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日本人は休めているか 〜祝日頼みの現状

日経新聞に前々から思っていたことが書かれていました。


日本人は休めているか 祝日頼み、有休消化に罪悪感も


今週はお盆休みの真っ盛り。全国の観光地や交通機関は休日を思い思いに過ごす人であふれる。日本人は勤労意識が高く、仕事を休まない傾向が強いといわれている。ただオフタイムでしっかりリフレッシュしてこそ仕事に集中もできる。日本人の休み方に変化はみられるだろうか。


日本人は休んでいない――。その根拠としてよく挙がるのが有給休暇の取得率だ。米旅行予約サイト大手のエクスペディアは6月に世界11カ国・地域の有給休暇に関する調査を発表した。2023年の日本の有休取得率は63%で最下位。軒並み80%以上の他国・地域に比べて極めて低い。


ただ祝祭日の状況を加味すると異なる側面も見えてくる。日本貿易振興機構(JETRO)サイトによれば、24年の日本の祝祭日は21日(振り替え休日も含む)で世界有数の多さ。エクスペディア調べの有休取得日数(23年)を足すと、日本の「年間休日数」は世界にひけを取らない。



もう歴然としていますが、日本はヨーロッパの国と比べて有休取得日数が少なく、祝日が多いです。日本の場合、ここまで祝日が多くなったのはこの20年くらいですが、一つの理由として「有休取得が一向に進まない」ことがあるでしょう。やはり日本は「同調圧」が強いことが最大の原因でしょう。フランスで生活していて感じたのは、「祝日が少ない」で、この表は実感通りです。フランスにいる日本人研究者はほとんどがポスドクを中心とするフェローシップあるいは任期付き雇用ですから、将来を考えるとあまり休めません。他の外国人研究者も同じ状況とはいえ、なかなか苦しかったことを思い出します。しかし無期雇用のフランス人研究員は少なくとも年間3週間のヴァカンスが普通でした。羨ましかった!


あと日本は21世紀に入るまで、週休1日でした。土曜は半ドンということで勤務日だったことを思い出します。学生も同じでした。医学部の場合、土曜も半ドンどころかまる1日授業や実習の学年も多かったです。さすがに今は週休2日は定着しているのでないかと思いましたが、そうでもないことを知りました。


かつて日本人の働き過ぎは世界の批判の的だった。ほかの先進国が週休2日なのに、週休1日で働く日本はフェアではないと貿易摩擦の火種にもなった。こうした外圧もあって日本も1980年代以降、週休2日制が広まった。ただ毎週必ず2日の休みがある完全週休2日を採用する企業は23年調査でも53.3%にとどまる。ローテーション勤務で休日が流動的な業種もあり、バラツキも大きい。

教育は50%か。確かに自分も自発的とはいえ土曜勤務が常態化しております。それどころか日曜も結構仕事がある。どうしても他の仕事割り込みが困るかつネットワークフル活用の仕事だとやむを得ない週末出勤になりますが、かなり疲れます。特に週明けがきつく、「やはり休まないとかえって効率が落ちる」も実感しています。


 アメリカは有休取得日数が少なく、祝日も少ないが、これほんと?制度が違うことも原因かと思います。アメリカは基本的に年俸制です。その給与計算は働く日数で決まります。例えば教員の場合、夏期に学生の長い休暇がありますが、この間教員には給与も支払われないことになっています。従ってその間休んでいても「有給休暇」ではありません。一般企業は関係ありませんが、そういう職種もあるので鵜呑みにはできません。ただあまり休まない傾向があるのは事実でしょう。しかし、日本と違って残業は少ないと感じます。



一般に欧米での働き方の特徴は「労働時間内の集中」でしょう。今回の統計にはないですが、「残業することへの罪悪感」を調査したら、アジアと違って欧米は非常に高いと思います。フランスだと「仕事が終わり次第、自分のことに没頭」が徹底しているので、もし残業なんかしたら家族からごうごうたる非難の嵐になるでしょう。

