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終身雇用など日本の〝常識〟見直しへ 〜そんなに日本を破滅に追いやりたいか?

ルポ大学崩壊 〜憂うべき日本官僚や政治家たちの愚策・愚行


産経のネットニュースに表題の記事が掲載され、6月16日(金)政府が閣議決定した「骨太方針」を報道しています。産経の記事を引用します。


政府が16日に閣議決定した「骨太の方針」では、低成長が続く日本経済の再生に向けた改革の方向性が打ち出された。改革が進めば一つの会社で長く働き続けるといった、これまでの日本の〝常識〟も大きく変わり、国民の暮らしにも影響が及ぶことになりそうだ。

最も力点が置かれたのが、労働市場改革だ。終身雇用や年功序列など日本型雇用は、成長分野への労働移動を妨げるといった弊害が顕在化。その結果、世界をリードする新たな企業は誕生せず、賃金も伸び悩むといった現状を生み出している。

そこで骨太方針では、「人への投資」の抜本強化を掲げ、労働者のリスキリング(学び直し)を後押しする。従来のリスキリングは主に企業が学びの機会を提供してきたが、労働者が主体的に取り組めるよう「個人への直接支援を拡充する」とした。労働者にとっては自分の意思で新たな能力を身に付け、仕事も選ぶことができるようになる。

企業間で人材の奪い合いが生じることで、賃金の持続的な引き上げにもつなげたい考え。同じ会社に長く勤めるほど退職金の税負担が軽くなる退職所得課税についても見直しを行う。


まず「終身雇用や年功序列など日本型雇用は、成長分野への労働移動を妨げるといった弊害が顕在化。その結果、世界をリードする新たな企業は誕生せず、賃金も伸び悩むといった現状を生み出している。」は、一体どういう分析の結果明らかになったのでしょうか?研究者の立場からすると、「全く逆である」です。


 国立大学を中心に教員の有期雇用制はこの20年かなり浸透しました。特に有力な大学では国立・私立に関わらず、その割合が非常に高いです。国立大学の場合、2004年の国立大学法人への移行が特に大きく影響しました。国立大学の教職員はこの独法化で国家公務員でなくなりましたが、文科省から運営交付金をもらう関係上その監視と規制は強くなりました。その結果「効率的な大学運営」には「教員の終身雇用を改めて人材の流動化」を図らないとならないとなったのです。


 結果としてどうなったか?大学教員となってもいつ何時契約更改が拒否されるかわからない状況となり、大学に残って研究を続けたいと思う意欲が急激に下がったと感じます。まず博士研究員(いわゆるポスドク)のような最下位の職位だと、雇用している研究プロジェクトが延長なしで終了となれば、問答無用で雇用も終了となります。専任教員でも最下位の職位の助教だと、任期3年で契約更改は2回までといったのが多いです。つまり9年間助教をすると講師以上の職位に上がらなければ、その時点で解雇となります。国立大だと、知っている限りでもこのルールに従って解雇された助教がかなりいます。


 ところが昭和の昔ですと、東大医学部などには50代で助手という先生が結構いました。20年以上も助手を務めて「万年助手」なんて陰口も叩かれましたが、当時は医学部新設が相次いだこともあり、東大助手からいきなり国立大医学部の教授にご栄転なんてのもありましたね。無能だったからずっと助手だったのかというとそうでもなく、論文からみて間違いなく優秀な「万年助手」がいたことは断言できます。東大に限らず有力国立大ではそういう事例がごろごろありましたが、今の雇用体系ではあり得ないことになります。


 医者ならどうしても研究で残れなかったら見切りをつけて臨床に転向もできます。しかしそういう金を稼げる資格がない一般の研究者はどうなるのでしょうか。一体いつ辞めさせられるかわからない状態で、永遠にモチベーションを保てるとしたら、家が億万長者で研究で金が稼げても稼げなくてもどっちでもいい人しかいないでしょう。さらに人生の生活設計が描けない状態では、結婚とか出産なんてもってのほかとなります。また老後の年金の積み立てだってできませんから、散々苦労して勤めあげても、定年後「貧困老人」として身寄りもなくホームレスで野垂れ死にする元研究者もこれから続発すると思います。せめて、大学教員の枠が拡がらなくても現状維持ならまだましでしたが、この20年間大学人件費の主な財源である「運営交付金」が毎年削られ続け、最近でこそ削減の追加はなくなったものの2000年の約8割弱にされたままとなりました。お陰様で多くの国立大で、恒常的に欠員となった教員枠が少なくありません。雇おうにも金がないから、前任者が退任してから2年くらい公募できないのです。


 結果としてどうなったか?大学教員の主な養成の場である、大学院後期博士課程に進む者は激減してしまいました。優秀な頭脳をもつ学生ほど大学での研究に見切りをつけるのが早かったでしょう。また自然科学系に関しては、世界的に通用する日本発の研究論文本数もすべての分野にわたって激減しました。これG7で唯一日本だけです。近年ノーベル自然科学系3賞を受賞する日本人が連続していましたが、日本の科学の終焉の時がもう目前となったと明確に言えます。これが「教員の終身雇用を改めて人材の流動化」したすばらしい結果です。


 日本の政府、いや日本の官僚はいったい何を考えているのでしょうか?僕はいつも、首を切られたニワトリを思い出します。昔農家に限らず一般家庭でもニワトリをよく飼っていました。もちろん卵をとるためですが、大事な時にはニワトリを締めて鳥料理をしました。そういう時、ニワトリを捕まえて庖丁でスパーンと首を刎ねる。そうするとすぐ絶命せず、首がない状態でばたばた駆け回るのですよ。無論数秒でばたっと倒れて絶命しますが、まさに首を刎ねられて駆け回る姿が今の日本政府とそっくりだと思います。つまり「能なし」の絶命寸前のニワトリだ!