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近畿大学法医学元主任教授に5年の実刑判決 〜あまりに古い医学部気質の露呈

国立・私立どちらでも医学部の教授と業者の金品を通じた癒着は今までもあったし、今後も絶えることはないでしょう。臨床なら医薬や器機の治験に関したグレーな部分は、医者の方がよほど高潔な人格の持ち主でないと断つことは不可能だと思っています。しかし、そんな聖人君子「だけ」で医学部教員を構成できるほど、人材が溢れているわけではない(苦笑)。ですから、残念ながら今後も絶えることはないと思っていますが、それは少数の不心得者と信じたいです。


 それが事実だとしても、この近畿大学医学部法医学教室の主任教授だった巽(たつみ)信二(現在68歳)は呆れるほどやりたい放題だったようです。発覚したのは、2020年に新しく近畿大法医学教室に着任した准教授(垣内康宏氏)が、自身の主任教授への昇任時に不可解な会計処理を見つけたことが切っ掛けだったようです。巽信二氏は2021年3月退職予定でした。ネットに掲載された2021年5月11日付けの朝日新聞の報道ではこうなっています。


近畿大や元教授宅を捜索 経費不正請求疑惑 大阪府警

近畿大医学部(大阪府大阪狭山市)の法医学教室の元主任教授の男性(66)=懲戒解雇=が経費を不正受給していたとされる問題で、府警は11日、同学部や大阪市天王寺区の元教授の自宅を詐欺容疑で捜索した。捜査関係者への取材でわかった。

関係者によると、元教授は在職中、実際には購入していない医療用品の領収書を偽造し、立て替え払いをしたことにして大学側から経費をだまし取った疑いが持たれている。大学側が府警に相談していた。

大学は内部調査で2019年4月~20年12月に計約1780万円の不正受給があったとして3月末に元教授を懲戒解雇していた。計35件分の領収書が医療用品の購入名目で偽造されていたという。取引先の医療機器販売会社の元社員が関与した疑いもあるという。

元教授は代理人弁護士を通して不正受給の疑いを否定してきた。懲戒処分の無効を求める訴訟を4月に大阪地裁に起こしている。

元教授は、約40年間にわたり約4千件の司法解剖を担当したベテランで、2月には警察庁長官が民間人に与える最高位の表彰「警察協力章」を受けた。

巽信二氏は1954年生まれで、大阪府立花園高校卒、近畿大学医学部の一期生だったようです。近畿大学医学部は1974年4月開学です。またサッカー部所属と出ています。


また当時法医学教室の講師だった西尾斉氏も、捜査対象になっています。

近大元教授の部下も虚偽報告書に関与か 司法解剖検査料水増し

毎日新聞 2021/7/17(土) 19:53配信


近畿大医学部法医学教室の元主任教授が大阪府警から委託された司法解剖の検査料を詐取したとされる事件で、元教授の部下が検査料の水増しに関わった疑いがあることが関係者への取材で判明した。府警に提出された虚偽の報告書は、部下が作成していたとの情報がある。府警は法医学教室を率いる元教授が指示していた疑いもあるとみて、実態解明を進める方針だ。


 元教授は詐欺容疑で再逮捕された巽信二容疑者(66)=懲戒解雇。2015~21年の過去6年間に申告した795件について、細菌や薬毒物などの検査数を水増しする手口などで報告書を作成。大学を通じて府警に不正請求した計約5100万円の検査料をだまし取った疑いが持たれている。府警は別の人物と共謀して不正を繰り返していたとみている。


 関係者によると、検査数が偽装された報告書は巽容疑者名義だったが、法医学教室で業務を補佐する部下も作成に携わっていた疑いがある。巽容疑者が解雇された21年3月時点で、教室には16人のスタッフが在籍していた。府警は教室関係者への事情聴取を進め、詳しい経緯を調べている。


 一方、府警から近大に支払われていた解剖委託費(検査料を含む)の約9割が、法医学教室の運営費に充てられていたことも判明した。運営費の活用方法は教室トップの主任教授に権限が委ねられていた。


 巽容疑者は医療用品の購入を装い、運営費から計約3900万円をだまし取ったとする詐欺などの罪で起訴されている。ゴルフ用品や家電製品などを購入して私的流用していた疑いも判明している。府警は解剖検査数の水増しや架空請求を通じて運営費をより多く獲得することで、巽容疑者が詐取金の原資を確保しようとしていた疑いがあるとみている。【沼田亮、木島諒子】