「北海道「地理・地名・地図」の謎」 〜トリビアな点がよい


これは北大を出た現役の中学社会科の先生が書いた本です。「北海道愛」に溢れています。私も北海道大好きなので、喜々として読みました。


 まず驚いたのは北海道にこんなに内地の地名を反映した市町村があったこと。「北広島」は有名ですが、それ以外にも全道にあります。移住した内地人は郷愁にかられていたのでしょう。しかし言うまでもなくアイヌ語から転写した地名が圧倒的に多い。「内」や「別」という北海道の地名に多い接尾辞が、川からきているとは知りませんでした。アイヌにとって河川が移動手段あるいは目安として非常に大きかったのでしょう。八雲町に尾張徳川家が特別な目を掛けていたことは知っていましたが、幕末の尾張家騒動と関係した移住地だったと知りませんでした。


 北海道の都市は札幌始め碁盤の目の直交する道路で作られたところが多いですが、帯広のようにプラスして斜交道路も持つ都市があることも知りました。郊外とのつながりも重視した設計なのか。確かに都市中心が完全に碁盤の目だと、何処から出たら周辺域の目的方面に行けるかすぐにわからないです。


 今でも炭鉱採掘をおこなう鉱山があるとは知りませんでした。釧路コールマインですが、技術の継承のための保存かあ。ちょっとびっくりです。


 ストーンサークル、秋田にもありますが、北海道にもかなりあるようです。ストーンサークル、世界的にも北半球一帯に見られますが、少なくとも北海道のは墳墓の一種だそうです。神殿ではないのか。知らなかった。


 アイヌ民族資料館の「ウポポイ」の開館は不人気な首相・菅義偉がテープカットしたせいで今ひとつぱっとしませんが。あそこは一見の価値があります。


 札幌・羊ヶ丘のクラーク像は有名ですが、あれは北大構内のクラーク像に観光客が殺到するために、クラーク博士とは縁もゆかりもない場所に立てられたそう。確かに今北大キャンパス内のクラーク像周辺は静かで、効果はあったと言えそうです。


 JR北の石勝線で旅すると、遠軽方面から北見駅に着く前の長いトンネルに驚きます。一体なんで土地が有り余る地方でトンネル?と思っていましたが、道路との交差で起こる交通渋滞の緩和だったとか。高架にすると冬対策が大変だし騒音問題があるからとのことですが、北見駅を網走方面に出ると高架が続きますよ?そちらは書いてないけど、謎だな。


交通標識で動物注意標識「赤いキツネに綠のタヌキ」は無論例のカップ麺から来ていると思いますが、ユーモアありますね!しかし、北海道にタヌキいたの?調べたら北海道西部を中心にエゾタヌキがいるそうです。てっきり北海道にはキツネしかいないと思っていたので、僕にとって新発見でした。


 主に地名に関した北海道のトリビアが語られていて、なかなか楽しめます。今度の北海道旅行も楽しみだな。


「北海道「地理・地名・地図」の謎」増補改訂版 北村崇教・本郷敏志監修 じっぴコンパクト新書 2024.7.17

「京大芸人」 〜だれもがロザン・宇治原になれる訳ではないが


「学歴狂の詩(うた)」 〜関西の大学受験界がわかる
数痴と受験数学



いやー、こんな本が随分前に出ていたとは全然知りませんでした。読んで思ったのは、以前紹介した佐川恭一の「学歴狂の詩(うた)」はまさにこの本のスタイルを真似したものであることです。語り口がそっくりです。


 ただこの本を読むと宇治原史規が如何に勉強して京大法学部に合格したか、よくわかるように書かれています。著者は菅広文、お笑いコンビ・ロザンで宇治原の相方です。彼らは二人とも大阪教育大附属高校天王寺校舎の同級生だったのですね。この学校、我々の頃は大阪府内でもっとも有名な進学校で、大学同級生にも出身者がいました。大阪教育大附属高校は天王寺以外に池田、平野に校舎があり、今は大学本部がある池田校舎が本校扱いでしょう。しかし、昔は天王寺校舎の進学実績が一番良かったように思います。今は3校とも昔ほどの勢いはないように感じます。宇治原はここに高校から入学し、菅は信州大教育学部附属松本中から中学に転入してきたそうです(国立附属校の場合、定員に空きがあれば国立校同士で無試験で転出・転入ができる)。菅は「田舎のレベルが低い国立大附属中だったから、天王寺中に移ってからのギャップが大きかった。」と言いますが、そうでもないでしょう。僕の中学時代(普通の公立中学)この松本中から転入してきた同級生がいましたが、中学時代から目立って優秀でした。大学は東大文二に進んだから、信大附属松本中も決して侮れませんよ。


