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「夜の読書」 〜日経「春秋」から


今朝の日経一面の「春秋」は、夜一人での過ごし方を映画のシーンに掛けて話題にしていました。

誰かと競うためではなく、見せびらかすためでもなく、ただ自分ひとりを満たすものだけに囲まれた静かな生活にひかれる。年齢を重ねるほどに憧れが強くなった。

これ、まったく同感です。若い頃は仕事(実験)の連続で毎夜遅くなるし、たまには同僚たちと飲みに行ったりして、とても忙しかったです。夜静かに自宅で過ごすなんて、まったく考えられなかったです。今の時代にあっても若いひとはそういうものだ、いやそうしないとならない時期なのだと信じますが、今の私はそういう世界とは離れました。

映画の中でそういう主人公に出会うと、本筋に関係なく、格好いいな、とディテールに見入ってしまう。

ということで、映画の話に入っていきます。実は私映画館にほとんど行きません。それこそ忙しくてゆっくり映画館で過ごす時間が、今もとれません。ですから春秋で紹介された3本の映画は、どれも未見でした(「イコライザー」「パターソン」「パーフェクト・デイズ」)。


 いずれも主人公の夜のひとりの時間を語っています。「イコライザー」はレストランでの読書、「パターソン」はバーでの詩作、「パーフェクト・デイズ」は夜の床での読書です。いずれも広い意味で「読む」という行為と関係しています。中でも、私の気を引いたのが最初の「イコライザー」です。

アクション映画「イコライザー」の主役はホームセンターの店員。眠れない夜にはなじみのダイナーへ行き、いつも同じ席に座ってお茶を飲みながら本を読む。「老人と海」「見えない人間」――。亡き妻が挑んで果たせなかった名作100冊の読破が目標という設定だ。単調な暮らしを読書で潤す中年男のたたずまいがいい。

ダイナーというと、僕はエドワード・ホッパーの絵「ナイトホークス」に出てくるダイナーを思い出します。ダイナーって如何にもアメリカらしいレストランで、日本のカフェバーともちょっと違います。wikiを見ると

ダイナー(英: diner)は、もともと簡易食堂、食堂車を意味する用語で、おもに米国・カナダ、その他の国でも見られる小規模で安価なレストランを指す。ダイナーでは、主にアメリカ料理を中心とした幅広い料理をカジュアルな雰囲気で提供し、特徴的なのは給仕係がサーブするブースと、少なくとも料理人が直接サービスを提供する長い着席カウンターの組み合わせでできている。 多くのダイナーでは営業時間を普通より長くしており、主要道路沿いや交代勤務が多い地域では24時間営業しているところもある。

となっていますが、外装がガラス張りで、広く長いカウンターが特徴に感じます。ナイトホークとはnight hawkで、夜鷹(ヨタカ)のことです。日本語で夜鷹というと、江戸時代の立ちんぼ売春婦であったり、はたまた宮沢賢治の「よたかの星」みたいに可哀想な運命をたどる鳥だったりと、あまり良いイメージはありません。しかしアメリカのnight hawkは「夜更かしする人」の意味で、絵もそういう人たちを表しています。何となく都会派のスタイリッシュな人で夜の街へと出歩くのが好き、しかし騒ぐわけでもなく一人あるいは親密なだれかとの静かな時間を大切にする。ダイナーで何を飲食するのか知りませんが、日本なら喫茶店でくつろぐ感じでしょうか。


 映画「イコライザー」の主人公もそういった物思いにふける人物かな。と思って調べたら、おっとぉ、まさにアクション映画。夜更けのダイナーで静かに本を読むのは仮の姿。本当は元海兵隊員で国防情報局の凄腕の特殊工作員。ダイナーで知り合った若い娼婦が無惨にも暴行されたのに怒りを覚え、悪者ロシアマフィアの連中を相手に大立ち回り!

なーんだ、勝手に静かな時間の流れを想像していた自分が馬鹿みたい。でも、映画冒頭のシーンみたいに、夜更けの広々した静かな店内でゆっくりと誰にも邪魔されずに本を読むって、是非してみたいですね。