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CBT 〜臨床実習前の医学部4年生の関門

うちの子どもも医学部3年生となり、次年度(4年生)のCBTがちらちらし出しました。CBTとはcomputer based testingの略で、特別な名称ではありません。今検索したら、いろいろな機会におこなわれるパソコン端末で答える多肢選択式の試験すべてがwikiで挙げられていました。いやー、まあ特別な名前でないと申してもここまで色々あるとは知りませんでした。しかしここで取り上げたいのは、医学部を中心として医療系学部で、臨床実習前にOSCE(臨床実習前客観的臨床能力試験)と一緒に実施される「共用試験」のことです。


 CBTは2000年代に入ってから運用が始まり、当初は共用試験制度を検討する協議会に参加した医学部が共同して問題作成をおこない、臨床実習前に共通におこなったものです。今は厚労省の方針で、医師国試を受ける前にOSCEとともに合格していることが必要となりました。しかし、臨床実習に出る前の関門ですから、そりゃ合格してないと国家試験は受けられないでしょう。


 試験では解剖学・生理学・生化学などいわゆる基礎医学科目を全体に網羅して出題され、当然臨床医学科目も出ますが、基本的な病態の内容理解を問う試験です。これアメリカ発の試験だろうとずっと思っていましたが、どうもイギリスが最初らしいですね。それは措くとして、僕らが医学部生の頃は当然そんな試験はなく、座学(講義)の臨床系科目と学内演習科目が終了すると自動的に臨床実習に出ました(もちろん座学科目に合格するのが条件です)。CBTとの関わりは教員としてで、主にその問題作成に携わりました。2000年代初頭は何もないところからのスタートで、問題プールのためにとにかく相当な数の問題作成が数年にわたって必要でした。そのためこの頃教員だった先生は、大概問題作成を経験したことと思います。公平性を求められるため、問題形式や設問文の規格化が強く求められ、作問のための講習会、実際の作問、そのブラッシュアップのための校正作業など、毎年半年以上にわたる大変な作業でした。しかし出来た問題はどれも臨床に出るには、これが最低条件だろうと思うもので、うがった出題はなかったです。


 昔は医学部の専門教育は教養の2年間が終わり、3年生からでした。しかし、今は2年生から基礎医学の解剖学や生理学・生化学の講義・実習が始まり、3年前半には微生物・病理・薬理などの基礎医学、衛生・公衆衛生などの社会医学を学びます。3年後半には内科などを中心に臨床医学も始まり、4年生後半のCBT受験までには十分な学習時間があると思います。ですから、CBTに合格しない4年生なんて、試験内容も考えるとよほど不勉強な学生だけだろうと思っていました。ところがどっこい、子どもの話だと結構落ちる学生がいるとのこと。ええぇ!落ちるのか!しかし医師国試と違って再試があるので、救済はあります。医師国試は昔から独特な出題の癖があり対策しなければ落ちますが、CBTも落ちちゃ困るからある程度準備してほしいなと思いました。


 ところが!さらに衝撃の事実が!家内から「友人の子どもが金沢大学医学部(医学類)に通っているが、生協で案内されているCBT受験対策講座の費用が20万円以上かかると言っているそう。お宅はどうしているのか?と訊かれた。」と言われました。寝耳に水で衝撃を受けました。あんなのそういう試験準備する必要があったの?です。しかも20万円以上もするなんて!子どもに聞いたら、そっちの生協にも案内が来ており同じ価格とのこと。うーむ、どうしようか。そんな対策が必要な学生はわずかなものだと思っていたのですが。


 ただCBTの試験はただ受かればいいというものでもないようです。というのは卒業時の初期研修をおこなう病院のマッチングで、CBTの点数が結構重視されるというのです。そうか成績開示もあるのね。だとしたら、ここでケチケチしないでお金を払って対策講座を受けるべきなのでしょうか?出題経験がある身としては、そんな対策講座を高額で受ける必然性がわからず、いささか悩みます。医学教育関係の産業って、あらゆるところで暴利をむさぼっているなと私は感じてしまいますよ。