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STAP細胞騒動から10年 〜STAP細胞とはなにか?

STAP細胞騒動から10年 〜STAP細胞とはなにか?
STAP細胞騒動から10年 〜笹井芳樹氏
STAP細胞騒動から10年 〜理研の最終報告書
STAP細胞騒動から10年 〜「あの日」と寂聴
STAP細胞騒動から10年、研究不正は倍増


読売新聞の記事です。

STAP(スタップ)細胞――。この言葉に覚えがあるだろうか。10年前の今頃、日本を代表する研究機関「理化学研究所」に所属していた女性研究者が涙ながらに、その存在を訴えた細胞だ。発表直後は「ノーベル賞級の発見」と社会が色めき立ったが、実験データの不正が発覚した。その後も日本では研究不正の発覚が相次ぎ、「研究不正大国」と呼ばれることすらある。問題を再び繰り返さず、汚名を返上するにはどうしたらよいのか。四半世紀にわたり研究不正の動向を見てきた白楽ロックビル・お茶の水女子大名誉教授(77)に現状と解決策を聞いた。(科学部 中根圭一、鬼頭朋子)

2014年の1月30日でしたね、STAP細胞のニュースが出たのは。あの日いつも通り午前5時にNHKニュースをつけると、トップが何やら研究発表の会見風景でした。「STAP」という文字がテロップに出て、若い女性研究者、そして見覚えがある笹井芳樹氏、若山照彦氏が会見に臨む出だしでした。「STAP細胞??聞いたことがない。なんだ、それ?」がまず感じたことでした。しかし、幹細胞研究では著名な笹井氏と若山氏のお二人が並ぶところをみると、すぐに重大な研究発表なのだろうと思いました。


STAPに関してはScience Portalから引用します。

理化学研究所と米国ハーバード大学など研究チームは、マウスの体細胞を弱酸性の液体に漬けて刺激するだけで、あらゆる細胞に再生できる“万能細胞”(多能性細胞)を作り出すことに成功したと発表した。細胞や組織などの再生技術には、未受精卵への核移植(クローン技術)のほか、受精卵初期のES細胞(胚性幹細胞)や体細胞に4つの遺伝子(山中因子)を入れたiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用する方法があるが、今回の方法はより簡単に効率よく多能性細胞が作れる。それを基に神経や筋肉、腸などの細胞を作ったほか、これまでの技術では不可能だった胎盤(たいばん)組織を作ることもできたという。

ハーバード大学のバカンティ教授は斯界では有名な存在だということは(色々な意味で)、あとで研究仲間から聞きました。

研究の中心となったのは理化学研究所「発生・再生科学総合研究センター」細胞リプログラミング研究ユニット・リーダーの小保方(おぼかた)晴子さん(30)。研究チームは、今回新たに作成した多能性細胞を「STAP細胞」と名付けた。STAP細胞とは、“刺激がきっかけで多能性を獲得した(stimulus-triggered acquisition of pluripotency;STAP)”細胞という意味だ。小保方さんらは生後1週間のマウスの脾臓(ひぞう)からリンパ球を取り出し、37℃で30分間ほど弱酸性(pH5.7)の溶液に漬け、さらに多能性細胞の維持や増殖に必要な増殖因子(LIF)を含む養液で培養したところ、2日以内に、細胞が分化前の多能性を持った元の状態に戻る“初期化”が始まり、7日目に多数の多能性細胞(STAP細胞)の塊(コロニー)ができた。iPS細胞では、多能性細胞のコロニー形成までに2〜3週間を要している。

このニュースを聞き、僕は「嗚呼、自分はもう研究の進歩についていけてないんだ。こんな研究が公のニュースに出る前に知らなかったなんて、もう駄目だな。」とため息をつきました。しかし!後で研究仲間たちに聞いたら、誰もSTAPなんて知らなかった。研究を主導した笹井氏がこの研究を秘密裏に進めていたことが、あとでわかりました。


 この発表から2週間経ったころ、恩師の先生の叙勲記念パーティがありましたが、席上の話題はSTAP一色でした。同僚の一人が「GERD(胃食道逆流症候群)で起こるバレット食道(食道上皮の異形成の一種)は、もしかしたら胃液の酸性刺激で、上皮幹細胞が異常誘導されたせいかもしれない。そこから発生する腺癌ももしかしたらSTAP細胞誘導と同じメカニズムかもしれない」と興奮しながら話していたのを思い出します。いや、ほんとにそう。これって幹細胞の研究だけじゃなく、がん研究にも重大な影響がありそうと僕も感じました。


細胞外からの刺激だけで体細胞を未分化な細胞へと初期化させる“STAP現象”は、これまでの細胞分化や動物発生に関する常識を覆すものだ。これまで植物では、例えばニンジンの細胞をバラバラにして培養すると、再び根や茎、葉などが作られるといったように、分化状態の初期化が起こるが、動物細胞では外部刺激で初期化が起こらないと考えられていた。


 研究論文は30日に英科学誌『Nature』に掲載されたが、初投稿は2012年4月だった。しかし、研究結果を信じてもらえずに却下され、論文の査読者からは「細胞生物学の歴史を愚弄(ぐろう)している」と酷評された。研究チームは実験証拠をそろえ、再投稿したのが昨年3月。さらに追加実験の注文、疑問などに応えて掲載にこぎつけたという。


 研究チームによると今回の研究は、細胞の分化制御に関する全く新しい原理の存在を明らかにするものであり、幅広い生物学・医学において、細胞分化の概念を大きく変革させる。体細胞自身の持つ内在的な初期化メカニズムは、試験管内のみならず「生体内でも細胞の若返りや分化の初期化などの転換ができる可能性」を示唆しているという。


 時流の研究から遅れてしまったと感じた僕は、小保方晴子氏が筆頭著者のNatureの論文に早速目を通しました。一読して・・・・おかしい。T細胞から誘導したというSTAP細胞の初期培養には、TCR遺伝子の組換え像があるのに、そこから何やらしたというそのSTAP細胞の継代クローンには組換え像が見えなくなっている。???TCR遺伝子の組換えは不可逆的なはずなのに、STAP細胞の継代の途中で組換え前の状態にTCR遺伝子が戻ったということ?それって、熱力学第二法則のエントロピー増大に逆らうような事象で、にわかに信じることができませんでした。しかし、小保方氏以外に笹井氏、若山氏が連名している論文です。「きっと自分が理解できてないせいに違いない。ああ、もう自分はそんなことも理解できないレベルなんだ。」とまたがっくりしたのを、思い出します。




 ここからあとは問題発覚後、理研がSTAP細胞実験の検証をおこなった時の図で説明します。*下図でいう「再構成」が遺伝子組換えのこと。




なるほど。完全にTCR組換えした細胞だけでなく、そういうヘテロ集団からSTAPを得ていたなら、継代クローンで一見組換え前のTCR遺伝子に戻ったように見えてもおかしくはありません。従って、以下のような実験をおこなえば、STAP細胞の有無がわかります。


この手法を用いて実験検証はどうなったのか?結論から言います。「STAP細胞は樹立できなかった」。


 1月のNature論文発表からわずか1週間ほどで懐疑の声が出始めたSTAP細胞は、こういった綿密な再現実験の結果、まったく再現性がないことがわかったのです。じゃあ、Natureの論文で全能性を示したSTAP細胞とは何だったのか?実はES細胞と呼ばれる別の幹細胞株(これは真に全能性があることが以前からわかっている)そのものである疑いが濃厚になりました。つまり、STAP細胞はねつ造だったのです。


この成り行きが報道される中、衝撃的な事件が起きました。笹井芳樹氏の自殺です。