しかし、巽氏は2021年4月当時、テレビ取材に応じてこんなことを言っていたようです。
Q.架空発注の疑惑があるが?)私は無実です。
Q.偽造の領収書を大学に提出していた?)してません!
Q.自身は一切不正に関与していない?)一切関与していません。僕はまんまとだまされました。

また上記引用のように「解雇無効」を訴えて、2021年4月近畿大学を相手に大阪地裁に提訴しています。結論からいうと、「厚顔無恥」です。2023年3月15日に近畿大学がこの事案で出した最終報告に以下のように記載されています。

全体として1億5千万円の巨額の詐取となるようです(*額を訂正しました)。全体としての額も相当に大きいですが、驚いたのは携帯電話まで大学に買わせていたこと。しかも3つも!みみっちいとも言えますが、どこまでたかれば気が済むのやらです。大学処分の最終決定はもちろん「懲戒解雇」です。


2023年6月14日、大阪地裁は検察の懲役7年の求刑に対して、懲役5年の実刑判決を巽信二氏に下しました。

司法解剖の検査費を過大に請求するなどして近畿大や大阪府警から計約8600万円を詐取したとして、詐欺罪などに問われた近大医学部法医学教室の元主任教授、巽信二被告(68)の判決公判が14日、大阪地裁で開かれ、渡部市郎裁判長は「信頼のある立場を悪用した犯行」として懲役5年(求刑懲役7年)を言い渡した。


弁護側は、府警への水増し請求について、部下だった元講師(67)=有罪確定=との共謀を否定し、無罪を主張していた。


渡部裁判長は判決理由で、巽被告が予算管理を担うなどしており「法医学教室で最上位者の地位にあった」と指摘。「そのような立場にある被告の関与なしに元講師が数年にわたって不正を行っていたというのは不自然」と共謀を認定した。一方、近大から経費を詐取したことは認め、弁償していることなどから懲役5年が相当と結論付けた。

会員制医師サイトの掲示板をみると、関係者と思われる方の証言がいくつか出ています。
「学内で、え!意外という声は聞かない。さもありなんの声しかない」
「20年以上前巽助教授が主催した学生検死ツアーに参加したが、大阪府警に高圧的で、スピード違反を揉み消して貰ってた」
「最近もカメラに引っかかって免停になっていたが、いちゃもんつけて講習会の場所と時間は融通つけてもらってた」

なんか車関係が多いですが、
「実家が建設会社で金があり、本人も外車を駆けって高速道路ぶっ飛ばして一発免停」
とも出ています。学生や警察など彼から見て立場が弱い者に対する高圧的な姿勢はハラスメント的であり、大学教員として甚だしく不適切です。


 しかし、こうも書かれています。
近大法医学教室では、(巽氏の師匠にあたる)先代の奈良医大卒や先々代の大阪大医学部卒の教授たちも同じ事をやっていた。全員同じ穴の狢
先代の吉村昌雄教授は奈良医大卒ですが、近畿大教授就任の前は大阪大医学部法医学教室の所属でした。
「巽氏は法医学教室に入室したての若い頃は、一生懸命にスライド映写をしていた」
という声もあります。基本的に本人の資質やお育ちに責任がありますが、師匠筋の大阪大学医学部関係者たちの悪い感化も否定できません。まじめに仕事する多くの近大卒の医者にとって、一期生が起こした不祥事は情けなく、かつ苦々しい思いだと思います。


 と思ったら、巽信二を擁護する近大卒業生のコメントがあってびっくり!2021年6月時点になりますが。この時は悪事の詳細がまだ報道されてなかったからだと思いたいですが、いただけないな。そういう金権体質が大学全体にまん延してるのかと、品位を疑われますよ?


「退職金の自主返納などで、民事だけで内々に済ませれなかったものかと思います。逮捕とは・・・あんだけ頑張ってたのに、同窓として悲しい。 」
「近大医学部は教授を公募しても魅みが無くて2年位で退職して入れ替わりが激しい中、彼だけは第一期生の誇りを持ってしっかり根を張り母校に大貢献していたと思います。非常に精力的で夜間対応もこなす臨床医さながらの勢いがありました。でも法医学なんて待遇が良く無かったので自分なりに悪知恵を働かせたのだろうと思います。大学側は前もって慰労金などと称して金一封を考えてあげるべきだったように思います。 」