはシラミの仲間じゃないです。シラミは咀顎目に属しますが、トコジラミはカメムシ目でカメムシに近い虫です(最上部の写真がトコジラミ)。そのせいかトコジラミにも独特な臭気があるそうです。古来「南京虫」の名称で知られていますが、中国南部に多いのでしょうか?講義の関係でトコジラミの動画を見つけるとダウンロードしていますが、実に動きが素早いです。夜行性で昼間は狭い隙間に隠れていますが、隙間を開けると一目散に逃げます。飛べない昆虫ですが、それを補ってありあまるほど歩速が速い。そして吸血されるとものすごく痒いそうです。最近、殺虫剤耐性のトコジラミが中国あたりで増えたそうで、それが今中国や韓国で爆発的に拡がっているとのことです。日本に入ってくるのも時間の問題とのことですが、こういうと何ですがおそらくあまりお金がない中国からの旅行客が泊まるホテルなどは、一番危ないと思います。そこで最近は出張であまり安いホテルを避けています。お金がかかるけど、万一トコジラミを自宅に持ち帰ったらえらいことになります。


 小学生の時、家に帰ると見慣れぬ広口ガラス瓶が玄関脇に置いてありました。「なにこれ?」とお袋に訊くと、「さわっちゃだめ!」と言います。あとで親父が帰ってきて知りましたが、近所のお宅でトコジラミらしき虫が出て困っていると相談があったとのことです。そのため捕まえた虫をガラス瓶に入れて持って来たそうですが、見ると小さな赤茶色の虫が瓶の底に数匹いるのが見えました。親父はそちら方面は専門とはいえなかったですが獣医だったので、鑑定を頼まれたとのことでした。そしてやはり紛う方なき「南京虫だ」ということでした。我々が住んでいた団地は公務員住宅ですから、普通の庶民よりは上流といっていい家庭ばかりでした。そういう家庭であっても昭和40年代前半ではありますが、何処かからトコジラミは侵入してきたのです。


 また今でも気になるのは昭和50年代に今は亡き週刊朝日にあったニュースです。「都心の有名フランス料理店で会食したご夫人たちが食事中に激烈な痒みに襲われ、食事どころでなくなった」との話でした。「なんか虫がいるのでは?」と言われたレストランオーナーは憤慨したらしいですが、よく調べてみると座っていた椅子の隙間に「ダニ」が居たそうです。「家具店で最近輸入したという椅子を買って入れたが、その椅子の脚の隙間にダニがついていた」と書いてありました。しかし、今思うと「それダニでなく、トコジラミじゃなかったのかな?」です。ダニはそもそもそういう隙間にいないし、マダニ類は吸血の間痒みも痛みもないからです(イボとよく間違われるくらい)。トコジラミはコロモジラミと違って危険な病原体の媒介は知られていません。しかし、激烈な痒み以外に逃げ足の速さや臭気もあって一級の衛生動物と言えるでしょう。


大阪市の保健所関係のサイトにこんなことが書かれています。


トコジラミは一旦繁殖すると防除が困難となり、多大な労力や費用がかかることとなります。また、生息場所をどんどん拡大していきますので、家族のほか親戚や友人等親しい人に被害が拡大することも考えられます。日頃からこまめに掃除を行い、トコジラミの発生を予防することが重要です。

〜中略


 トコジラミを発見した場合は、掃除機で吸い取ったり、熱湯洗濯するなどの方法で防除しましょう。トコジラミが大量に繁殖していると、個人での防除が困難となりますので、駆除業者に委託することを検討してください。(大阪市ではトコジラミの駆除は行っておりません。)


大変なことです。絶対に自宅に持ち込まぬよう、十分注意したいものです。