 さて菅はあまり出来ない生徒でしたが(天王寺としては)、宇治原は最初から抜群の成績だったようです。こういう途中からも募集する学校、昔は後から入る生徒ほど優秀な傾向があったように思います。今の中高一貫校特に私立は最初から6年一体でカリキュラムが組まれているので、後から入る生徒はかえって不利らしいです。様変わりですね。しかし、芸人になるために京大に進むのか。理系ではあまり聞かない発想です。一風変わった宇治原の勉強法ですが、とにかく集中力がすごいです。1日11時間勉強なんて、私など生まれてこの方一度もしたことがない(笑)。まあ2時間もやると飽きでごろごろするし、あとラジオとかつけながら勉強するのが好きでした。全然集中してないです。だから僕は浪人したのか(嗤)


 しかし、こういう集中力ってひとによるのでないか?自分は上記のような怠け者でしたが、自分のこどもは全然違います。ものすごい集中力で他の一切を遮断して邁進するタイプでした。宇治原の勉強法にそっくりです。こどももその集中力で現役で京大に進みました。ですが、人生は長いです。大学受験は人生のスタートラインに過ぎないし、もしそこで失敗したとしてもいくらでも挽回できます。宇治原の場合、僕によくわからないのは京大入学後一気にはじけ、いわゆる大学での勉強は熱心にはしなかったこと。高3の受験前にこの二人は「お笑い芸人」になることを決め、そのために菅広文は宇治原に京大に進学するよう焚きつける。「お笑い芸人」になるのも確かに勉強が必要だけど、その箔付けにというか目立つために京大に入るという心理がよくわからんです。菅広文も折角浪人して1年間精進して大阪府立大に合格したのに、中退して芸人になってしまう。いわゆる「お勉強」のピークはこの二人にとって20歳になる前に来てしまったようです。僕らが学生時代、文系に進む人って、「進級さえすれば大学の勉強なんてどうでもいい。卒業した後の就職には関係ない」と考えているひとが確かに多かったな。今でもそうなんですかね?理系の場合、理学部みたいに「研究する」以外は何でも自由な学部を除いて、医・工・農はほぼ専門が決まっています。専門課程に入ると必修科目が多く(医学部の場合すべて必修科目)、遊んでいる暇なんてほとんどないです。ですから、「お笑い芸人」の道なんて休学でもしない限り無理だと思うなあ。


 宇治原の勉強法でなるほどと思ったのは、数学の勉強。「パターンを憶える」これ、数痴(数学の絶対音感がない凡人)の数学学習の必勝法だと思います。整数問題を除くと数IAと数IIBで入試に出る問題のパターンは200くらいに絞られると思います。これを徹底的に憶えれば、大概の入試数学は何とかしのげるというのは僕も実感しました。「確率は諦める」これも、まったく同感。宇治原が挙げる理由は「検算が無意味だから」です。要するに確率の問題は要素分解法を間違えていると、それは検算などで見つけられるものでないことです。確率は数痴にとって鬼門です。


 最後の後書きは宇治原史規本人が書いています。「入試は満点を取る必要はない。合格に必要な点数をとればいい」これも本当にそうですね。ただ医学部受験の数学だけは違うかな。難関校医学部の場合猛者ぞろいの闘いになるので、点差がつきやすい数学は基本的に満点を目指す勢いでないと受かりません。


 この本、今高校2年のひとが読むといいと思います。真似する必要は全然ないけど、「こういう勉強法でも受かる」と知ると、自分なりの攻略法を立てやすくなるでしょう。


「京大芸人」 菅広文著 幻冬舎よしもと文庫 2014.1.15
2024年現在、文庫版にして第4版。すげー、読まれてますね!